<中国語>『米中貿易衝突に直面する』:アジア情報室の社会科学分野の新着資料紹介(2022年6月公開)

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アジア情報室 作成

东艳, 徐奇渊 等 著『直面中美贸易冲突 = Facing the China-US trade conflicts(米中貿易衝突に直面する)』北京 : 中国社会科学出版社, 2021.3, 8, 5, 272 p【DE315-C185

キーワード

米中関係、貿易摩擦

編集者・著者

主たる著者の東艶は、中国社会科学院世界経済・政治研究所国際貿易室の主任であり研究員。国際貿易理論・政策を主な研究対象とする。徐奇淵は同研究所経済発展研究室の主任であり研究員。国際金融学、中国マクロ経済を専門とする[1]

出版の背景・目的

2018年、米国が対中貿易赤字の是正等を目的として、中国からの輸入品に追加関税措置を実施したことを機に、米中貿易摩擦が拡大し、世界経済にも大きな影響がもたらされた。本書は、中国社会科学院世界経済・政治研究所の研究員により構成される「長期安定的米中二国間経済貿易関係」課題組の研究成果であり、米中の経済的な衝突にいかに対応すべきかとの課題への回答を試みるものである。

本書のポイント

本書は、米中関係の変遷と米国の対中政策の変化を整理し、経済の各方面での衝突を分析した上で、対応策を提議している。続いて、世界的な経済協力の枠組みであるWTO、地域的枠組みであるCPTPP[2] 、中国とヨーロッパの二国/地域間経済貿易関係、さらに中国国内の問題についてそれぞれ分析し、政策提案を行っている。米中関係や国際経済に対する中国の立場を理解し、今後の動向を予測するための手がかりとなる一冊と言える。

目次

総論 米中貿易衝突に直面する 改革開放の深化の堅持
第1篇 米中貿易衝突の背景 : 国際秩序の相互作用と米国の対中政策の変化
 第1章 底荷[3]と周期性の終結 : 国際秩序の相互作用から見た米中関係
 第2章 「301条調査報告書」における中国に対する非難とその実質
 第3章 米中貿易衝突における国防技術とサプライチェーンの安全に関する要素
第2篇 米中貿易摩擦の背景 : 関税戦・投資戦から技術戦・金融戦へ、いかに対応するか
 第1章 貿易摩擦による経済厚生の衝突
 第2章 米国の追加関税措置による商品排除メカニズム : 緩衝か内憂か
 第3章 中国企業の対米投資は差別的待遇を受けたか
 第4章 対米外国投資委員会における2017年の改革と中国の対応
 第5章 米中は国際的な技術移転に関する多国間ルールの形成を協力して進めなければならない
 第6章 中国は米国の金融制裁にいかに対応すべきか
 第7章 米中貿易衝突 : 中国経済の核心的利益とは何か
第3篇 改革開放の深化の堅持 : 多国間から地域へ、二国間から自己の改革へ
 第1章 制度的協調と制度型解放 : 米中、日米貿易摩擦の比較から
 第2章 WTOにおける「途上国の地位」の調整圧力と中国の対策
 第3章 中国はCPTPP加入交渉に向けてすみやかに動き出さなければならない
 第4章 中国・ヨーロッパ間の協力に関する共通認識、障壁及び推進順序
 第5章 国有企業の「競争中立性」改革をいかに進めるか

関連する国立国会図書館刊行物収載の文献

植田大祐「WTOの概要と課題」『レファレンス』No.849, 2021.9
https://dl.ndl.go.jp/pid/11723355
角田昌太郎「各国の輸出管理と対内直接投資管理をめぐる動向」『レファレンス』No.845, 2021.5
https://dl.ndl.go.jp/pid/11673568
植田大祐「米国の通商政策の動向」『調査と情報』No.1049, 2019.3.18
https://dl.ndl.go.jp/pid/11252969

(アジア情報課 濱川 今日子)


注[1] 中国社会科学院世界经济与政治研究所 > 研究人员
http://iwep.cssn.cn/yjry/yjry_azmpl//>http://iwep.cssn.cn/yjry/yjry_azmpl/外部サイト
[2]「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」 (Comprehensive and progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership)
中国は2021年9月に正式に加盟を申請した。
[3]船の転覆を防ぐ目的で、船底に積んで重心を下げるための重し。ここでは、米中関係の安定に寄与している両国の経済的な相互依存関係を底荷に例えている。