中小商工業再編成要綱

昭和17年3月10日 閣議決定

収載資料:日本金融史資料 昭和編 第34巻 日本銀行調査局 大蔵省印刷局 1973.5 p.430 当館請求記号:338.21-N684n

一、中小商工業再編成の目的を緊要産業部門に対する労働力の供給確保に置く
従来の中小商工業再編成の目的は物資不足、各種統制強化、価格の安定、輸出の不振等に依り其の活動範囲の縮小されたものに対し能ふ限り失業者を出さざる様に対処することを中心題目としてゐたが今日の段階においては戦争の要請に即応して重点主義に基く生産の増強、物資配給の円滑適正化をはかることが主眼目で特に労務動員計画に基く労務の再配置就中緊要産業部門に対する労務の給源を中小商工業の従事者に求めるといふことに代置されて来た、即ち労務需給関係からする中小商工業の整理が第一の根本特色である
二、中小商工業の再編成に対する行政機構の統一
中小商工業の再編成に対しては従来中央に於ては商工、農林、厚生の三省が直接関係して来たが政策の具体的実施に当つて更に高度の総合企画、統一的考査の必要が痛感されてゐた。政府はこの点に鑑み新に企画院に中小商工業再編成委員会(仮称)を創設し政策実施の一貫性を昂揚することとなつた、中小商工業再編成委員会の指令は既設の各府県の中小商工業再編成協議会に於て具体的政策の実を結ぶ組織に整備された
三、再編成を可能ならしむべき一切の基礎条件完了
企業許可令の実施を初めとして七十九議会に於ける更生金庫資金の拡充、臨時租税措置法による転廃業者に対する租税の減免が準備され、更生金庫繋資金の運用も既に実施され、転廃業者に対する政府の援護政策は一応完備した。しかしながら再編成の実行が直接産業上、社会上に及ぼすべき影響については政府は極めて慎重な態度を以て臨み現在の時局に鑑み、応召者戦病者の遺家族等については特別の考慮を払ふこととなつてゐる