日本-公務員の人物情報を調べる
主に『官報』や『職員録』といった公的な情報源により、国(官庁)等に勤務する職員の職歴調査や、ある人物の特定時点における官庁在籍の事実確認等、経歴情報を調べる方法について紹介します。日本国憲法制定以降の現行公務員制度を前提に解説しますので、戦前の公務員(官吏)の調査については、リサーチ・ナビ「公務員(官吏)の人物情報を調べる(戦前編)」をご覧ください。【 】内は当館請求記号です。
目次
1. 公務員の種別と職層
2. 公務員の人物情報源
3. 公務員の人事異動情報を調べる
3-1. 『官報』
3-2. 新聞
4. 公務員の職員名簿を調べる
4-1. 『職員録』
4-2. その他の名簿
5. 官職の歴代就任者を調べる
1. 公務員の種別と職層
日本の現行公務員制度においては、国の職員は国家公務員、地方公共団体(都道府県および市区町村)の職員は地方公務員と一律に称され、それぞれの公務員は通常の行政事務に従事する一般職と、大臣、知事、市区町村長、審議会委員、裁判官、自衛官などが含まれる特別職に大別されます。一般職はさらに、恒常的な勤務を前提に採用され、身分保障を受ける常勤職員と、パート、アルバイトなど一時的に任用され恒常的勤務を前提としない非常勤職員に分かれます。
国家公務員 |
地方公務員 | ||
---|---|---|---|
特別職 |
(大臣、審議会委員、自衛官等) |
(知事、市区町村長等) |
|
一般職 |
常勤 |
(事務次官、局長、部長、課長、係員等) |
(部長、課長、係員等) |
非常勤 |
(非常勤職員) |
(非常勤職員) |
現在、一般職の国家公務員の官職は、「標準的な官職を定める政令」(平成21年政令第30号)により、職制上の段階と職務の種類に応じて「標準的な官職」に分類され、職層の序列が明文化されています。このうち、一般に「本省」と呼ばれる中央官庁の職制上の段階に応じた標準的な官職は次のとおりです。
標準的な官職 |
職制上の段階に属する職務の種類の例 |
---|---|
事務次官 |
内閣法制次長、府省の事務次官、人事院と会計検査院の事務総長 |
局長 |
内閣衛星情報センター所長、内閣法制局の部長、府省の局長 |
部長 |
部長、審議官 |
課長 |
課長、参事官 |
室長 |
課に属する室の室長、企画官 |
課長補佐 |
課長・室長を補佐し、又は係長と係員の事務の整理をつかさどる官職 |
係長 |
課に属する係の係長 |
係員 |
係長の指揮監督を受ける官職 |
公務員の名簿や人事異動情報は上級の職層に限って掲載・発表されているものがあるため、調査に当たっては注意が必要です。
2. 公務員の人物情報源
公務員の名簿類には、学歴・経歴等の人物情報が掲載されているものがあります。平成27(2015)年時点において継続刊行中の名簿類で、人物情報の記載があるものは次のとおりです。
タイトル |
官庁名鑑シリーズ(※備考参照) |
||||
---|---|---|---|---|---|
出版者 |
政官要覧社 |
時評社 |
文教ニュース社 |
防衛メディアセンター |
防衛日報社 |
請求記号 |
【Z41-963】 |
【A112-L186】等 |
【A112-L195】等 |
【Z41-117】 |
【Z41-942】 |
収録官庁 |
全府省 |
復興庁、総務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省 |
文部科学省 |
防衛省 |
防衛省 |
収録職位 |
本省室長以上 |
室長級以上~課長補佐級以上 |
本省係長級以上 |
本省局長級以上 |
本省・幕僚監部課長級以上 |
生年月 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
出身地 |
○ |
○ |
○ |
○ |
|
出身校 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
職歴 |
入省年 |
入省年 |
全職歴 |
全職歴 |
全職歴 |
備考 |
書籍版年2回刊(2月、8月) |
省庁ごとに別タイトルで刊行(『復興庁名鑑』 |
人物によって掲載情報に精粗がある。 |
一部は掲載許諾が得られず省略されている。 |
人物名から公務員の人物情報について書かれた文献を探すツールには、次のものがあります。
- 近現代日本政治関係人物文献目録
中央省庁の局長相当以上の人物について、人名からその人物についての記述がある文献を調べることができます。
3. 公務員の人事異動情報を調べる
3-1. 『官報』
- 『官報』
(国立印刷局 1883- 【CZ-2-2】)(国立国会図書館デジタルコレクション)
国が国民に周知する必要のある事項を掲載する国の機関紙です。現在は、本省室長級以上の辞令が掲載されます。掲載日は一般的に、辞令の発出から数日後です。
- インターネット版官報
(国立印刷局)(https://kanpou.npb.go.jp/)
直近30日分の官報を閲覧できます。
- 官報情報検索サービス(国立印刷局)(会員制データベース)
昭和22(1947)年5月3日から当日発行分までの官報が全文検索できる会員制のデータベースです。
東京本館では議会官庁資料室および科学技術・経済情報室の特定端末、関西館では総合閲覧室の特定端末で利用できます。
官報情報検索サービスは東京本館・関西館内で利用できますが、都道府県立・市町村立の図書館でも、契約・提供しているところがありますので、お近くの図書館にお問い合わせください。東京都内で官報情報検索サービスを利用できる図書館の一覧は、東京都立図書館ホームページ内「都内公立図書館インターネット等サービス状況」に掲載されています。
3-2. 新聞
本省局長級以上や地方公共団体幹部職員の人事異動情報は、新聞の政治面や地方面に掲載されます。特に、地方紙には地方公共団体の人事異動情報のほか、その地方を管轄する国の地方支分部局の人事が掲載されることがあります。
新聞の調査方法はリサーチ・ナビ「新聞」をご覧ください。
4. 公務員の職員名簿を調べる
4-1. 『職員録』
- 『職員録
』(国立印刷局 1886- 【A112-L201】【A112-L202】ほか)(国立国会図書館デジタルコレクション
)
年に1回刊行されている官公庁の職員名簿です。現在は上巻および下巻の2分冊で、上巻は内部部局(本省)の係長以上、地方支分部局の課長以上、地方事務所の所長と独立行政法人・特殊法人等の幹部職員、下巻は都道府県の内部部局の係長以上、市町村の課長以上を収録しています。昭和63(1988)年以降の版は、中央官庁の課長級以上と都道府県の内部部局部長級以上の職員、市町村の首長・副市町村長・議長の人名索引があります。
『職員録』は東京本館議会官庁資料室・関西館総合閲覧室で閲覧できますが、都道府県立・市町村立の図書館でも購入しているところがありますので、お近くの図書館にお問い合わせください。
国立国会図書館は昭和45(1970)年までの『職員録』をデジタル化しています。デジタル化済みの巻号一覧はリサーチ・ナビ「日本-官庁職員(公務員)の名簿」をご覧ください。
昭和18(1943)年まではインターネット上でどなたでも、昭和24(1949)年から昭和45(1970)年までは国立国会図書館内およびデジタル化資料送信サービスに参加している図書館の館内で利用できます。お近くの図書館での利用可否は、図書館向けデジタル化資料送信サービス参加館一覧をご確認ください。
4-2. その他の名簿
『職員録』には中央官庁の本省係員級職員や、地方公共団体の管理職以外の職員は掲載されていませんが、これらの職員は、その他の名簿に記載されている場合があります。所蔵を調べるには、省庁名と「職員録」「名鑑」等のキーワードを組み合わせて検索してください。現在刊行中の名簿の一覧は、リサーチ・ナビ「日本-官庁職員(公務員)の名簿」にも掲載しています。
当館では、非売品の職員名簿で自宅住所が記載されているものの利用に当たっては、発行後おおむね50年を経過するまでの間、利用目的の申請をお願いしています。
5. 官職の歴代就任者を調べる
- 『日本官僚制総合事典 : 1868-2000』
(秦郁彦編 東京大学出版会 2001 【AZ-331-G77】)
平成12(2000)年までの主要官職(本省局長以上および一部の主要部課長)の任免について、氏名と日付を年代順に表示して収録しています。
このほか、中央官庁の省史・庁史には主要官職(課長級以上等)の歴代就任者一覧表が記載されているものがあります。詳細は、リサーチ・ナビ「日本-官庁の年史」をご覧ください。