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第137回常設展示 「竹取」物語

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第137回常設展示 「竹取」物語

キーワード:竹取;物語;文学;民俗学;翻訳  カテゴリ:芸術・言語・文学 件名(NDLSH):竹取物語  分類(NDC):913.31

 

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平成17年5月19日(木)~7月19日(火)

 

はじめに

『竹取物語』は9世紀末から10世紀始め頃に成立し、現存する限り日本最古の物語文学とされています。『源氏物語』の中でも、「物語の出で来はじめの親」と記されており、紫式部の時代から同様の認識があったようです。
そして、現在では国語科の教科書にも収録されており、古典文学にはさほど関心のない方でも、「今は昔、竹取の翁といふものありけり」のフレーズから始まる物語の冒頭は記憶にあるのではないでしょうか。
物語の成立から現在に至るまで、『竹取物語』は絵本、現代語訳、児童書などの多様な形式で、長い間受容されつづけてきました。時にはパロディ化されて、江戸時代の曲亭(滝沢)馬琴による草双紙『籠に成竹取物語』では、かぐや姫が男性となって登場します。その名も「角弥姫太郎」。また、日本だけにとどまらず、『竹取物語』は諸外国語に翻訳されて世界に紹介されています。19世紀末には、英訳された『竹取物語』が、多色刷りの版画とともに皺の入った和紙に印刷した「ちりめん本」としても出版され、当時来日していた欧米人のお土産物としても喜ばれたようです(『Princess Splendor』)。
さらに、『竹取物語』の世界を読み解くために多くの評論や注釈、研究が加えられてきました。原典や作者、登場人物のモデルなどが追い求められ、物語のルーツについても様々な説が出されています。日常生活で竹を活用してきたアジアでは、竹をシンボルとした民話が各地に伝えられています。例えば四川省のチベット族に伝わる『斑竹姑娘』という話は、竹から小さな女の子が生まれてきたり、求婚する貴公子たちに難題が課せられたりと『竹取物語』そっくりの展開です。
「かぐや姫宇宙人説」が出てくるほどに、『竹取物語』はSF小説を彷彿とさせるシーンが多いことでも知られています。かくも幻想的な『竹取物語』の世界観は、文学の世界をも飛び越えていきました。現在では、映画や演劇、歌舞伎、さらには漫画などさまざまな表現の世界で「竹取」や「かぐや姫」をモティーフとした作品を目にすることができます。
今回の展示では、「竹取」というモティーフの受容と展開に関する資料をご紹介します。千年もの時を経てなお人々の心を捉え続ける物語世界の魅力と、言語やジャンルを超えて生まれ変わった「竹取」の姿を楽しんでいただきたいと思います。

資料をご覧になる場合のご注意

  • 【 】は国立国会図書館の請求記号です。
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  • 資料名のあとに[複製]とあるものは当館のホームページ内「国立国会図書館デジタルコレクション」で画像をご覧になれます。
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  • 資料名のあとに[近代]とあるものは当館のホームページ内「近代デジタルライブラリー」で画像をご覧になれます。
    http://kindai.ndl.go.jp/index.html
  • 請求記号の前に◆マークが付されたものは国際子ども図書館でのご利用となります。

I 古典の中の「竹取」

「かぐやひめ」の名が登場する最古の資料は『古事記』(*1)であり、「又大箇木垂根王の女、迦具夜比賣命を娶して、生ませる御子、袁耶弁王。」との記載があります。また、『万葉集』(*2)巻第16には「昔老翁ありき。號を竹取の翁と曰ひき。此の翁、季春の月にして、丘に登り遠く望むときに、忽に羹を煮る九箇の女子に値ひき。」というように、「竹取の翁」の名が登場します。これらは『竹取物語』よりも成立年代が前になり、直接の関連は無いにしても、何らかの影響があるのではないかという空想が広がります。
『竹取物語』以後に成立した平安時代の物語の中には、その引用や影響が多く見られます。『大和物語』(*3)77段「明石の浦」には「竹取がよゝになきつつとゞめけむ君は君にとこよひしもゆく」(訳:「昔竹取の翁が、夜毎によよと泣きながら、昇天をとどめたというかぐや姫のように、あなたは私のとめるのもふりすてて折も同じ十五夜にご自身(月)をご覧に、父天皇のところへ、いらっしゃるのですね。」)という和歌が収められており、これが最古の引用とされています。また、『源氏物語』(*4)「絵合」の一説に「物語の出で来はじめの親なる竹取の翁」とあり、紫式部の『竹取物語』への評価として有名ですが、これ以外の場面でも、随所に『竹取物語』の影響がみてとれます。
平安時代末成立の『今昔物語集』(*5)には「竹取」説話が所収されており、『竹取物語』と内容もよく似ていますが、この「竹取」説話では、求婚者に対する難題が「空に鳴る雷」、「優曇華の花」、「打たぬのに鳴る鼓」の3題となっています。鎌倉時代の紀行文『海道記』(*6)にも「竹取」説話が所収されていますが、こちらでは、かぐや姫が鶯の卵から生まれます。
江戸時代にはパロディも作成されており、古典の中には様々な「竹取」物語を見つけることができます。

壁面1) 『竹取物語』[複製]
【本別12-3】
一般的に、よく知られている「竹取」物語。竹取の翁が光る竹の中に見つけたかぐや姫は、やがて絶世の美女へと成長します。そのうわさを聞きつけて求婚者が大勢現れ、中でも熱心な5人に結婚の条件として、それぞれ「仏の御石の鉢」「蓬莱の玉の枝」「火鼠の皮衣」「龍の首の玉」「燕の子安貝」を持ってくるように難題を課します。結局誰も難題はクリアできず、帝の求婚さえも拒んだかぐや姫は、中秋の名月の夜、月へと帰って行きます。
壁面2) 『籠に成竹取物語』[マイクロ複製]
曲亭馬琴作 勝川春扇画  文政3年
【207-1607】
馬琴作による『竹取物語』のパロディです。主人公は「竹取の翁猿木の宮平の一子、角弥姫太郎」。

*1〜6の資料は展示しておりません。上記文章中の引用部分は『日本古典文学大系』 (岩波書店 1957年等【918-N6852】)によります。

II 民俗学的「竹取」

日本では古来より生活のさまざまな場面で竹を活用してきました。竹に対する思いが深いためなのか、各地で竹にまつわるさまざまな伝承が伝わっています。その中には『竹取物語』に関わる伝説、あるいは「竹取」をモティーフとした説話も含まれています。
また、同様に竹と人々の生活との関係が密接であった、アジアの東部から南部にかけての地域にも、竹にまつわる民話や伝説が伝えられています。『竹取物語』のルーツを考える上で、それらの民話に注目する説も出されています。今回の展示では、それらの中から、「斑竹姑娘譚」についてご紹介します。

II‐A 日本
◆1) 「竹取翁考」(『定本柳田国男集 巻6』)
柳田國男 筑摩書房 1963年
【380.8-Y529y2】
柳田國男は、古代日本では民間に「竹取」説話が広まっており、それが記録として表れたのが『竹取物語』であるか、あるいは『今昔物語』中の「竹取」説話であると論じています。そして、5人の貴公子の求婚譚こそが説話の変化、すなわち著者の空想の「自由区域」であり、『竹取物語』の「文藝としての目途」が有る、としています。
◆2) 『竹の民俗誌 : 静岡、竹のある暮らし再発見』
静岡市立登呂博物館 2003年
【GC126-H3】
静岡県富士市は、一説には「竹取」伝説発祥の地とされており、展示資料掲載の「竹採塚」など『竹取物語』に関係する可能性のある伝説を持つ史跡が点在しています。「竹採塚」には「竹採姫」と刻まれており、碑が建立されている大字比奈にはかつて「竹取翁」なる人物が暮らしていたという説があります。また江戸時代には既に「竹取」伝説が伝えられており、「赫夜姫」という小地名もあるそうです。たしかに竹取物語のラストシーンは富士山であり、関連性を感じさせます。『富士市の竹取物語調査研究報告書』(富士市教育委員会,富士市竹取物語調査研究委員会編 富士市教育委員会 1987年 【GC128-E10】)には、富士市に伝わる「竹取」関連の史跡や伝承についての調査報告が掲載されています。
富士市以外にも『竹取物語』発祥の地を名乗る町は日本各地にあります。例えば奈良県広陵町は古名を大和国広瀬郡散吉郷といい、散吉は「さぬき」とよみます。ここには全国で唯一の「讃岐神社」があることから、竹取の翁の名前「さぬきのみやつこ」との関連性が指摘されています。(『広陵町史』広陵町史編集委員会 広陵町 2001年【GC176-G31】)
II‐B チベット民話「斑竹姑娘譚」

四川省のチベット族に伝承されていた『斑竹姑娘』という民話を1950年前後に中国の研究者が採集して出版しましたが、その『斑竹姑娘』が『竹取物語』ととてもよく似ていることが後になって発見されました。竹から小さな女の子が生まれる話や、五人の求婚者が難題に挑戦する話、そしてその難題の内容など、さまざまな点で『竹取物語』を彷彿とさせるものがあります。

◆3) 金玉鳳凰
田海燕編著 上海 少年儿童出版社 1957年
◆【Y2-AZ190】
チベット族の間には、チベット語で「死体が語る物語」を意味する「若鐘」、あるいは「語り尽くせぬ物語」と呼ばれるアラビアンナイト的な諸説話が伝えられてきました。田海燕は、四川省で採集した「若鐘」説話を基にして、それを「鳳凰が語る物語」という形式に書き改めた児童文学金玉鳳凰を著しました。金玉鳳凰 のあらすじは以下の通りです。大王子は国家の幸福を得るために神鳥である金玉鳳凰を探しに行きますが、捕まえるためには一切口をきいてはならないと教えられます。いざ金玉鳳凰を見つけて捕まえようとすると、この鳥は次々と物語を語りだし、盛り上がってきたところで話を止めて王子を焦らせて思わず口を利いてしまうように仕向けます。
金玉鳳凰が語る物語の一つが『斑竹姑娘』です。『竹取物語』とは異なって、主人公は「翁」ではなく男の子であり、また「竹娘」は月に帰ることもなくは男の子と結婚してしまいますが、5人の金持ちから求婚されることや、その際に出される難題が『竹取物語』ととてもよく似ています。
◆4) 『チベットのものいう鳥』
田海燕編 君島久子訳 岩波書店 1977年
◆【Y7-6008】
金玉鳳凰 の日本語訳です。やはり児童書として書かれています。1961年版の翻訳であり、展示の57年版金玉鳳凰よりも収録された説話の数が多くなっています(全27話)。『斑竹姑娘』もほぼ全訳で収録されており、『竹娘』というタイトルになっています。

III 現代語訳

◆5) 『かぐや姫 : 竹取物語』
西條八十文 織田觀潮繪 大日本雄辯會講談社 1939年
◆【Y17-N03-H1006】
「かなりや」や「青い山脈」などの作詞で知られる西條八十の手による絵本です。西條八十は「かぐや姫」の他にも「ガリバー旅行記」(◆【Y18-N03-H489】)や「ああ無情(レ・ミゼラブル)」(◆【児908-Sy9572-〔21〕】)など、数多くの海外の小説や童話を、絵本や児童文学として翻訳しています。また自らも探偵小説などの児童文学を著しています。1970年に出版された復刻版もあり、そちらは本館に所蔵されています。(「竹取物語かぐや姫」(『講談社の絵本』〔1〕)西條八十文 講談社1970年【KH6-19】)
◆6) 『竹取物語』
星新一訳 角川書店 1987年
【KG51-26】
「むかし、竹取りじいさんと呼ばれる人がいた。…(中略)野や山に出かけて、さまざまな品を作る。笠、竿、笊、籠、筆、箱、筒、箸。筍は料理用。そのほか、すだれ、ふるい、かんざし、どれも竹カンムリの字だ。自分でも作り、職人たちに売ることもある。竹については、くわしいのだ。」
日本のショートショートの代表作家である星新一による現代語訳。決してパロディで はなく、基本的には原文に沿いながらも、独特の文体で星新一ならではの『竹取物語』の世界が構築されています。各章の末尾ごとに星のコメントが加えられています。
◆7) 『竹取物語・伊勢物語』
田辺聖子著 学習研究社 1982年
【KH596-552】
「いまとなっては、もうはるかな遠い昔の話だ。竹取の翁という人があったとさ。
野山に分け入り、竹を取ってはいろいろな細工をしていた。名を、さぬきの造といったもんだ。…(中略)そのとき以来、こういうことを「よばい」というようになったんだ−なあんて。わはははは。」
田辺聖子は「古事記」や「落窪物語」、「源氏物語」など古典文学の現代語訳も数多く手がけています。また、古典文学にちなんだエッセイも書いています。
◆8) 「かぐや姫」(『大人のための残酷童話』)
倉橋由美子著 新潮社 1984年
【KH297-904】
東西の有名な昔話に毒の効いたアレンジを加えた短編集です。あとがきには「そこでそれなら一つ古いお伽噺に倣つて、論理的で残酷な超現実の世界を必要にして十分な骨と筋肉だけの文章で書いてみよう」とあります。
本書に収録された「かぐや姫」は『竹取物語』の結末とは異なり、地上に残ることになります。ただし、それまでの地上人の姿ではなく、宇宙人の姿で。そして、その姿は多くの人々がかぐや姫や天人に対して抱くであろう幻想を見事に裏切る、「目も口もない、手足も分からぬ肉塊」として描写されます。本書には各話の末尾に「教訓」が記されています。「かぐや姫」の教訓は「かぐや姫は宇宙人だった。そして宇宙人は醜い」。

IV 外国語訳

『竹取物語』は日本語のみならず、現在では様々な外国語にも翻訳されており、重要な日本文化の一つとして世界に紹介されています。
早いものでは19世紀後半の時点で、ディキンズなどの日本文化に深い関心を示した外国人らにより翻訳が試みられました。また、外国へ『竹取物語』を紹介するという目的以外にも、日本人の外国語学習に資するための読本として翻訳された例もあります。それだけ『竹取物語』は日本人にとって身近なものであり、かつ外国人の関心を呼ぶ物語でもあったのでしょう。

IV-A 英訳

IV-A-1 ちりめん本(E. Rothesay Millerによる訳)

◆9) Princess Splendor : the wood-cutter's daughter.
E. Rothesay Miller, Tokio , T. Hasegawa, 1895.
【KG51-A1】
ちりめん本とはちりめん紙(クレープ紙のように皺を寄せた和紙)に多色木版刷りの挿絵と欧文の物語を印刷した小型和綴本です。明治時代に長谷川武次郎により始められ、当初は日本人の英語勉強用のテキストとして作られたようですが、ちりめん紙の独特の質感や美しくエキゾチックな版画の挿絵は外国人のお土産にも好まれ、さらに海外へも輸出されました。ちりめん本の『竹取物語』は、他のちりめん本よりも厚く高価で、高い評判をよびました。
訳者のローゼイ・ミラーは1872年に来日した宣教師であり、横浜のヘボン塾や妻マリー・キダーが創始したフェリスセミナリー(現在のフェリス女学院大学)で教鞭を執ったこともありました。この本の奥付では「著者 米国人 ミロル」と記されています。

IV-A-2F.Victor.Dickinsによる翻訳

◆10) The old bamboo-hewer's story = Taketori no okina no monogatari.
Dickins, F. Victor, London,Trubner, 1888.
【895.63-T136o】
幕末〜明治維新期にイギリス海軍軍医として来日したF.V.ディキンズは、日本文化に造詣が深く、『百人一首』や『忠臣蔵』などの日本文学を英訳しました。その中に『竹取物語』(『竹取の翁の物語』)もあります。底本は、田中大秀『竹取翁物語解』1831年(当館所蔵は1895年の活字版【YDM89027】など)とされています。
英訳と、物語の解説、ローマ字綴りで著された原文、文法の解説、注釈、語彙(索引)から構成されており、多色刷りのイラスト3枚が挿入されています。
これ以前にもイタリア語訳(Il Taketori Monogatari ossia la fiaba del nonno tagliabambu. Severini, Antelmo. Firenze,Le Monnier, 1880. 当館未所蔵)やドイツ語訳、そのドイツ語訳から重訳した英訳は存在していたが、原文から英訳したのはこれが最初である、とディキンズ自身が著した解説に記されています。
ちなみに1888年の初版では五人求婚者のエピソードのうち「燕の子安貝」が省略されています(つまらなくて興味を失ったので省略した、とあります)。1906年版は、1888年版とは多少内容が異なっており、「燕の子安貝」の英訳も収められています。(Primitive & mediaeval Japanese texts. Dickins,F.Victor, Oxford, Clarendon Press, 1906. 【Ba-107】)
また、ディキンスの英訳(1888年版)と日本語による『竹取物語』原文(活字)との両方が収録された本が三角社という日本の出版社から発行されています。(The old bamboo-hewer's story (Taketori monogatari).Dickins, F. Victor, Tokyo,San Kaku Sha, 1934.【Da-251】)

IV-A-3Donald,Keenによる翻訳

◆11) 『対訳竹取物語』(英題The tale of the bamboo cutter.)
川端康成訳 ドナルド・キーン英訳 講談社インターナショナル 1997年
【KG51-G2】
ドナルド・キーンによる竹取物語の英訳です。初出はMonumenta Nipponica.vol.11 no.4(【Z52-B255】関西館所蔵)に掲載され、その後Modern Japanese fiction and its traditions.(Ed. J. Thomas Rimer, Princeton, PrincetonUniversity Press, 1978. 【KG12-18】)に収録されました。早い時期に単行本で出版する話があったようですが、そのときは諸事情により出版に至らなかったようです。
展示の資料は1997年に出版されたものです。ノーベル文学賞作家、川端康成による現代語訳との対訳※という形式になっていますが、序文のキーンのコメントを読むと、川端の訳を底本としたわけではないことがわかります。また、この資料の英訳はMonumenta Nipponicaなどに掲載されたものではなく、改めて訳し直したそうです。
さらに、このキーンの英訳を元にした『竹取物語』の要約とメトロポリタン美術館所蔵の竹取物語絵巻の写本(「18世紀末の写本」と解説されています。)の写真とを収めた本も出版されています(The Tale of the Shining Princess. Adapted by Sally Fisher from a translation of the story by Donald Keene, New York, Metropolitan Museum of Art and A Studio Book/The Viking Press, 1980. 【KG51-2】)。ちなみにこの本では「the Tale of the Shining Princess」すなわち「かぐや姫の物語」として紹介しています。

※川端康成による現代語訳の初出は、『現代語訳国文学全集』第3巻(非凡閣 1937年  【918-G34ウ】)所収「竹取物語」です。

IV-A-4 英語版の絵本

◆12) The child in the bamboo grove.
Rosemary Harris, [London], Faber and Faber, [1971]
◆【Y19-88】
竹取の翁の名が「Yashido」となっているなど、かなりアレンジが加えられていることが分かります。ただし、他の登場人物の名前はほぼ原作に則しています。ちなみに、かぐや姫は「Lady Kaguya」と書かれています。また、求婚者に課される難題も一部『竹取物語』と異なる部分があり、「蓬莱の玉の枝」は「蓬莱の月の花」に、「火鼠の裘」は「雪山の虎の裘」に、「燕の子安貝」は「鶴が運ぶ翡翠の貝殻」になっています。とてもユニークなデザインの挿絵も印象的です。
IV-B ヒンディー語訳
◆13) 『竹取物語 : 現代日本語・ヒンディー語訳』
秋山虔監修 芳賀明夫訳 大澤和泉画 ハガエンタープライズ 2004年
【KG51-H6】
『竹取物語』の現代語訳と、そのヒンディー語訳とが収録されています。もともとはブルネイで竹取物語を出版しようとしたのが、この本の企画の始まりだったそうです。そのため、この本の現代語訳はマレー語などの諸外国語に翻訳することを前提として書かれています。
IV-C ドイツ語訳
◆14) 『竹取物語 : 独訳 Die Geschichte von Taketori』
クロチルデ・プツチエル,伊東勉共訳 大学書林 1936年
【715-112】
本書は原文とドイツ語の対訳になっています。ディキンズによる翻訳と同様に、田中大秀『竹取翁物語解』の解釈に拠って翻訳したことが序文に記されています。外国語学校として著名な大学書林の出版物だけあって、日本人のドイツ語学習者向けの参考書として訳されたようです。
戦後にも『竹取物語』のドイツ語訳が出されました(Die geschichte vom bambussammler und dem madchen kaguya.Hisako Matsubara, Munchen, Langewiesche-Brandt, 1968. 【YQ18-4】)。現スタンフォード大学フーバー研究所特別研究員の松原久子氏による翻訳です。切り絵によるイラストが挿入されています。
IV-D ロシア語訳
◆15) Две старинные японские повести.
Верь Марковой, Москва, Худож.лит-ра, 1976.
【KG51-1】
本書には竹取物語と落窪物語のロシア語訳が収められています。竹取の翁の名前はちゃんと「さぬきのみやつこ」と書かれています。
IV-E ルーマニア語訳
◆16) Frumoasa Otikubo.
Alexandru Ivanescu, Bucuresti, Editura Univers, 1986.
【KG56-A3】
上記のロシア語訳『Две старинные японские повести』をさらにルーマニア語に重訳したものです。なぜだか題名は『落窪物語』だけになってしまっているようですが、『竹取物語』も収録されています。表紙イラストに描かれる女性は日本の平安時代とかけ離れた姿をしています。遠く離れたルーマニアであり、当時は東側陣営に属していたため、あまり日本の情報が伝わっていなかったのでしょうか。
IV-F イタリア語訳
◆17) Storia di un tagliabambu / Anonimo.
Adriana Boscaro, Venezia, Marsilio, 1994.
【KG51-A3】
『竹取物語』のイタリア語訳は早くも1880年には出版されていました。展示の本は近年の作品で、日本文学研究者のアドリアーナ・ボスカロ氏による翻訳です。
IV-G スペイン語訳
◆18) El cuento del cortador de bamboo.
Kayoko Takagi, Madrid, Trotta, 2002.
【KG51-B1】
マドリッドアウトノマ大学助教授高木香世子氏により翻訳された、スペイン語訳『竹取物語』です。日本人による翻訳だけあって、注釈が詳細です。かぐや姫は「Kaguyahime」としています。
IV-H フランス語訳
◆19) Le Conte du coupeur de bambous.
Rene Sieffert, [Paris], Publications orientalistes de France. 1992.
【KG51-A2】
タイトルは「竹を切る人の物語」を意味します。

V 「竹取」物語の展開

「竹取」の物語は文学の枠すらも越えて、さまざまな表現の世界に展開していきます。「かぐや姫」や「竹取の翁」などのモティーフは、新たな生命を吹き込まれて、絵画や漫画、演劇、映画、歌舞伎、能楽などの作品として甦ります。その世界観は現代的な表現の中においても魅力を失うことはありません。

V-A 豆本
◆20) 『かぐやひめ』
杉山正樹詞 池田満寿夫絵 今村喬 1976年
【Y99-342】
画家池田満寿夫はまだ無名だった時期から版画による豆本を数多く製作してきました。現在それらは「池田豆本」として知られており、そのうちの一つに『かぐやひめ』があります。その名の通り、『竹取物語』を題材として杉山正樹がパロディ化した文章に、池田の銅版画が10点挿入されています。10冊限定の販売版には池田の版画の原版が各一枚づつ付属していましたが、当館所蔵のものは著者本であるため、この「貴重なオマケ」は付属していません。
V-B 漫画
◆21) 1000年女王 : 新竹取物語』
松本零士著 サンケイ出版 1981年
【Y84-E21】
『銀河鉄道999』や『宇宙戦艦ヤマト』などで知られる松本零士による漫画作品です。宇宙を舞台とし、さまざまなメカニックが登場する壮大なSFの物語が展開しますが、『竹取物語』をモティーフとしています。ヒロインの雪野弥生は惑星ラーメタルから送り込まれた「1000年女王」であり、すなわち『竹取物語』でいうところのかぐや姫に相当します。『1000年女王』のストーリーは『999』や『ヤマト』など、その他の松本作品とも深く関連しています。
V-C 演劇
◆22) 『新曲赫映姫』[近代]
坪内逍遥著 早稲田大学出版部 1905年
【YDM88876】
『小説真髄』『当世書生気質』やシェークスピア研究などで知られる小説家・劇作家坪内逍遥による舞踊劇です。坪内は1904年の『新楽劇論』【YDM72685】で西洋のオペラなどに比肩しうる国劇を育て上げるために新楽劇を提唱しました。新楽劇は「西洋の音楽劇を参酌し、日本の振事を本位として、国劇固有の特質を発展純化するのが正しい」という理念のもと、歌舞伎の振事(所作事)を基本として、そこに邦楽のみならず洋楽も取り入れた音楽劇・舞踊劇であり、その実践作として『新楽劇論』とほぼ同時に『新曲浦島』を発表しました。『新曲赫映姫』は『浦島』に続く、新楽劇の第二作品です。『浦島』が舞踊を主体としているのに比較して、『赫映姫』では能楽のような謡が主体となっています。
V-D 歌舞伎
◆23) 『市川猿之助と二十一世紀歌舞伎組 : Passion』
日本放送出版協会編 日本放送出版協会 1997年
【KD481-G27】
◆24) 『カグヤ : 新竹取物語』
横内謙介作 モーニングデスク 1996年
【KH734-G30】
三代目市川猿之助によって始められた「スーパー歌舞伎」は、伝統的な歌舞伎の演技・演出の諸要素を踏まえつつ、その他の演劇の要素も積極的に取り入れて、新たに展開させたものです。物語のテーマやセリフも現代人にも分かりやすく、また派手で現代的な演出が随所にちりばめられています。『竹取物語』を題材とした「スーパー歌舞伎」がこの「カグヤ」です。台本と、舞台写真を収めた資料とを展示しています。
V-E 映画
◆25) 『竹取物語 : シナリオ写真集 市川崑監督作品』
東宝出版事業室 1987年
【KD652-E1】
市川昆監督によって映像化された『竹取物語』です。1987年に公開されました。
かぐや姫が月の都の住民である、というエピソードから「竹取物語」を一種のSFとしてイメージする人も多いと思いますが、この映画では月からの使者がかぐや姫を迎えに来るシーンで宇宙船が登場しています。後者は上記映画のシナリオと各場面の写真を収めた本です。DVD版も当館に所蔵されています。(『竹取物語』市川昆監督 東宝 2004年【YL321-H5079】※音楽・映像資料室でのご利用となります。また、ご利用にあたっては閲覧許可申請書の提出が必要となります。)
V-F 謡曲
◆26) 「耀姫」(『未刊謡曲集』 19)
田中允編 古典文庫 1972年
【912.3-M465】
番外の曲で、別名を「竹取」。シテが天津乙女(耀姫)、ワキが帝の勅使。主に『竹取物語』の結末後のエピソードを描く形になっています。かぐや姫の昇天を嘆く帝が富士山に勅使を遣わすと、そこに天津乙女が現れます。実はこの天津乙女の正体はかぐや姫であり、月の都の様子などを語った後、天女の姿で舞い、不死の仙薬を勅使に託して霞の中に姿を消していきます。
有名な謡曲「楊貴妃」や「羽衣」の影響が色濃くみられる、とされています。『自家伝抄』では作者を「楊貴妃」と同じ金春禪竹としています。

主要参考文献

1)『日中説話の比較研究』
繁原央 汲古書院,2004年
【KK392-H2】
2)『竹取物語』(「新潮日本古典集成」)
【KG51-11】
野口元大校注 新潮社,1979年
3)『かぐや姫の誕生』(「講談社現代新書」)
伊藤清司 講談社,1973年
【KG51-4】
4)『ちりめん本のすべて』
石澤小枝子 三弥井書店,2004年
【UM24-H4】
5)「ディキンズの英訳『竹取の翁の物語』の底本」
中川浩文 (『國文學論叢』20号 龍谷大学国文学会,1975年,P1-7)
【Z13-815】
6)『古典の水脈』
上坂信男 新典社,1995年
【KG12-G4】
7)『新編竹取物語』
関根賢司、高橋亨 おうふう,2003年
【KG51-H5】
8)『研究講座竹取物語の視界』
王朝物語研究会 新典社,1998年
【KG51-G4】
9)『竹取物語の研究』
奥津春雄 翰林書房,2000年
【KG51-G12】
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