翻訳詩集

このページでは、企画展示「知識を世界に求めて―明治維新前後の翻訳事情―」国立国会図書館ホームページへのリンクの「第4章 翻訳文学の歩み」から翻訳詩集を紹介します。

新体詩抄 初編

外山正一(とやましょういち)矢田部良吉井上哲次郎による我が国最初の近代詩集。テニソン、グレー、シェイクスピアなど、西洋の訳詩14編と創作詩5編を収録し、「泰西のポエトリー」(「泰西」は西洋の意)を我が国に紹介した。新体詩とは、伝統的な和歌や漢詩に代わって、西洋の詩型を取り入れた新しい詩型である。本書は、近代的な詩の創造や詩歌の改良を目指す契機となった作品であり、我が国の近代詩の形成に与えた影響は大きい。展示箇所は「グレー氏墳上感懐の詩」。

水沫集

「於母影」は、森鴎外や小金井喜美子(鴎外の妹)、落合直文らによる共訳詩集。総合雑誌『国民之友』に付録として掲載された後、鴎外の創作・翻訳作品集である『水沫集』に収録された。バイロンの「マンフレッド」、シェイクスピアの「オフェリア」など17編の詩を翻訳。鴎外は『新体詩抄』について、「矢田部、外山等の新体詩は詩に非ず」という立場をとり、原詩の形に応じて、漢詩訳や新体詩の詩型を織り交ぜながら原詩の持つロマンティックな美を伝えようと試みた。情感あふれる本書は、北村透谷、島崎藤村といった若き詩人たちに感銘を与え、新体詩を芸術的に高めた作品集として名高い。展示箇所はゲーテの「ミニヨンの歌」。

海潮音

西洋の近代詩57編を幅広く収めた上田敏の訳詩集。フランスのボードレール、マラルメ、ヴェルレーヌなどの本格的な象徴派の作品を我が国に紹介し、象徴詩の確立に大きく寄与した。また、「序」で展開された象徴詩論は我が国における象徴詩運動の先駆となり、新体詩から象徴詩へと日本近代詩の流れを作った。ヴェルレーヌの「落葉」、ブラウニングの「春の朝」といった、親しみやすい言葉を使ってのこなれた名訳は今日でも広く親しまれている。展示箇所は、「山のあなたの空遠く/「幸」住むと人のいふ」と歌い出される、カール・ブッセの「山のあなた」。


関連する人物

電子展示会「近代日本人の肖像」にリンクします。


実際の展示資料

展示ケースの画像

179. 新体詩抄 初編

外山正一 等編 丸屋善七 明治 15(1882)年【860-4】

180. 水沫集

森鴎外(林太郎) 訳 春陽堂 明治 25(1892)年【28-126】

181. 湖上乃美人 : 今様長歌

スコット 著・塩井雨江 訳 開新堂 明治 27(1894)年【72-37】

182. The lady of the lake

Sir Walter Scott T.Y. Crowell 1830?【KS171-45】

183. 海潮音

上田敏 訳 本郷書院 明治 38(1905)年【98-192】


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