<朝鮮語>『宇宙戦場時代の海洋におけるスペース・パワー』:アジア情報室の社会科学分野の新着資料紹介(2023年2月公開)

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アジア情報室 作成

배학영, 임경한, 엄정식, 조태환 지음(ペ・ハクヨン, イム・ギョンハン, オム・ジョンシク, チョ・テファン 著)『우주 전장시대 해양 우주력 (한국해양전략연구소 총서 ; 97)(宇宙戦場時代の海洋におけるスペース・パワー[1](韓国海洋戦略研究所叢書 ; 97))』ソウル:박영사, 2022.8【AK4-651-K103

キーワード

韓国、宇宙、安全保障

著者情報

本書の著者であるペ・ハクヨンは国防大学校軍事戦略学科教授、イム・ギョンハンは海軍士官学校軍事戦略学科教授、オム・ジョンシクは空軍士官学校軍事戦略学科教授、チョ・テファンは国防部ミサイル・宇宙政策課国防宇宙技術企画担当職員である。

本叢書を刊行している韓国海洋戦略研究所は、1997年設立の非営利法人で、国の発展や地域平和等の実現を目的として、海洋法、安全保障等の調査や広報活動を行っている[2]

出版の背景・目的

近年、宇宙空間での軍事活動をめぐって、アメリカや日本などが宇宙領域専門の組織[3]を創設するなど、韓国の周辺国で対応強化の動きが見られる。本書は、韓国でこの問題への対応を進めるに当たって、特に海洋での宇宙関連の作戦、戦力等の側面について、発展の方向性を示すことを目的に執筆された。

なお、本書の紹介と詳細な目次が韓国海洋戦略研究所ウェブサイトで公開されている(朝鮮語のみ)[4]

本書のポイント

宇宙空間での軍事活動については、日本でも2022年12月に開催された政府の宇宙開発戦略本部において、2023年夏を目途に宇宙の安全保障構想を策定するとの方針が示されるなど、関心が高い分野である[5]。本書は、主要国(米・中・ロ・日)の宇宙政策や戦力等を比較したうえで、非軍事用衛星の活用を含め、現在の韓国海軍の宇宙作戦に関する現状、発展方向について分析しており、この分野における韓国の動向を概観することができる。

目次

第1章 概要
第2章 海洋と宇宙作戦
 第1節 宇宙領域の軍事的・戦略的意味
 第2節 宇宙作戦の類型分類と概念
 第3節 海洋基盤の宇宙作戦の特徴
 第4節 海洋基盤のスペース・パワー発展方向の分析枠組み
第3章 主要国の宇宙政策と戦略
 第1節 アメリカの宇宙政策及び戦略
 第2節 中国の宇宙政策及び戦略
 第3節 ロシアの宇宙政策及び戦略
 第4節 日本の宇宙政策及び戦略
第4章 主要国の宇宙作戦の概念及び宇宙戦力
 第1節 アメリカの宇宙作戦の概念及び宇宙戦力
 第2節 中国の宇宙作戦の概念及び宇宙戦力
 第3節 ロシアの宇宙作戦の概念及び宇宙戦力
 第4節 日本の宇宙作戦の概念及び宇宙戦力
第5章 海洋基盤の宇宙作戦と要求能力
 第1節 海洋基盤の宇宙作戦に関する方向性の提示
 第2節 現在の海軍と海洋基盤の宇宙作戦の分析
 第3節 宇宙戦場時代の海軍力発展方向
 第4節 海洋基盤の宇宙作戦の要求能力算出
 第5節 宇宙戦場時代の要求能力
第6章 海洋基盤の宇宙戦力の発展方向
 第1節 海洋作戦に寄与する海洋基盤の宇宙戦力
 第2節 宇宙作戦に寄与する海洋基盤の宇宙戦力
 第3節 海軍多重衛星の融合・複合情報の活用体系
 第4節 類縁機関の衛星事業の現況と活用方案
 第5節 宇宙戦力の要件の反映
第7章 海洋基盤のスペース・パワーの発展方向
付録
訳語
参考文献
宇宙関連法令及び条約
索引

関連する国立国会図書館刊行物収載の文献

中村真也「月探査の現在 : 宇宙資源をめぐる動向」『調査と情報』(1169), 2022.1.
https://dl.ndl.go.jp/pid/12012752/1/1
国立国会図書館調査及び立法考査局『宇宙政策の動向 : 科学技術に関する調査プロジェクト報告書』国立国会図書館, 2017.3.
https://dl.ndl.go.jp/pid/10314923

(アジア情報課 河村真澄)


[1] スペース・パワー(space power)とは「国家目標達成のため、戦時または平時に、外交、情報、軍事、経済活動に、宇宙を活用する国家能力の総体」であるとされる(本書p.21)。

[2] 「연구소 소개」(財団法人韓国海洋戦略研究所ウェブサイト)
https://kims.or.kr/history/外部サイト

[3] アメリカでは2019年12月に宇宙軍が創設され、日本でも2020年5月に宇宙作戦隊が新編された。また、ロシアでは航空宇宙軍(2015年8月、空軍と航空宇宙防衛部隊が統合され創設)が軍事面での宇宙活動等を担当し、中国では戦略支援部隊(2015年12月、中央軍事委員会直轄部隊として設立)宇宙・サイバー・電子戦を任務としているとみられている。韓国でも空軍衛星監視統制隊を2019年に創設している(2020年に「空軍宇宙作戦隊」に名称変更)。
「第2節 宇宙領域をめぐる動向」(令和4年版防衛白書、防衛省)
http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2022/html/n140202000.html外部サイト
「第3節 宇宙・サイバー・電磁波の領域での対応」(令和4年版防衛白書、防衛省)
http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2022/html/n310301000.html#s310301外部サイト

[4] 「우주 전장시대 해양 우주력」(財団法人韓国海洋戦略研究所ウェブサイト)
https://kims.or.kr/booksmem/book20220822/外部サイト

[5] 「第27回 宇宙開発戦略本部 議事概要」内閣府ウェブサイト. 2022.12.
https://www8.cao.go.jp/space/hq/dai27/gijiyousi.pdf外部サイト