海軍予備交渉に対する日本政府方針

昭和9年9月7日 閣議決定

収載資料:日本外交文書 1935年ロンドン軍縮会議 外務省 1986.3 pp.112-113 当館請求記号:A99-Z-77

来ルヘキ海軍軍縮予備交渉ニ対スル帝国政府方針
一、来ル十月頃ヨリ再開セラルヘキ昭和十年海軍軍縮会議予備交渉ニ於テ帝国政府ハ帝国主張ノ貫徹ヲ図ルト共ニ帝国国防ノ安固ヲ期シ得ル範囲ニ於テ同会議ノ目的達成ヲ容易ナラシメンコトヲ期スルモノナリ
二、帝国政府ハ海軍軍備制限ニ関シテハ帝国国防ノ安固ヲ期シ得ル範囲ニ於テ左記要旨ニ依リ兵力ニ関スル協定ヲ行フヲ根本義トス
要 旨
(一)各国ノ保有シ得ヘキ兵力量ノ共通最大限ヲ協定スルコト
(二)右協定ニ当リテハ
(イ)軍縮ノ精神ヲ発揮スル為右限度ヲ小ナラシムルコト
(ロ)攻撃的兵力ハ之ヲ極力縮減シ防禦的兵力ハ之ヲ整備シ以テ各国ヲシテ攻ムルニ難ク守ルニ不安ナカラシムルコト
三、大正十一年華府ニ於テ調印セラレタル海軍軍備制限ニ関スル条約ハ帝国国防上之カ存続ヲ不利トシ且海軍軍備制限ニ関スル帝国ノ根本方針ニ鑑ミ本年末日迄ニ之カ廃止通告ヲナスコトトス尤モ帝国ハ出来得ル限リ友好的且効果的ニ今次予備交渉ヲ行ハント欲スルモノナルカ故ニ予備交渉再開後関係国ノ合意ニヨリ之カ廃止通告ノ手続ヲナシ次テ各国協力シテ新協定ノ成立ニ努ムルノ形式ヲ採ルコトノ適当ナル旨ヲ関係国側ニ説示シ右局面ニ導カントス但シ右交歩ノ結果関係国カ前記我方意向ヲ応諾セサル場合若ハ其ノ諾否ノ態度ヲ明ニセサル場合ニ於テハ帝国政府ハ独自ノ見解ニヨリ本年末迄ニ本件廃止通告ヲナスモノトス