<朝鮮語>『複合大転換期 : 新しい韓日パートナーシップを求めて』:アジア情報室の社会科学分野の新着資料紹介(2022年6月公開)

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アジア情報室 作成

신각수 엮음 ; 한일비전포럼 지음(シン・ガクス 編 ; 韓日ビジョンフォーラム 著)『복합 대전환기 : 새로운 한일 파트너십을 찾아서(複合大転換期 : 新しい韓日パートナーシップを求めて)』ソウル : 한반도평화만들기(韓半島平和づくり), 2021.5, 402 p.【A99-K4Z-K122

キーワード

日韓関係、歴史問題、経済協力、安全保障

著者情報

シン・ガクスは、韓国の元外交官で、2011~2013年には第19代駐日大使を務めた。現在は日韓関係に関するフォーラムの開催等を行うSETOフォーラム[1]の理事長などを務める。

韓日ビジョンフォーラムは、日韓関係の改善と実質的かつ戦略的な解決策を求めることを目的として、元外交官や学術界の専門家らによって2019年に結成された。本書を出版した財団法人「韓半島平和づくり」の日本及び外交関連シンクタンクとして活動している。

「韓半島平和づくり」は、「韓半島フォーラム」「1090平和と統一運動」等の学術団体・市民運動団体・文化団体を統一して2017年に結成された財団法人で、朝鮮半島の平和と統一に関する学術事業や文化教育事業を行っている。

出版の背景・目的

編者のシン・ガクスは<総論>において、過去10年間、日韓両国で拡大してきた相互の期待・信頼等の低下に触れ、「外交政策上で相手をあまり眼中に置かない相互警戒現象が進んでいる」と評価する。また、近年の日韓関係の悪化について、「歴史問題が韓日関係の前面に出て、他の分野を支配する特徴がある」とし、いわゆる徴用工等の歴史問題が、日本による輸出規制の強化や、韓国による日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)の終了通告など、経済・安全保障等の他分野にも波及し[2]、両国の損失がはるかに大きくなったとしている。

このような状況を踏まえ、本書の各章では、韓日ビジョンフォーラムの11名の研究者がそれぞれの専門分野における日韓関係の現状を分析し、関係改善策を提示している。

なお、本書の序文は、「韓半島平和づくり」ウェブサイトにて日本語訳が公開されている[3]

本書のポイント

歴史、経済、文化、安全保障等の多様な分野における日韓関係の専門家が、両国の現状を分析し、課題及びその解決策、ロードマップ等を提示している。

「05 日韓経済ネットワークの拡張的伸展」を執筆したイ・チャンミン韓国外国語大学校教授は、輸出規制の強化後も両国の企業間の協力関係は維持されていると指摘し、今後も第3国への共同進出や、カーボンニュートラル等の新しい課題への協力などを通じて、日韓経済協力を拡張していくことができるとする。

「08 日米韓協力とインド太平洋地域及び国際秩序」を執筆したキム・ヒョヌク国立外交院教授は、韓国が中国を意識して、地域レベルの米韓同盟運営に消極的であったことを指摘し、日米及び米韓の外務・防衛担当閣僚会合(いわゆる2プラス2)に現れた日韓の立場の違い等を解説しながら、韓国も米国の主導するインド太平洋戦略により積極的に参加する必要があることなどを提言する。

韓国の専門家の視点から見た日韓関係の現況と展望を概観することができる資料である。

目次

序文
01 〈総論〉複合大転換期 迷路に陥った日韓関係を救う
02 日韓歴史問題の克服と歴史和解の実現
03 日朝関係と日韓協力
04 日韓政策ネットワークの再構築
05 日韓経済ネットワークの拡張的伸展
06 新時代の日韓文化交流 - 挑戦と克服の課題
07 日韓安全保障協力ネットワークの新しい地平
08 日米韓協力とインド太平洋地域及び国際秩序
09 日中韓協力と地域構図の安定化
10 超国家的・非伝統的安全保障における日韓協力
11 日韓技術協力と未来社会の共同開拓
12 〈結論〉未来・理性・世界・青年の観点から日韓パートナー関係を探そう

関連する国立国会図書館刊行物収載の文献

廣田美和「韓国 元慰安婦等が日本政府に対して提起した損害賠償請求訴訟に関する韓国地方法院判決2件についての日韓両政府の反応」『外国の立法』月刊版 No.288-2(2021.8)
https://dl.ndl.go.jp/pid/11708963
角田昌太郎「各国の輸出管理と対内直接投資管理をめぐる動向」『レファレンス』No.845(2021.5)
https://dl.ndl.go.jp/pid/11673568
山本健太郎「日韓GSOMIAをめぐる動向」『調査と情報―ISSUE BRIEF―』No. 1075, 2019. 12.5
https://dl.ndl.go.jp/pid/11400236
田中 福太郎「韓国 輸出管理の運用の見直しに対する韓国政府の対応策」『外国の立法』月刊版 No.281-2(2019.11)
https://dl.ndl.go.jp/pid/11382331
山本健太郎「慰安婦問題に関する韓国の動向: 日韓合意前後の動きを中心に(2011~2018年)(資料)」『レファレンス』No.822(2019.7)
https://dl.ndl.go.jp/pid/11335496
廣田 美和, 田中 福太郎「韓国 元「徴用工」等へ損害賠償を命じる大法院判決後の韓国側の動向」『外国の立法』月刊版 No.280-1(2019.7)
https://dl.ndl.go.jp/pid/11302606

(アジア情報課 廣田 美和)


[1] https://setoforum.org/ja/外部サイト

[2] これらの経緯については、角田昌太郎「各国の輸出管理と対内直接投資管理をめぐる動向」『レファレンス』No.845(2021.5)pp. 29-31「Ⅱ 日韓間の輸出管理をめぐる問題 1 経緯 」を参照。
https://dl.ndl.go.jp/pid/11673568

[3] http://www.koreapeace.foundation/bbs/board.php?bo_table=sub03_05&wr_id=21外部サイト