国立国会図書館所蔵の発禁本

ここでは、戦前期の検閲で発売頒布禁止処分(発禁処分)を受けた「発禁本」を扱います。
占領期にGHQの検閲を受けた出版物(詳細は調べ方案内「Gordon W. Prange Colledtion」参照)や、戦後の出版物は含みません。

書誌事項末尾の【 】内は当館請求記号です。

1. 戦前期の検閲

戦前の日本では、1893年の出版法(雑誌・新聞は新聞紙法)に基づいて、政府による出版物の検閲が行われていました。そのため、図書・パンフレット類は、発行日の3日前までに内務省に納入することとされていました。納入された2部のうち1部は「正本」として内務省で保管され、もう1部の「副本」は帝国図書館の蔵書とされました(詳細は調べ方案内「国立国会図書館の内務省交付本」参照)。ただし、発禁処分となった「発禁本」については、正・副ともに内務省で保管されていました。

ところが、1923年秋の関東大震災で、内務省が保管していた出版物がすべて焼失しました。その後も発禁本正本は内務省が保管していましたが、発禁本副本が帝国図書館に移管されたり(2-2.発禁図書函号目録)、検閲で処分を受けなかった正本の一部が東京市立図書館に委託されたり(詳細は関連する調べ方案内など>「内務省委託本」参照)するなど、出版物は分散管理されました。

終戦後、内務省が保管していた発禁本正本は米軍に接収されました。1970年代に一部が国立国会図書館へ返還されましたが(2-4.返還本)、残りは現在も米国議会図書館で所蔵されています(3.米国議会図書館所蔵の発禁本の複製資料)。

2. 国立国会図書館所蔵の発禁本の目録

2-1. 発禁図書目録

発禁本副本の一部と返還本を採録しています。
発禁本副本の一部は「特500」、返還本は「特501」から始まる請求記号を付与されており、国立国会図書館オンラインの「詳細検索」画面で、請求記号欄にそれぞれ「特500*」または「特501*」(*をつけて前方一致検索)と入力すると検索でき、ほとんどのものは国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧できます。

2-2. 発禁図書函号目録

帝国図書館で使われていた事務用目録をもとに作成されました。1923年秋以降に発禁処分を受けた発禁本副本の目録です。

  • 大塚奈奈絵「国立国会図書館所蔵『発禁図書函号目録』安寧ノ部・風俗ノ部」 国立国会図書館の所蔵情報へのリンク(『参考書誌研究』77号 2016年3月 pp.108-269, 口絵pp.1-13 【Z21-291】)
    発禁図書函号目録の内容を転記したうえで、2-1.発禁図書目録への採録状況、国立国会図書館の所蔵状況について調査したものです。
    安寧ノ部1,080件、風俗ノ部359件を採録しています。「安寧ノ部」は安寧秩序紊乱、「風俗ノ部」は風俗壊乱を理由に処分を受けたものです。

2-3. 禁函目録

帝国図書館で使われていた事務用目録をもとに作成されました。帝国図書館の蔵書となったのちに処分を受け、閲覧制限のため別置隔離された図書の目録です。1910年から1938年までのもので、寄贈本、購入本なども含みます。

なお、帝国図書館の蔵書となったのちに削除処分を受け、帝国図書館職員が削除部分を切り取ったと推察されるページを集めたものを所蔵しています。
詳細は調べ方案内「検閲削除処分切取ページ集原本」を参照してください。

2-4. 返還本

発禁本正本の一部です。1970年代に米国議会図書館から返還され、「特501」から始まる請求記号が付与されています。
国立国会図書館オンラインの「詳細検索」画面で、請求記号欄に「特501*」(*をつけて前方一致検索)と入力すると検索でき、ほとんどのものは国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧できます。

3. 米国議会図書館が所蔵する発禁本の複製資料

発禁本正本のうち、返還されなかったものです。現在も米国議会図書館が所蔵しています。
当館では、マイクロフィルム、デジタル資料の形態で利用できます。

3-1. マイクロフィルム

米国議会図書館が作成し、当館が購入したマイクロフィルムです。
東京本館憲政史料室で利用できます。

3-2. 国立国会図書館デジタルコレクション 内務省検閲発禁図書

当館と米国議会図書館が共同事業で収集・公開したデジタル化資料です。
国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧できます。

4. 関連文献

4-1. 発禁処分の事実関係を調べられる文献

一次資料(複製含む)

  • 官報 国立国会図書館の所蔵情報へのリンク(大蔵省印刷局[編] 【YC-1】)
    1888年11月から1910年6月まで、「出版物発売頒布禁止」の告示を掲載しています。
  • 『出版物検閲通牒綴』 国立国会図書館の所蔵情報へのリンク([帝国図書館] [1910-1944])
    内務省から帝国図書館への通知を綴ったもので、発禁本のリストが添付されています。
    帝国図書館文書に含まれます。
  • 『禁止出版物目録』 国立国会図書館の所蔵情報へのリンク(内務省警保局 [1919])
    1888年から1919年3月までの発禁処分の記録です。
  • 『禁止単行本目録』 国立国会図書館の所蔵情報へのリンク(内務省警保局 [1935-1944])
    1888年から1943年までの発禁処分の記録です。
  • 『発禁本関係資料集成』 国立国会図書館の所蔵情報へのリンク全4冊(湖北社 1976-1977)
    内務省警保局による資料を複製・編集したものです。各輯の収録内容は以下のとおりです。
    第1輯:禁止単行本目録 明治21年-昭和9年 (出版警察資料)
    第2輯:禁止単行本目録(昭10~13年)、禁止出版物目録(昭14・1~16・6)、内務省統計報告・出版編(明40~大13年)
    第3輯:禁止出版物目録(昭16・7~19・3)、出版警察概況(昭3・10~5・1)
    第4輯:単行本処分日誌(昭16~18年)、出版警察概観(明34~昭7年)、奈良朝史内容不敬事件(大15年)

参考図書

  • 斎藤昌三 編『現代筆禍文献大年表』 国立国会図書館の所蔵情報へのリンク(粋古堂書店ほか 1932)
    1868年から1926年までの発禁本の処分理由が調べられます。
    巻末にタイトルからひける索引があります。
  • 小田切秀雄, 福岡井吉 編著『昭和書籍雑誌新聞発禁年表』 国立国会図書館の所蔵情報へのリンク(増補版 明治文献 1981)
    1926年から1944年までの発禁本の処分理由が調べられます。
    タイトルから引ける索引はありません。
  • 小林昌樹 編『雑誌新聞発行部数事典:昭和戦前期 附.発禁本部数総覧』 国立国会図書館の所蔵情報へのリンク(金沢文圃閣 2011 【UE2-J2】)
    『出版警察報』からデータを採録し、タイトルや分類から検索できるようにした事典です。
    『昭和書籍雑誌新聞発禁年表』に採録されている発禁本の一部について、タイトルから処分年月日が調べられます。

4-2. 戦前期の検閲・発禁本に関する文献

関連する調べ方案内など