<中国語>『新時代における中国の就業問題に関する研究』:アジア情報室の社会科学分野の新着資料紹介(2022年10月公開)

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アジア情報室 作成

李长安 著『新时代中国就业问题研究(新時代における中国の就業問題に関する研究)』 北京 : 中国劳动社会保障出版社, 2021.7, 4, 4, 289 p【EL97-C55

【キーワード】

中国、就業、米中貿易摩擦、新型コロナウイルス感染症

【編集者・著者】

本書著者の李長安は、対外経済貿易大学政府管理学院の教授であり、中国労働経済学会と、中国労働学会労働教育分会の常務理事も務めている。労働経済学と教育経済学を主な研究対象とする。

【出版の背景・目的】[1]

改革開放の40年間にわたり中国の経済発展は「高成長・低失業」を保ってきた。マクロ経済の理論において、速い経済成長は高い就業率を維持するための重要な要素とされている。今後の中国経済は比較的低速で安定的な発展段階に入り、労働市場や就業環境もこれまでと異なる課題に直面している。高い就業率を維持しながら、いかに労働市場の構造的な問題を解決、調整するかは、今後中国におけるマクロ経済政策の焦点であり、本書はこの課題に注目して執筆された。

【本書のポイント】

本書は、中国の就業問題について、近年の中国内外における経済・社会状況の変化によって生じている影響を中心に議論している。具体的には、スマート技術の運用や、新型コロナウイルス感染症、米中貿易摩擦などの外的要因によって労働市場にもたらされた需給構造の変化を紹介し、現状分析と政策提言を行っている。これらの経済・社会状況の変化には、近年の日本も同様に直面しており、中国におけるこれらの議論は日本の政策決定等の参考にもなりうる。

【目次】

第1章 ニュー・ノーマル経済下の中国の就業情勢と政策選択
第2章 雇用構造の変化の趨勢とその影響に関する研究
第3章 大学生の就業・起業40年の回顧と展望
第4章 就業による貧困扶助の仕組みと対策に関する研究
第5章 農村出身の都市流入労働者におけるワーキングプア問題に関する研究
第6章 スマート製造の発展による就業への影響分析
第7章 貿易摩擦による中国での就業への影響研究
第8章 新型コロナによる就業への影響研究
第9章 都市間「人材争奪戦」の原因とその影響に関する研究
第10章 シニア労働市場を開拓する必要性と道筋の研究
第11章 「就業優先政策」の強力推進に関する研究
第12章 改革開放以降の中国における4回の起業ブームの変遷
第13章 中国の特色ある起業教育の体系を構築する
第14章 労働教育の推進を通じたより充分で良質な就業実現に関する研究

【関連する国立国会図書館刊行物収載の文献】

工藤郁子「第 3 部 AI と雇用に関する海外動向と人材育成・活用・管理」『人工知能・ロボットと労働・雇用をめぐる視点:科学技術に関する調査プロジェクト報告書(調査資料 2017-5)』,2018.3
https://dl.ndl.go.jp/pid/11065187

(アジア情報課 中山 正義)


[1] 本書「序に代えて」より