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第134回常設展示 雪-冬に咲く華-

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第134回常設展示 雪-冬に咲く華-

キーワード:雪;結晶  カテゴリ:科学技術 件名(NDLSH):雪;結晶  分類(NDC):451.66

 

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平成16年11月18日(木)~平成17年1月18日(火)

 

I.雪の記憶 −雪結晶研究の始まり−
II.雪華紋様 −江戸時代における雪結晶研究−
III.写真に現れた雪 −雪結晶研究の進歩−
主要参考文献

季節は、毎年やって来ては、あっという間に過ぎ去っていきます。私たちは、日々の生活の中で季節の変化を敏感に感じ取ることを、いつのまにか忘れがちになってはいないでしょうか。ふと気づけば、今年も厳しい冬が巡ってきました。
四季に恵まれた日本では、このひとときにだけ咲く花があります。天から降り注ぐ真白な花、雪華です。雪の結晶には一つとして同じ形がなく、またその美しさから、花に譬えられてきました。この小さな花々を、実際にご覧になったことのある方は少ないと思われます。
結晶の形は、六枚の花びらを持つように見える樹枝状が良く知られていますが、他にも鼓型、角錐状、針状などの様々な形状があります。また、雪ははかなく美しいだけでなく厳しく冷たい一面もあわせ持ち、私たちに様々な姿を見せてくれます。今回の展示では、その不思議な力に魅せられた人々が残した貴重な記録をご紹介いたします。

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I. 雪の記憶 −雪結晶研究の始まり−

雪は、私たちの生まれる以前から、変わりなく降り続いていました。時には温暖な地方でも降雪があり、人々をびっくりさせることもあります。そんな身近な存在である雪の不思議に早くから気がついた人々は、科学的な観点から研究を進めてきました。雪の結晶が六方対称をなしていることは今でこそ良く知られていますが、まだ顕微鏡もなかった時代には、雪はどのような姿をしていると考えられていたのでしょう。そして、最初にそれに気がついたのは誰だったのでしょうか。

◆ 1) 『藝文類聚』上
欧陽詢撰 新華書店上海発行所 1965年
【032.2-O972g-(s)】
「韓詩外傳曰凡草木花多五出雪花獨六出雪花曰霙雪雲曰同雲」
(韓詩外傳には草や木の花はたいてい五弁であるが、雪花だけは六弁である。雪花のことを「霙」といい、雪雲のことは「同雲」という。)
前漢時代の学者韓嬰は2000年以上も昔に雪の結晶が六角形であることを「韓詩外傳」の中に記しています。唐代にまとめられた『藝文類聚』には、韓詩外傳に雪の花は六出であるとの記述があったと伝えられています。
また、雪が六角形であるという記述が見受けられる一方で、中国では古くから、冬至を過ぎたあとの雪の花は五角形であるという説もあったようです。
◆ 2) 『北方民族文化誌』上巻
オラウス・マグヌス〔著〕 谷口幸男訳 溪水社 1991年
【GG611-H5】
16世紀のウプサラの大司教オラウス・マグヌス(Olaus,Magnus 1490-1557)による、現在残っている最も古い雪のスケッチ。1555年に出版されたHistoria de gentibus septentrionalibusには、北欧における地理や文化がまとめられており、現在のイメージとは異なる雪のスケッチが描かれています。
◆ 3) 「新年の贈り物あるいは六角形の雪について」
ケプラー原著 榎本恵美子訳 『知の考古学』 第11号(1977.4)p.276〜296
【Z23-333】
雪の結晶が六方対称であることを初めて認識したのはケプラー(Kepler,Johannes 1571-1630)であるとされています。小論文「新年の贈り物あるいは六角形の雪について」Strenaseu De Nive Sexangulaには、「無」を好む主人にふさわしい新年の贈り物として、雪の結晶を挙げています。さらに、「無」に最も近い贈り物を雪とした理由を述べ、雪の結晶が「なぜ六角か」についての説明を試みています。
◆ 4) 「気象学」
『デカルト著作集』1 デカルト〔著〕 赤木昭三訳 増補版 白水社 2001年
【HD115-G24】
哲学者としてはもとより、数学者・科学者としても有名なデカルト(Descartes,Rene1596-1650)が1635年、アムステルダムで記録した雪のスケッチ。
17世紀の前半には多くの学者が雪の結晶に興味を持ち、研究が進められました。デカルトは、観察の度に雪の結晶の形が違うことに気づき、それぞれの種類の雪についてその生成条件や生長過程を考察しています。彼もまた観察した雪の結晶の一部を花に譬え、「小さな薔薇の花の形」と表現しています。
◆ 5) Micrographia.
R. Hooke, Bruxelles, Culture et Civilisation, 1966.
【574.078-H782m】
顕微鏡の発明は全ての学問的研究に大きな飛躍をもたらしました。雪の研究史において、顕微鏡を用いた観察は、細胞の発見者として有名なロバート・フック(Hooke, Robert 1635〜1703)に始まりました。彼は、顕微鏡を使って様々なものを観察しましたが、その対象物のなかに雪も含まれており、霜の結晶などとともに雪の結晶の観察図がスケッチされています。
◆ 6) An account of the Arctic regions, with a history and description of the northern whale-fishery .
William Scoresby, Newton Abbot, David & Charles, 1969.
【RB811-2】
イギリスの捕鯨業者スコアズビー(スコレスビー)(Scoresby, William 1789-1857)は、北海における捕鯨の歴史を書き記しました。中には気象に関する記述もあり、96個の雪華図が載っています。従来見逃されていた、鼓型など新しい種類についてその構造を明らかにし、結晶の形を5種類に分類しました。

II. 雪華紋様 −江戸時代における雪結晶研究−

日本では平安時代から、雪は「六つの花」と呼ばれ、文学作品の中でよく使われていました。しかしそれは中国から輸入した知識によるもので、実際に雪の結晶が六方対称であることは認識されていなかったようです。日本で雪の研究が科学的に行われるようになったのは、江戸時代に西洋の学術・知識が伝わってからのことです。医学や物理学の書物に加え、顕微鏡が入ってくると、蘭学者たちにより雪の観察もされるようになりました。顕微鏡で見た雪の結晶図の本が出版されると、雪の結晶が繊細で美しい形をしていることが世間に広まって、着物の柄に使われるなど、当時のファッションにまで影響を及ぼしました。

◆ 7) 『気海観瀾』
青地林宗〔著〕 那珂書店 1942年 〔謄写〕
【309-116】
蘭学者の青地林宗(1775-1833)が、オランダの科学者ボイス(Buys, Johannes 1764-1838)の著書Natuurkundig schoolboekをもとに訳述したもので、文政10年(1827)に出版されました。日本初の物理学書として高く評価されています。大気の微粒子説や万有引力説などをもとに、雨、風、雲、虹などの気象現象が解説されています。
◆ 8) 「天球全図」
『司馬江漢全集』第3巻 朝倉治彦〔ほか〕編 八坂書房 1994年
【US21-E48】
「雪ハ六出ヲナス、或ハ十二又二十四、皆六数ヲナス、蘭書麻尓智業杜ト云ニ図アリ、其形チ数品、彼国五十余度ニシテ寒土ナリ、故ニ日本ニ未タ見ザル雪ノ形チ多シ」
蘭学者・画家の司馬江漢(1738-1818)は、平賀源内の影響を受けて洋風画を研究し、日本で初めて銅版画の製作に成功しました。寛政8年(1796)に著した『天球全図』には、雪の結晶の観察図があります。それは樹枝状の六花、十二花、二十四花の結晶図として描かれています。タイトルに「以顕微鏡観雪花図」とあり、上記の説明文からはマルチネット(壁面1.Katechismus der natuur)の影響がうかがわれます。
◆ 9) 「雪華図説」
『雪華図説・続雪華図説』 土井利位著 築地書館 1968年 復刻版
【451.66-D83s】
下総国古河藩主、土井利位(1789-1848)が、顕微鏡を用いて描いた雪の結晶図集。利位は蘭学者であった家老の鷹見泉石の協力を得て、大阪、京都などで長年に渡り雪の結晶の観察を続けました。天保3年(1832)に出版された『雪華図説』には、98個の雪華図(うち12個はJ.F.MartinetのKatechismus der natuurからの転載)がおさめられており、その図は、自然に忠実なものであると同時にデザインとしても優れています。本文には、雪の生成の物理、結晶の観察法、雪の効用などについて書かれています。この本はたいへんな評判となり、天保11年(1840)には97個の結晶図を収めた『続雪華図説』が出版されました。
◆ 10) 『北越雪譜』
鈴木牧之編選 岩波書店 1982年
【KG294-28】
越後の国塩沢に生まれた鈴木牧之(1770-1842)が雪国の風俗・習慣について書いた本。内容は、雪の科学から雪国の行事まで幅広く、挿し絵(原画は牧之、仕上げは山東京伝の弟の京山)も豊富で当時のベストセラーとなりました。初編の「雪の形状」という章には、「験微鏡を以て雪状を審に視たる図」とあり、前記『雪華図説』の結晶図が引用されています。『雪華図説』は、この本を通じて広く知られるようになりました。
◆ 11) 「文様の歳時記」
『続・日本の意匠』10 京都書院  1995年
【YQ11-1150】
古くから雪は風流なものとして、様々な芸術作品のモチーフとなっていました。雪輪文様や柳などの植物に積もった雪を描いた雪持柳文は、江戸時代以前から使われていましたが、『雪華図説』が出版されてからは、六角形の雪の結晶をデザインしたものが流行しました。雪の文様は土井利位の官職名(大炊頭)をとって、「大炊模様」と呼ばれ人気を博していたようです。着物の柄や装飾品に雪華の意匠が多く取り入れられました。
◆ 12) 『新撰伊呂波引紋帳大全』
井上久太郎編 修文書屋 〔刊年不明〕
【YDM6012 (マイクロフィッシュ)】
家紋には、初雪、吹雪、山雪、氷柱雪など雪の名のつくものがいくつかあります。『雪華図説』の流行後には、六弁の結晶を紋章化したものが増えたと言われています。また一方で『雪華図説』には、雪とは関係ない篭目、細麻の葉、丁子車、中陰ほし梅鉢などの紋と似ている図もあります。このような紋あるいは紋章を好む日本人の美意識が、土井利位が雪華図を描く際に影響を与えたとも考えられます。
壁面1) Katechismus der natuur. 〔複製〕
J.F. Martinet, Amstedam, Wed. Loveringh en Allat, 1778-1779.
【WB29-34】
オランダの牧師マルチネット(Martinet, Joannes Florentius 1729-95)による、先生と弟子の対話形式の教科書。天体、大気、地上、海洋、動物、昆虫、植物などについて書かれています。雪については、第1冊第3章の「大気とその現象について」に記述があります。寒い日に、降ってくる雪を空気中に冷やした黒い繻子で受けるという観察方法が解説してあります。司馬江漢や小野蘭山らも参照しており、土井利位はその著作『雪華図説』(天保3年(1832)刊)の中で雪の結晶の図版をほぼそのまま使用しています。
壁面2) 「十五 光孝天皇」 〔複製〕☆
『百人一首絵抄』 国貞改二代豊国
【寄別2-3-2-1】
君がため春の野にいでてわか菜つむ 我衣手に雪はふりつつ
壁面3) 「其姿紫の写絵 三」 〔複製〕☆
『其姿紫の写絵』 国貞舎豊国
【寄別2-7-2-5】
錦絵はその時代の流行に大きく寄与しています。2では、着物の柄に、3では襖に『雪華図説』と同じ雪の紋様が見てとれます。

III. 写真に現れた雪 −雪結晶研究の進歩−

19世紀に入ると、顕微鏡写真という技術によって、雪の研究は更なる発展を遂げます。1865年、ベントレーが撮影した雪の結晶の写真集は専門的な科学書ではありませんが、その一つひとつの結晶の美しさと豊富な数は、過去に類例を見ないことで世間から注目を浴びました。その写真集に影響を受けたひとり、中谷宇吉郎によって世界で始めて人工雪の結晶が生まれました。科学技術が目覚しく発展を遂げる中、雪の結晶についても最近では多くのことが明らかとなってきましたが、その謎めいた美しさはまだまだ私たちを魅了し続けてくれます。今年の冬は皆さんも、雪の結晶の世界を覗き見てはいかがでしょう。

◆ 13) Snow crystals.
W.A. Bentley and W.J. Humphreys, New York, Dover Publications,[1962].
【ME131-1】
後に「The Snowflake Man」と呼ばれたアメリカ・バーモント州のベントレー(Bentley, Wilson Alwyn, 1865-1931)の写真集には、彼が初期に顕微鏡写真の技術を使って撮影した雪の結晶が掲載されています。ベントレーが、その生涯を捧げて残した作品は、実に5000枚以上にものぼります。この本からは、多くの気象学の本などに写真が引用されています。
◆ 14) Snow crystals.
Ukichiro Nakaya,Cambridge, Harvard University Press, 1954.
【551.57-N163s】
北海道帝国大学(後の北海道大学)の教授となった中谷宇吉郎(1900-62)は、ベントレーの雪の結晶写真に刺激を受け、これがきっかけとなり雪の研究の道を歩んでいくことになります。1936年に世界で初めて人工雪の結晶を作ることに成功した後も研究を続け、気象条件と結晶の形状の相関関係を図にした中谷ダイヤグラムを完成させました。1949年にはその研究成果がまとめられ、Snow crystalsとしてハーバード大学から出版されました。写真は、雪の結晶が成長していく様子を示したものです。
◆ 15) 『雪』
中谷宇吉郎著 岩波書店 1945年
【451.66-N532y】
「このやうに見れば雪の結晶は、天から送られた手紙であるといふことが出來る。そしてその中の文句は結晶の形及び模様といふ暗號で書かれてゐるのである。その暗號を讀みとく仕事が即ち人工雪の研究であるといふことも出來るのである。」
雪の研究者として有名な中谷宇吉郎ですが、文才にも恵まれ、たくさんの随筆や一般向けの科学書を書いています。中でも『雪』は科学を新書の形で説いた最初の本としても有名です。北海道十勝岳での自然雪の観察や人工雪の作成など、雪の結晶についての研究がどのように行われたかが書かれています。自然科学の研究はどのように進められるのか、そしてそれがどんなにおもしろいものかをわかりやすく説いています。
◆ 16) 「IUGGブラッセル總會における「雪の分類」の決定について」
『雪氷』 第13巻第5号(1952.3) p.1〜9
【Z15-23】
IUGG(国際測地学地球物理連合)第9回総会の水理分科会に提出された、国際雪分類案にある雪の結晶の分類表。
雪の研究が進むとともに、各国の研究成果を比較利用できるような国際分類の必要性が提唱されるようになりました。スイスの雪と雪崩研究所長ドケルヴァン博士を中心に、各国から集った意見を参考に国際雪分類案が取りまとめられ、若干の修正を受けた後の決定となりました。雪の結晶は多種多様な形をしていますが、この決定では雹(ひょう)や霰(あられ)なども含め、大きく10種類に分類されました。
◆ 17) 「人工雪 宇宙に舞う」
『科学朝日』 第43巻第11号(1983.11) p.10〜12
【Z14-73】
1983年4月、スペースシャトル・チャレンジャー号は大きな期待を乗せて宇宙へと飛び立ちました。この度の飛行では、宇宙空間で雪の結晶を作り出す実験が行われました。一般公募されたアイディアによるこの実験は当時でも話題となり、新聞には連載記事が載り特集の番組も組まれるほどに世間の注目を集めました。1度目の打ち上げでは、雪の結晶を確認することはできませんでしたが、同年8月に行われた2度目の試みでは、見事宇宙での初雪を捕えることができました。
◆ 18) 『「雪」の結晶』
雪の美術館編 雪の美術館 c1991
【ME131-E28】
人間一人ひとりに個性があるように、雪の結晶にも様々な形があります。雪の結晶は一つとして同じものがないといわれており、その多種多様な姿は私たちに驚きや感動を与えてくれます。さて、皆さんはどんな結晶がお気に入りですか。

主要参考文献

『家紋大図鑑』
丹羽基二著 秋田書店 1971年
【GB43-17】
『宇宙の実験工場』
木村繁著 朝日新聞社 1983年
【NC161-119】
『雪の結晶−冬のエフェメラル』
小林禎作著 北海道大学図書刊行会 1983年
【ME131-40】
『雪の華』
古河歴史博物館編 古河歴史博物館 1995年
【ME131-G3】
『雪花譜』
高橋喜平〔ほか〕著 講談社 1995年
【ME131-G2】

 

 

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