<朝鮮語>『被疑者身上公開制度に関する憲法的研究』:アジア情報室の社会科学分野の新着資料紹介(2022年5月公開)

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アジア情報室 作成

강서영 연구책임(カン・ソヨン 研究責任)『피의자 신상공개제도에 관한 헌법적 연구 / (헌법이론과 실무 ; 2021-A-1)(被疑者身上公開制度に関する憲法的研究(憲法理論と実務 ; 2021-A-1)』ソウル : 헌법재판소 헌법재판연구원(憲法裁判所 憲法裁判研究院), 2021.3, vii, 105 p.【AK4-741-K23

キーワード

韓国、憲法、被疑者身上公開制度

著者情報

カン・ソヨンは韓国憲法裁判研究院制度研究チーム所属の責任研究官である。憲法裁判研究院は憲法裁判所に属する研究教育機関で、憲法及び憲法裁判に関する研究等を行っている。

出版の背景・目的

韓国では、特定強力犯罪(殺人、強盗、略取・誘拐等)及び性暴力犯罪に関して一定の条件を満たした場合に、司法による有罪判決確定前の被疑者の身上に関する情報(顔、氏名及び年齢等)を検事等が公開できるとする「被疑者身上公開制度」が法律に定められている[1]。本書によると、本制度は憲法上の正当性が欠如しているとの批判も根強いものの、世論等の影響により、制度が拡大傾向にあるとされる。

本書は、本制度に関する多様な憲法的争点を整理し、憲法的に受容可能な制度であるか検討することなどを目的としている。

なお、本書は憲法裁判研究院ウェブサイトにて全文が公開されている[2]

本書のポイント

現行の被疑者身上公開制度の沿革、内容及び現状、同制度により制限されうる基本権、同制度の憲法上の争点等、本制度の概要と憲法上の問題点が整理されている。このうち、憲法上の争点については「IV 被疑者身上公開制度に関する憲法的争点の検討」において同制度が法律の留保の原則、無罪推定の原則等の観点から法的な問題が残ることを指摘し、「V 結論」ではこれらの検討結果を踏まえて同制度の再熟考を促している。

目次

抄録
I. 序論
 1. 研究の背景と目的
 2. 研究の範囲と内容
II. 被疑者身上公開制度一般
 1. 被疑者身上公開制度の概観
 2. 被疑者身上公開の法的性格
 3. 外国の立法例の検討
III. 被疑者身上公開制度によって制限されうる基本権
 1. 被疑者身上公開制度による基本権の制限
 2. 憲法第10条に由来する一般的人格権
 3. 憲法第17条の私生活の秘密
 4. 憲法第10条、第17条に基づく個人情報自己決定権
 5. 各基本権の相互関係に対する検討
 6. 小結
IV. 被疑者身上公開制度に関する憲法的争点の検討
 1. 法律の留保の原則、議会留保の原則に違反するかどうかの検討
 2. 適法手続の原則に違反するかどうかの検討
 3. 過剰の禁止原則に違反するかどうかの検討
 4. 平等原則に違反するかどうか
 5. 無罪推定の原則に違反するかどうか
 6. その他の争点に対する検討
V 結論
 1. 被疑者身上公開制度の憲法的正当性欠如
 2. 被疑者身上公開制度の拡大化傾向に対する懸念
 3. 世論・法感情とは区別されるべき違憲性判断基準としての「公益」
 4. 被疑者身上公開制度に対する再熟考の必要性
参考文献

関連する国立国会図書館刊行物収載の文献

中村穂佳「【韓国】デジタル性犯罪に関する法改正」『外国の立法』No.285-1(2020.10)
https://dl.ndl.go.jp/pid/11553732

(アジア情報課 廣田 美和)


[1] それぞれ「特定強力犯罪の処罰に関する特例法」 第8条の2、「性暴力犯罪の処罰等に関する特例法」 第25条に基づく。
https://www.law.go.kr/법령/특정강력범죄의처벌에관한특례법外部サイト
https://www.law.go.kr/법령/성폭력처벌법外部サイト

[2] 「단행보고서(単行報告書)」憲法裁判研究院ウェブサイト
https://ri.ccourt.go.kr/cckri/cri/study/selectPublishList.do?searchCategory=002外部サイト
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