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第133回常設展示 ユートピア -どこにもない場所-

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第133回常設展示 ユートピア -どこにもない場所-

キーワード:ユートピア  カテゴリ:社会・労働・教育 件名(NDLSH):ユートピア  分類(NDC):309.2


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平成16年10月1日(金)~11月16日(火)

 

I.理想の国 −秩序ある平等な社会を求めて−
II.ユートピアはまだか —産業革命と技術革新の時代に—
III.「反」ユートピア —科学の進歩の果てに—
IV.現代のユートピア、そしてこれからのユートピアは?
主要参考文献

ユートピアは、トマス・モアによる造語で、「どこにもない場所」を意味しますが、同時に「よい場所」という意味も含んでいるそうです。モアによって『ユートピア』が著される以前から、人々は理想の場所、社会を想像し、描き出してきました。プラトンの『国家』やキリスト教のエデンの園、そして中国の桃源郷や浦島の竜宮城など、政治・経済・家族のあり方が具体化された理想社会から、空想的な楽園まで、人々は洋の東西を問わず、広く理想の場所について思いめぐらせてきました。
しかし、一括りに"ユートピア"と言っても、そのイメージは、 洋の東西で大きく異なります。 東洋のユートピアが曖昧で楽園的なものであるのに対し、西洋のユートピアは、それぞれの時代の影響を受けながら、当時の社会への批判を込めると同時に、理想の実現をするために必要とされる具体的な要素が詳細に描かれたものが中心となっています。それらの理想像は、単なる夢物語ではなく、次の時代に希望をつなぐものとして機能し、時代の変革に寄与してきました。
今回の展示では、西洋のユートピア作品を中心にご紹介しています。

  • 【 】は当館の請求記号です。

 

I. 理想の国 −秩序ある平等な社会を求めて−

近代国家が成立する以前に書かれたユートピア作品では、平和で秩序ある平等な国家を築くために必要な条件について、詳細に記述されているものが多く見られます。これらの作品では、全体の秩序や安定が重視されているため、個人の自由は制限されたものとなっています。

I-1 初期のユートピア

◆ プラトン『国家』(前375年頃)
ソクラテスが若いアテナイの人々に語るという形で、理想の国家像が示されています。プラトンは、「人がいかにすればより善く生きられるのか、そして正義を実現し、幸福を得られるのか」という視点から、最善の国家像を考察しています。そうした理想的な国家の実現のためには、哲人による統治が必要であり、哲人を生み出すための教育のあり方、平等な社会を築くために必要な社会制度のあり方など、最善国家を築くために必要な条件が示されています。

1) 理想国家
プラトン著 村松正俊訳 春秋社 1933年
【629-42】
2) The Republic, with an English translation by Paul Shorey.
Plato, London, W. Heinemann, 1946.
【321.4-P718rEs 】
見開きで、ギリシャ語と英語で書かれています。

◆ エデンの園の描かれた地図
実在しないはずの「エデンの園」が描かれた地図です。エデンの園は、旧約聖書の中で人類の祖とされるアダムとイブが最初に住んだ楽園です。神話のなかの空想の地であり、当初は実在する場所とは考えられていませんでした。しかし、その後中世になると、聖書の内容が唯一絶対の真理とされるようになり、エデンも空想の場所ではなく、実在しなければならない場所へと変わりました。その結果、地図の中にもエデンの園が描かれるようになりました。
この地図は、1300年頃に描かれたヘレフォード図です。エデンの園は、中央上部の丸の中に描かれています。矢印の部分です。

3) The image of the world : 20 centuries of world maps.
Peter Whitfield, London, British Library, 1994.
【G72-A29】

◆ トマス・モア『ユートピア』(1516年)
イギリスの法律家トマス・モア(1478〜1535)によって著された作品です。前文でもご紹介したとおり、「ユートピア」ということばは、モアによる造語です。1516年にラテン語で出版され、その後、英語等の各国語に翻訳されました。
ユートピア島という架空の島に存在する理想国について、様々な国を航海したラファエル・ヒロスディという1人の老人がモアに語るという形式になっています。この理想国では、人々は等しく1日に6時間(午前、午後3時間ずつ)労働し、生産物は皆で分け合う仕組みとなっています。モアは、多数の貧しい農民が生産に従事し、少数の豊かな貴族が消費に従事していた当時の社会を批判し、全ての人が飢えることなく、幸福に生きられる理想的な社会像を描き出そうとしました。

4) ユートピア
T.モア著 平井正穂訳 新月社 1948年
【F33-Mo43ウ】
5) Utopia.
Thomas More, New York, Da Capo Press, 1969.
【HC61-8】
1551年に出版された英語版の複製

◆ カンパネッラ『太陽の都』(1623年)
イタリアの修道僧のカンパネッラが29年間に及ぶ獄中生活の中で書き上げた物語です。コロンブスの航海長をつとめたジェノバ人が、1人の修道士に、航海の途上でたどり着いた赤道直下の偉大な国「太陽の都」について語るという形で、理想の国家について書かれています。この国では、労働、教育、性、宗教など生活のあらゆることについてきまりがあり、多くのものが共有されるシステムとなっています。カンパネッラの考えた、公平で、最大幸福を達成できる可能性をもったある一つの社会像が描かれています。

6) 太陽の都:付・詩篇
カンパネッラ著 坂本鉄男訳 現代思潮社 1967年
【132.58-cC18t-S】

◆ フランシス・ベーコン『ニューアトランティス』(1626年)
航海の途中に漂着した孤島「ベンサレムの国」の歴史や社会体制、風習を伝えた物語です。この国にある学問の府「サロモンの家」では、人間の領域を拡大するために、機械技術や農業などの様々な科学実験が行われています。ルネサンス後期の科学技術万能思想に支えられて、科学の進歩が人々を幸福にするという確信のもとに書かれています。

7) ニユ・アトランチス
フランシス・ベイコン著 中橋一夫訳 日本評論社 1948年
【F33-B13ウ】
I-2 理想の政体を求めて —絶対王政下のユートピア—

絶対王政下で繰り返された戦争、搾取は、イギリスやフランスで、社会構造の変革を求める動きを生むことになりました。一方で、ルネサンス期を通じてヨーロッパに広まった古代社会についての知識が「民主制」モデルの発展に貢献します。憲法、平等、国民主権・・・、今日私たちが享受している多くの制度がこの時代の政治哲学者たちによって構想されました。不安定な政情の中で、彼らの思想は「ユートピア」小説や旅行記のかたちで発表されることもしばしば。しかしその具体的かつ詳細にわたる記述には、理想の実現への野心が十分に見て取れます。

◆ ジェイムズ・ハリントン『オセアナ共和国(The Commonwealth of Oceana)』(1656年)
イギリス革命期の政治哲学者ジェイムズ・ハリントン(1611-77)は"The Commonwealth of Oceana"の中で「イギリス共和国」を描き出しました。1656年、クロムウェルによる共和政期に初版刊行。ここで提案された財産・土地の均衡分配や官吏の民選・交代制、二院制といった制度は、後にアメリカ諸州の憲法、フランス革命の思想などに影響を与えたと言われています。1660年に王政が復古すると、ハリントンは反逆罪の名の下に逮捕・投獄され、失意のうちに生涯を閉じることになりました。

8) The Commonwealth of Oceana.
James Harrington, London, G. Routledge and Sons, 1887.
【193-156】

◆ ユートピア旅行記
15世紀末以来の大航海時代を背景に、『別世界または日月両世界の諸帝国』(1657-62年)や『ガリバー旅行記』(1726年)など、航海の途中で漂着した島や宇宙空間への旅といった現実とは別世界での遭遇・体験をつづった物語が多数書かれました。政治や宗教を批判することが厳しく禁じられていた時代、新しい政治・社会制度の提案をする際に、どこか別の国でのお話=「ユートピア旅行記」という形で、作者の思想・理想が表現されました。

9) ユートピア旅行記叢書
赤木昭三(ほか)編 岩波書店 1996‐2002年
【KE211-G6】
この期間に書かれたユートピア物語の中から、約30点の物語を集めた叢書です。全15巻に及びます。

◆ ルイ=セバスティアン・メルシエ 『2440年(L´an 2440)』 (1770年)
フランス、アンシャン・レジームが今にも崩れようとしていた1770年、ルイ=セバスティアン・メルシエ(1740-1814)は「革命を予言」する書 "L´an 2440"を、匿名で、母国を離れたオランダ・アムステルダムで刊行しました。この物語は、ルイ15世時代の男が西暦2440年のパリに迷い込んだという設定で、絶対王政下の諸制度・社会から解放された未来を描き出しています。モア以来、空間としての「どこか」に設定されてきたユートピアが、時空間上の「未来」に設定されたという点に、進歩史観の広まりを見るという論者もいます。進歩を信じ、理性を信じるメルシエの筆は、彼自身が生きた18世紀の啓蒙思想と素直に呼応しているかのように見えます。しかし同時に、本書のいたるところで彼はその独創的な発想を披露します。戦争の際、砲弾を打ち込む代わりに、神学と法学の書物を敵国に送り込み内側からの崩壊に追い込むという話、青年が成人するための儀式として、望遠鏡を見せて天空の無限を教え、ついで顕微鏡を見せて微小の世界の無限を示し、そうやって青年の魂を神=自然に触れさせるという話・・・。それらは同時代への辛辣な皮肉でもありました。

10) Memoirs of the year 2500.
Louis-Sebastien Mercier, Clifton, A.M.Kelley, 1973.
【KR164-15】
『2440年』には、多くの偽版が現れたほか、出版後まもなくドイツ語、英語等に翻訳され流通しました。展示本は1795年フィラデルフィアで刊行された英訳版の復刻。

II. ユートピアはまだか —産業革命と技術革新の時代に—

18世紀後半に起きた産業革命の後、大量生産による人間性の喪失や資本家と労働者の対立など、資本主義がもたらした弊害が広く認識されるようになりました。こうした時代の影響を受けて、19世紀には、資本主義的なあり方を批判し、社会主義やその他のあり方を目指した作品が描かれるようになりました。一方、この時代に相次いだ科学上の発見は未来についての新たな想像力の地平を切り開きました。

◆ E. ベラミー『顧みれば』(1887年)
中央集権的な国家統制および技術革新や発明によって、人々の生活が豊かになるという、科学技術に支えられた社会主義的なあり方を理想とした作品です。この「金色の」20世紀の物語は、ヨーロッパ各国で労働者階級による社会主義運動が起こり始めた19世紀後半の1887年に、アメリカで刊行され、ベストセラーになりました。「労働問題は100年後にどのような解決を見たのか」。1世紀以上の眠りから覚め、西暦2000年のボストンに降り立った主人公は、その回答を目の当たりにします。この作品はイギリスで田園都市論を構想したハワードにも大きな影響を与えたと言われています。

11) Looking backward, 2000-1887.
Edward Bellamy, New York, Vanguard Press, 1926.
【KS152-68】

◆ ウィリアム・モリス『ユートピアだより』(1890年)
19世紀イギリスの美術工芸家ウィリアム・モリス(1834-96)は、工場で大量生産された製品の無味乾燥さと、そこでの労働の非人間性に疑問を呈し、手仕事の復興による人間性の回復を提唱しました。『ユートピアだより』は、1890年、モリスが所属していた社会主義同盟の機関紙『コモンウィール』に発表した小説です。ここに語られる未来世界では、すべての人は「芸術家」として仕事をし、「仕事そのもののなかに」喜びを見出しています。

—「特別よい仕事にも報酬はないのですか?」「報酬ならたっぷりとあります。創造という報酬が。(中略)物をつくることの喜び、それはつまり、すぐれた仕事をするということなのですが、それでもって支払いを請求するとなったら、そのつぎには、子どもを生んだから請求書を送る、という話を聞かされることになるでしょう。」

(展示本13, 140頁)

12) ウィリアム・モリス展カタログ
土居義岳(ほか)訳 ブレーントラスト編 ウィリアム・モリス展カタログ委員会 1989年
【KC521-E93】
モリスは、彼の愛した美しい村に、新婚生活を送るための自邸「赤い家」を設計しました。彼が自ら実現したこの「地上の楽園」は、優れた職人の手による使いやすく質の良い家具や装飾品に満たされていました。
13) ユートピアだより:もしくはやすらぎの一時代、ユートピアン・ロマンスからの幾章
ウィリアム・モリス著 川端康雄訳 晶文社 2003年
【KS164-H36】

◆ H.G. ウェルズ 『タイム・マシン』ほか
科学師範学校で学んだH.G.ウェルズ(1866-1946)は、当時のヨーロッパを揺るがしたダーウィンの進化論に強く影響を受けてその科学的想像力を開花させましたが、彼が1895年に発表した『タイム・マシン』(1895年)の中で描いたのは「退化」する未来でした。安定が長く続き過ぎたゆえに低下する知性やカニバリズムの復活など、「反」ユートピア的なエピソードを含みながらも、物語は希望の言葉のうちに締めくくられます。

—「二つの奇妙な花が私を慰めてくれる。この花は今は萎びて茶色に変色し、形も崩れてしまったが、それでも、人間から知性と力強さが退化してしまった未来世界においてさえ、感謝とこまやかななさけが、人の心の中に生き続けている証拠だからである。」

(展示本14, 121頁)

14) タイム・マシン
H.G. ウェルズ著 橋本槙矩訳 岩波書店 1991年
【KS175-E285】
15) A modern Utopia.
H.G Wells, London, Chapman&Hall, 1905.
【171−104】
ウェルズが描いたユートピア。この作品に描かれた理想国では "samurai" というエリート集団が秩序を維持し、社会を管理しています。

III. 「反」ユートピア —科学の進歩の果てに—

20世紀に入り、人々は、科学の進歩・国家による統制が幸福をもたらすだけのものではないということを強く認識するようになりました。このような時代の影響を受けて、機械文明や管理社会化がもたらす恐ろしい未来を描いたディストピア(反ユートピア)物語が登場します。

◆ カレル・チャペック『ロボット』(1920年)
チェコを代表する作家、カレル・チャペックによる戯曲です。人が労働から解放されるために作り出された、労働のための人造人間、"ロボット"。人間と同じ容姿をしているが、感情は持たず、毎日労働に励むロボットたち。ある時、ロボットが魂を持つようになったことから、ロボットたちは人間を憎むようになる。ロボットの反乱が起き、人間は滅亡し、ロボットが世界を支配するようになる。機械文明を風刺的に批判すると同時に、人間の生の本質、人間のほんとうの幸福について問いかける作品です。

—「われわれは機械でした。しかし、恐怖と苦痛を経てわれわれはなったのです——」
—「何に?」
—「魂になったのです」

(展示本16, 119頁)

16) カレル・チャペック戯曲集1:R.U.R.ロボット
カレル・チャペック著 栗栖継訳 十月社 1992年
【KP266-E5】
物語の終わり。魂を持った男女のロボットが互いへの愛を知る。ロボットの世界にアダムとイブが現れた。「生命は滅びないのです!」
17) 人造人間:戯曲
カレル・カペック著 宇賀伊津緒訳 春秋社 1923年
【522-22】

◆ ハックスリー『すばらしい新世界』(1932年)
人工孵化・条件反射教育センター」— そこでは、人工受精によって、階級ごとに、その労働に必要な知能、能力を持った人間が計画的に生産されています。科学技術が高度に発達し、全体主義的統制が行き渡った未来社会。「個人」の顔を剥がされた「文明」人に対して、「文明」の外から来た「野蛮人」が問いかけます。「君たちは、自由に、そして、人間らしく、なりたくはないのか?」

18) Brave new world.
Aldous Huxley, Anstey, Thorpe, 1983.
【KS158-A29】

◆ ジョージ・オーウェル『1984年』(1948年)
ところ構わず貼ってあるポスターには黒い口髭の男。"Big Brother Is Watching You."という文字が威圧的に浮かんでいます。 1984年の架空の世界では、オセアニア、ユーラシア、イースタシアの3つの巨大な国家が誕生し、それぞれにおいて全体主義的管理体制が敷かれています。主人公が暮らすのはオセアニア国・ロンドン。"Big Brother(偉大な兄弟)"を指導者とするINGSOC党の支配のもと、「テレスクリーン」という装置により、生活のすべてが監視されています。一党独裁、マスメディアの操作、思想警察・・・、大戦後の世界で認識され始めた新たな脅威を、オーウェルは強調して描き出し、同時代への警鐘を鳴らしました。

19) 1984 : a novel.
George Orwell, New York, New American Library, [1953].
【813.5-O79n】

IV.現代のユートピア、そしてこれからのユートピアは?

20世紀後半には、それまで何百年もの間、想い描かれてきたユートピア像が実現しつつあることが認識されるようになりました。そうした中、これまでのユートピア像への批評や新たなユートピアの模索などが行われ、それまでとは違う視点でユートピアが捉えられるようになっています。

◆ ヒッピーのユートピア
1960年代のアメリカに、既成の価値観や管理主義的な社会に反抗し、自分たちの独自のスタイルを模索する若者たち、"ヒッピー"が現れました。彼らは、ラブ&ピースを掲げ、独自のファッションに身を包み、放浪旅行をしたり、無政府的な独自のコミュニティを創って生活をしたりと、自由な生き方を求めました。彼らのスタイルは、ハックスリーやオーウェルが予見した恐ろしい未来像への抵抗であり、自分たちのユートピアを創り出そうとするものでした。

20) アメリカの世紀 8(1960−1970)
Time-Life Books 編集部 西武タイム 1985年
【GH82-40】

◆ ユートピア批評
「ル・モンド」紙の寄稿者、ブラジルの「エスタード・デ・サンパウロ」紙の特派員として知られ、世界各地、とりわけブラジルのアマゾン流域地帯を放浪し、文明と文化について考えつづけてきたラプージュのユートピア批評です。1973年に刊行され、注目を集める書となりました。この中でラプージュは、「どれでもいい、あるひとつのユートピアの町は、鎖につながれた世界、過酷な境遇、代数学のような社会生活、といったものを描き出している。」と、批評しています。すなわち、ユートピアが閉じられた空間で、逸脱や畸形を排除し、個人の自由や多様性を排除することによって成立していたということを指摘しています。

21) ユートピアと文明
ジル・ラプージュ著 中村弓子・長谷泰訳 紀伊国屋書店 1988年
【EB1-E1】

◆ コンピュートピア
ヒッピーの文化が全盛期だった頃、他方で、1967年に日本で『コンピュートピア』という雑誌が創刊されています。コンピュートピアとは、コンピュータとユートピアの合成語で、「コンピュータによって築かれる理想的な未来社会」を意味します。
1968年1月号に書かれた「21世紀・コンピュータ社会」という記事の中で、21世紀を次のように予見しています。

—「21世紀の社会機構が成立するについては、電子計算機の存在が全く欠かせぬものではなかろうか?…… 科学技術、医療、気象、地理、医学、教育、キャッシュレス、運輸、通信、郵便、労働市場、不動産、警察、法律など、ありとあらゆる世界が電子計算機メモリの極微の世界の中で作られ、こわされ、さらに良いものにつくり上げられ、そしてその結果が実際の社会に適用されていくだろう。」

現在の社会を見渡すと、この予見された“コンピュートピア”は実現しつつあるように思えます。これは、まさに科学技術の進歩に託した、人々の数百年間の理想の実現であるとも言えるのかもしれません。

22) 「21世紀・コンピュータ社会」
鈴木健一著 『コンピュートピア』(1968年1月) コンピュータ・エージ社
【Z14-306】

◆ これからのユートピアは?
最近は、ユートピアについて語られることがあまりありません。それは、コンピュートピアの実現が示すように、それまで考えてきたことが実現したからなのでしょうか。それとも、目まぐるしい速さで進歩する時代にあって、新しい理想像を描くのが難しくなっているのでしょうか。あるいは、もう20世紀までのように、一つのユートピア像を描いて、それを追い求める時代ではなくなったのでしょうか。
展示の最後に、日本を代表する世界的な建築家とアーティストである二人が示す、今日とこれからのユートピア観をご紹介して、この展示を締めくくりたいと思います。これからのユートピアについて、みなさんはいかがお考えでしょうか?

23) 「エッセイ 九月十一日の後では、ユートピアを語ることができない」
磯崎新 著 『JA』(2001.winter) 新建築社
【Z11-2252】

「現代のテクノロジーが自爆したのである。・・・9月11日の事件はいい換えるとテクノロジーの自爆である。・・・少なくとも1世紀にわたって追求されてきた近代のテクノロジーが表象するものが瓦礫となったのだ。」

24) 「インタビュー 100年後の私たちはユートピアに住んでいる(特集 オノ・ヨーコ −未来に贈るIMAGINEの力)」
藤森愛実・オノヨーコ著 『美術手帖』(2003年11月)美術出版社
【Z11-44】

「100年後には、結局、老いはなくなるし、病気もなくなるし、それから、戦争なんてこともしなくってすむようになる。私の夢かもしれないけれども、でももう技術的にそうなるということははっきりわかっているわけですから。……みんなが頭を使って、その知恵を出していくんです。…結局はユートピアになるということです。」

主要参考文献

『世界大百科事典』1988年版
平凡社 1988年
【UR1-E9】
The Columbia encyclopedia, 6th edition.
Paul Lagasse, New York, Columbia University Press, 2000
【UR17-A45】
『ユートピアの幻想』
川端香男里著 講談社 1993年
【EB45-E14】
『ユートピアの系譜』
ルイス・マンフォード著 関裕三郎訳 新泉社 2000年
【EB45-G5】
『古地図から幻の国々を読む方法』
辻原康夫著 河出書房新社 2002年
【GA41-H1】

 

 

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