<中国語>『AIガバナンス研究』:アジア情報室の社会科学分野の新着資料紹介(2023年4月公開)

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アジア情報室 作成

杨晓雷 主编『人工智能治理研究 = Research on artificial intelligence governance(AIガバナンス研究)』 北京 : 北京大學出版社, 2022.10, 6, 3, 393 p【M121-C18

キーワード

中国、人工知能(AI)、AIガバナンス

著者情報[1]

本書編者の楊暁雷は、北京大学法学院の副教授であり、同大学の法律人工知能実験室主任及び人工知能研究院副院長を務める。主な研究分野は人工知能法学である。

出版の背景・目的

人工知能(以下「AI」)に関する技術の進展に伴い、社会においてAIの活用が進みつつある一方、AIをめぐる様々な問題点も指摘されている。本書では、社会におけるAIの活用とリスク・コントロールのバランスをとることが現今の一大課題であるとの認識に立ち[2]、AIの発展史、各国におけるAIガバナンス[3]の現状、AIガバナンスの方向性、中国のAI産業、政策、規制のあり方について論じている。

本書のポイント

上述のとおり本書では多様な内容が扱われているが、最も紙幅を割いているのは各国におけるAIガバナンスの現状調査である(第4~8、11章)。欧州連合、米国、日本、韓国、英国、オーストラリア、中国を調査対象として、概ね2020年頃までのAI関連立法、政策、主な政府系シンクタンクの報告書等の内容を概観している。対話型のテキスト生成AI「ChatGPT」をはじめとした「生成AI」(様々なコンテンツを生成できるAI)の進化と普及を契機として、国際的に新規制の導入やルール策定が進みつつあるが[4]、本書はAIガバナンスをめぐるこれまでの国際動向を把握し、比較する上で有用な情報源となっている。

目次

はじめに:スマート社会の発展とガバナンス
第1篇 AIの発展概況
 第1章 AIの基礎知識と発展過程の概要
 第2章 現在のAIの技術構成、世界の産業発展の現状
 第3章 AI関連技術に関する産業の状況とその利用規制の問題
第2篇 欧州連合及びその他国家におけるAI立法・政策の状況
 第4章 欧州連合
 第5章 米国
 第6章 日本
 第7章 韓国
 第8章 英国とオーストラリア
第3篇 AIガバナンスの基礎分析と基本的な方向性の探求
 第9章 AIの社会的側面と効果、その問題点の分析
 第10章 AIのガバナンスモデル、方向性、規律の探求
第4編 中国におけるAI産業、政策と規制の考え方
 第11章 中国におけるAI産業の発展と政策・規制の現状
 第12章 中国におけるAI規制の考え方と方向性

関連する国立国会図書館刊行物収載の文献

岸本充生「新興技術を社会実装するということ」『ゲノム編集の技術と影響 : 科学技術に関する調査プロジェクト報告書』(調査資料. 2020-5), 2021.3.
https://dl.ndl.go.jp/pid/11656216/1/1
国立国会図書館調査及び立法考査局『科学技術のリスクコミュニケーション : 新たな課題と展開 : 科学技術に関する調査プロジェクト報告書』(調査資料. 2022-6), 2023.3.
https://dl.ndl.go.jp/pid/12767455
国立国会図書館調査及び立法考査局『人工知能・ロボットと労働・雇用をめぐる視点 : 科学技術に関する調査プロジェクト』(調査資料. 2017-5), 2018.4.
https://dl.ndl.go.jp/pid/11065181

(アジア情報課 木下 雅弘)


[1] 本書「主编简介」及び以下のウェブページ(中国語)の記載による。
「杨晓雷」北京大学人工智能研究院
http://www.ai.pku.edu.cn/info/1141/1268.htm外部サイト

[2] 本書裏表紙記載の内容紹介に基づく。

[3] 経済産業省の「AI原則の実践の在り方に関する検討会」による報告書『我が国の AI ガバナンスの在り方 ver. 1.1』では、AIガバナンスを「AI の利活用によって生じるリスクをステークホルダーにとって受容可能な水準で管理しつつ、そこからもたらされる正のインパクトを最大化することを目的とする、ステークホルダーによる技術的、組織的、及び社会的システムの設計及び運用」と定義している。
AI 原則の実践の在り方に関する検討会『我が国の AI ガバナンスの在り方 ver. 1.1 : AI 原則の実践の在り方に関する検討会 報告書』2021.7.9. p.2注5
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/pdf/20210709_1.pdf外部サイト

[4] 直近の例としては、2023年4月末の「主要7カ国(G7)デジタル・技術相会合」、5月の「G7サミット」でもAIをめぐる国際ルール整備について議論が交わされる見込みである。
「AIの国際ルール、G7広島サミットで議論 松野官房長官」2023.4.20. 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA203AP0Q3A420C2000000/外部サイト