戦前期の出版物統計

戦前期の出版物の発行部数などを調べるためのツールを紹介します。

書誌事項末尾の【 】内は当館請求記号です。

1. データの出所について

戦前期における出版物統計のデータは、当時の出版統制との関連で、内務省の統計が主な出所です。
内務省の統計は、内務省の統計報告(2-1)、年報(2-2)、部外秘資料(2-3)などに見ることができます。内務省のデータはさらに、当時の国の統計年鑑(2-4)や、民間の出版年鑑(2-5)にも転載されていました。
2.内務省のデータでは、当時の原資料および複製版について紹介します。

内務省のデータ以外の出所の一つに、各図書の奥付に記載されている部数があります。岩波書店が刊行する図書の奥付には、大正期の特定ジャンル(哲学など)に限り、部数が記載されていました。
そのほか民間出版社が刊行する図書の奥付にも、1942年3月ごろから1945年9月ごろまで、当該刷の部数を記載することが義務付けられていました。
限定版や私家版の場合、奥付のほか序文中、扉の裏などに部数が見られることがあります。
3.その他の資料・ツールでは、内務省のデータ以外を収録する資料、内務省のデータを再編集して事典や一覧の形式にしたツールをまとめて、統計対象の媒体別、採録データの年代順に紹介します。

〈参考文献〉
  • 小林昌樹 編『雑誌新聞発行部数事典:昭和戦前期 附.発禁本部数総覧』増補改訂普及版(金沢文圃閣 2020)
    「戦前における発行部数調査の歴史」(下巻pp.627-660)に、発行部数が掲載されている資料の紹介や、部数用語の説明などがあります。
  • 牧野正久「年報『大日本帝国内務省統計報告』中の出版統計の解析 上 -明治・大正・昭和(戦前)期の分野別出版点数の推移-」(『日本出版史料』(1) 1995年3月 pp.1-71 【Z21-B231】)
    牧野正久「年報『大日本帝国内務省統計報告』中の出版統計の解析 下 -明治・大正・昭和(戦前)期の分野別出版点数の推移-」(『日本出版史料』(2) 1996年8月 pp.1-85 【Z21-B231】)
    データ集計方法の解析、異なる統計資料に掲載された数値の比較など、詳細に考察されています。
  • 由井正臣 他共著『出版警察関係資料解説・総目次』(不二出版 1983 【AZ-614-9】)
    「出版警察関係資料 解説」(pp.3-79)に、出版法制の変遷、戦前期の出版物の発行状況などの解説があります。

2. 内務省のデータ

当館所蔵の原資料は、未所蔵分(欠号)がある場合、マイクロ資料・デジタル画像での閲覧となる場合があります。状況に応じて、適宜複製版を利用してください。

2-1. 内務省統計報告

「図書及新聞紙」(のち「出版」)の部の、「出版図書」、「新聞紙及雑誌」(のち「新聞紙」)、「新聞紙及雑誌発兌部数府県別」などにデータを収録しています。1884年から1936年までの図書、雑誌の出版点数の推移、分野別点数などを調べられます。1894年から1898年まで、「一万二千以上発行ノ新聞紙雑誌」に約300タイトルの発行部数を収録しています。

2-2. 内務省年報・報告書

1875年7月から1880年6月まで、「図書局年報」の部の、「納本増減比較表」、「全国各社新聞類発行員数増減比較表」などに、新聞、雑誌約300タイトルの年間総発行部数などを収録しています。「内務省統計書 上巻・中巻」に、1875年度から1879年度までの「出版図書納本ノ部数」、1874年度から1879年度までの「新聞紙並雑誌発売部数」を収録しています。

2-3. 出版警察関係資料

検閲事務を行っていた内務省警保局が、非公開の内部資料として作成したものです。

〈出版警察報〉

1928年10月から1936年10月まで、および1940年8月から1944年3月まで、納本統計、分野別点数などを収録しています。
なお、本資料からデータを採録し、タイトルや分類から検索できるようにした『雑誌新聞発行部数事典:昭和戦前期 附.発禁本部数総覧』が刊行されています。

〈出版警察資料〉

1935年6月から1940年6月まで、納本統計、分野別点数などを収録しています。

〈出版警察概観〉

1930年から1935年まで、出版物の発行状況などのデータ(1919年からのデータ)を収録しています。『出版警察報』を集約した年刊資料です。

2-4. 統計年鑑

統計院(のち内閣統計局)が編纂しました。
おおむね1882年から1941年まで、「出版書籍」、「新聞紙及雑誌」に内務省のデータを収録しています。

2-5. 出版年鑑

1930年から1941年まで、「出版諸統計」に内務省のデータを収録しています。

3. その他の資料・ツール

内務省のデータ以外を収録する資料、内務省のデータを再編集して事典や一覧の形式にしたツールについて、統計対象の媒体別、採録データの年代順に紹介します。

3-1. 全般

以下、採録データの年代順に紹介します。

  • 『日本出版百年史年表』(日本書籍出版協会 1968 【023.1-N6883】)
    新聞、雑誌は1875年から、図書は1881年からの「出版図書・新聞雑誌数暦年表」(pp.1064-1065)を収録しています。
    データの出典は『出版年鑑』です。
  • 『明治大正国勢総覧』(東洋経済新報社 1975 【DT31-11】)
    1877年から1926年までのデータを「第六篇 社会 出版図書 771.(内地)出版図書種類別累年表」に、1881年から1925年までのデータを「第六篇 社会 出版図書 770.(内地)新聞紙及雑誌発兌数累年表」に収録しています。
    データの出典は『日本帝国統計年鑑』です。
  • 牧野正久「年報『大日本帝国内務省統計報告』中の出版統計の解析 上 -明治・大正・昭和(戦前)期の分野別出版点数の推移-」(『日本出版史料』(1) 1995年3月 pp.1-71 【Z21-B231】)
    牧野正久「年報『大日本帝国内務省統計報告』中の出版統計の解析 下 -明治・大正・昭和(戦前)期の分野別出版点数の推移-」(『日本出版史料』(2) 1996年8月 pp.1-85 【Z21-B231】)
    1881年から1936年までの「図書・雑誌数暦年表」、「新聞紙・雑誌数暦年表」などを収録しています。
  • 由井正臣 他共著『出版警察関係資料解説・総目次』(不二出版 1983 【AZ-614-9】)
    1922年から1939年までの「普通出版物内容別年表」を「出版警察関係資料 解説」(pp.3-79)に、収録しています。
  • 『警察統計報告』(内務省警保局 1926-1940 【14.6イ-51】)(国立国会図書館デジタルコレクション
    『内務省警察統計報告』(日本図書センター 1993-1994 【AZ-351-E93】)※複製版
    第2~18回の「活動フィルム、新聞紙、出版物」に、県別の新聞紙数、出版物納本数などを収録しています。
  • 『完結昭和国勢総覧』第3巻(東洋経済新報社 1991 【DT31-E7】)
    1926年から1941年までのデータを「16-54 戦前の書籍・雑誌・新聞発行状況(大15-昭16)」に、1925年からのデータを「16-参考19 書籍・雑誌の分野別発行状況(大14...昭50)」に、1941年からのデータを「16-56 新聞発行状況(昭16-63)」に収録しています。
    データの出典は『大日本帝国内務省統計報告』『警察統計報告』『日本新聞年鑑』などです。

3-2. 図書の部数がわかるもの

3-3. 雑誌・新聞の部数がわかるもの

採録データの年代順に紹介します。
なお、各データは1号あたりの部数ではなく、累積部数(年間累計など)であることが多いようです。

  • 朝倉治彦, 稲村徹元 編『明治世相編年辞典』(東京堂出版 1995 【GB415-G2】)
    1875年から1897年までの「主要新聞の発行部数一覧」(pp.644-645)、1877年から1897年までの「主要雑誌の発行部数一覧」(pp.646-647)を収録しています。 データの出典は警察統計です。
  • 『新聞史資料集成 明治期篇 第7巻 (便覧・目録 1)』(ゆまに書房 1995 【UC126-E37】)
    1878年、1894年、1904年の100タイトルの見立番付(ランキング表)を収録しています。
  • 『明治前期警視庁・大阪府・京都府警察統計 第2期』(柏書房 1986 【YP1-46】)
    1887年から1890年まで、東京、大阪、京都で発行された新聞、雑誌の部数を収録しています。
  • 『警視庁統計書』(警視庁総監官房文書課 1893-1944 【14.6イ-39】)(国立国会図書館デジタルコレクション
    『警視庁統計書』全50冊(クレス出版 1997-2000 【AZ-351-G18】)※複製版
    1893年から1900年まで、東京で発行された新聞、雑誌約2,500タイトルの部数を収録しています。
  • 『原敬関係文書 第8巻 (書類篇 5)』(原敬文書研究会 日本放送出版協会 1987 【GB411-146】)
    1906年、1907年の全国紙約30タイトル、全国誌約200タイトルの部数一覧を収録しています。
  • 『原敬関係文書 第9巻 (書類篇 6)』(原敬文書研究会 日本放送出版協会 1988 【GB411-146】)
    1906年、1907年の地方紙誌の部数一覧を収録しています。
  • 『新聞雑誌社特秘調査』(大正出版 1979 【UC4-7】)※複製版
    約4,000タイトルの部数一覧を収録しています。 1927年刊行の内務省警保局編『新聞雑誌及通信社ニ関スル調』の複製版です。
  • 『広告年鑑』(御茶の水書房 年刊 【Z41-5437】)※複製版
    1926年版から1933年版まで、新聞約600タイトル、1927年版から1933年版まで、雑誌約200タイトルの部数一覧を収録しています。ただし、多くの空欄があります。
    広告代理店の万年社が当時編纂した年鑑の複製版です。

3-4. 新聞の部数がわかるもの

採録データの年代順に紹介します。

  • 山本武利 著『近代日本の新聞読者層』(法政大学出版局 1981 【UC126-39】)
    1875年から1945年まで、約10タイトルの部数一覧を収録しています。
  • 鵜飼新一 [著]『朝野新聞の研究』(みすず書房 1985 【UC126-59】)
    1877年から1899年まで、約60タイトルの部数一覧を収録しています。
  • 『新聞販売概史』(日本新聞販売協会 1979 【UC171-53】)
    1904年、1907年の約60タイトルの部数一覧を収録しています(pp.128-131)。
  • 『新聞名鑑』(2版 日本電報通信社 1909 【64-215】)(国立国会図書館デジタルコレクション
    1909年の約300タイトルの部数一覧を「全国新聞一覧表」(pp.70-119)に収録しています。
  • 『日本新聞年鑑』(新聞研究所 1925-1940 【14.4-709】)(国立国会図書館デジタルコレクション
    『日本新聞年鑑』全19冊(日本図書センター 1985-1986 【UC126-60】)※複製版
    おおむね1928年から1933年まで、「現勢:府県別及社別実情」に公称部数一覧を収録しています。
  • 「警視庁管下に於て発行する主要日刊新聞紙発行状況」(『出版警察報』(64) 1934年1月 pp.213-214 【Z21-1169】)
    1933年の東京紙約20タイトルの朝刊、夕刊の部数一覧を収録しています。
  • 『正義社新聞総覧 昭和13年版』(正義社 1938 【799-141】)
    独自調査によるデータを収録しています。
  • 山本武利 著『占領期メディア分析』(法政大学出版局 1996 【UC23-G10】)
    1941年から占領期まで、三大紙、東京紙10タイトル、地方紙10タイトルなどの部数一覧を収録しています。

〈社史〉

関連情報