<中国語>『「ポストコロナ期における国際・台湾海峡情勢」学術シンポジウム論文集』:アジア情報室の社会科学分野の新着資料紹介(2022年6月公開)

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アジア情報室 作成

銘傳大學兩岸研究中心 [ほか] 編『「後新冠疫情下國際與臺海形勢」學術研討會論文集 = Proceedings of the symposium on "International and cross-strait situation in the post-COVID-19 era"(「ポストコロナ期における国際・台湾海峡情勢」学術シンポジウム論文集)』 新北 : 中共研究雜誌社, 2020.12, 1, 4, 231 p【A76-C258

キーワード

中国、台湾、新型コロナウイルス、中台関係

編集者・著者

本書に掲載される各論文の発表者・著者とコメンテーター[1]は、銘伝大学、国立政治大学等の台湾の大学に所属する研究者と、中国研究団体に所属する研究員である。その専門分野は国際関係から中国政治、中台関係まで多岐にわたる。発表者・著者の多くは大学の副教授(准教授)クラスの中堅学者であり、コメンテーターには教授や研究センター長クラスのベテラン研究者が多数含まれる。

出版の背景・目的[2]

新型コロナウイルス感染症の世界規模の大流行は、中国本土のみならず、世界各国の政治経済にも大きな衝撃を与えた。加えて、米中両国間の対立は、貿易から科学技術、地域安全保障等の分野にまで発展している。それにより、ポストコロナの国際情勢と中台関係には予想できない不安定要素が多くあると本書で指摘されている。この新しい国際情勢と中台関係について理解を深めるために、銘伝大学両岸研究センター、台湾国家図書館、中共研究雑誌社、台湾法務部(部は日本の省に相当)調査局所属の展望與探索雑誌社といった、台湾の公的機関と中国研究団体による共催の形で、専門家たちが参加するシンポジウムが開催される予定だった。しかしながら、新型コロナウイルス感染症対策のためにシンポジウムそのものが中止となり、その代わりに論文集形式で本書が出版された。

本書のポイント

中台関係は日本の外交と安全保障にも関係のある課題である。本書では、最近の中台関係についてユニークな観測を提示している。例えば、二-3では近年各種国際組織における中国出身者の高位職務就任により、組織内における中国の発言力が強まり、台湾が排除される傾向にあること、また、三-1では中台関係に関する世論について、従来の「反共産 VS. 反台湾独立」のような政治的立場の相違から、「反中国 VS. 反台湾」のようなアイデンティティーの対立に変化していること等が挙げられている。多数の専門家の分析をまとめた本書は、新しい情勢下における中国、台湾の現状について知ることができ、日本の政策決定等の参考にもなりうる。

目次

編集説明
一、ポストコロナ期における国際情勢の変化
 序言 (王高成)
 1.シンガポールにおける新型コロナウイルス感染症の流行状況と選挙後の政治経済情勢 (呉鯤魯)
  コメント (董娟娟)
 2.米中対立下の日本外交 (何思慎)
  コメント (陳一新)
 3.アメリカは百年に一度の変革期に直面する:ポストコロナ期における覇権の地位 (黄介正)
  コメント (劉廣華)
二、ポストコロナ期における中国大陸の変化と統治
 序言 (黄富源)
 1.挙国一致体制:新型コロナ流行初期における中国大陸の中央・地方政府の予防措置の連動 (張執中)
  コメント (蔡文軒)
 2.ポストコロナにおける中国大陸の変化と統治:社会、民族と宗教分野の観察 (王韻)
  コメント (王占璽)
 3.世界の風向きを変える:「国際組織の中国化」の原因と影響を論ずる (洪禄淵)
  コメント (呉宗翰)
三、ポストコロナにおける台湾海峡両側の情勢変化
 序言 (趙建民)
 1.「反中」路線の台頭?新型コロナウイルス感染症流行中の台湾海峡両側の関係発展と苦境 (柳金財)
  コメント (呉建忠)
 2.今日の国際情勢下における「ポストコロナ期」の双方関係 (呉瑟致)
  コメント (顔建発)
 3.新型コロナが中国大陸にいる台湾商人の経営動向にもたらした影響の分析 (荘国鼎)
  コメント (魏艾)
四 付録
 台湾海峡両側の関係年表(2019年11月-2020年10月) (簡嘉辰 編集)
 シンポジウム概要

関連する国立国会図書館刊行物収載の文献

山本彩佳「国際機関に対する中国の影響力 : 国連専門機関のトップ獲得の動きを中心に」『調査と情報』No.1144, 2021. 3
https://dl.ndl.go.jp/pid/11651162
渡邊幸秀「中台関係の動向 : 『1つの中国』原則をめぐって」『レファレンス』No.818, 2019. 3
https://dl.ndl.go.jp/pid/11253886

(アジア情報課 中山 正義)


注[1] 原文は「輿談人」

[2] 本書「編集説明」より