行政事務簡素化の具体的事例特に産業経済に関する件

昭和17年12月1日 閣議決定

収載資料:決戦国策の展開 神戸市企画課 1944 pp.167-182 当館請求記号:312.1-Ko13ウ

一、翼賛政治会提出「行政簡素化の具体的事例特に産業経済に関する件」中別記各事項は之を採用することを可と認むるを以て直に実施に移すこと
二、右以外の事項に付ては更に内閣に於て之を審査し、可及的に之が実現を図ること尚特に法律を要する事項に付ては「行政簡素化に関する法律案要綱」及「不要法律の廃止又は停止に関する法律案要綱」の法文化其の他に依りて之を処理すること
尚翼賛政治会提出事項以外の事項に付ても簡素化すべきものに付ては能う限り速に之を実施すること
第一 許可認可事項及届出事項の整理廃止を適当と認めらるる事例
一、兵器等製造事業特別助成法に依り設備建設を命ぜられたる場合に於ても例へば航空機製造事業法に基き設備変更許可申請を為す要あるも右政府発令に当つては事前に逓信大臣と協議を為す事となり居る(助成法施行令第六条)を以て右の場合は助成法に依る手続のみとなし事業法に基く設備変更許可申請は不要と為すこと
一、会社経理統制令に依る既許可済の事項中段階的に定め居る工事手当、勤務手当等に関しては爾後其の段階に当嵌めて定むる新規特定箇所の該手当は其の都度願届を要求され居るも企業自体の組織的統一ある取扱に一任し之を不要とすること
一、会社が敵国人に対し配当金の支払を為すに際し正金銀行の封鎖勘定に払込まず受取人に対して直接支払を為す場合に於ては大蔵省の通牒に依り其の理由書を提出し又外国人関係取引取締規則に基く許可申請を要するもの後者は不要とすること
一、敵産管理事務の簡捷化を図る為敵産管理人に付ては外国人関係取引取締規則に依る要許可事項を緩和し平常の事務処理は許可を要せざることとすること
一、外国人関係取引取締規則に依り指定外国人となりたる在指定国邦人中本邦内に生活根拠を有する指定人(例へば官公吏)に付ては許可申請の必要なきものと思考せらるるを以て不要許可事項とすること
一、外国人関係取引取締規則に依り許可申請に於て重複又は関連する取引は合併申請の取扱を可能ならしむること
例へば代理事務契約に依り配当金を取立つる場合或は保護預り契約に依り利札を取立つる場合、債権の取立と同時に預り金受取人の申請を為すこととなり居れるも申請の重複を避くる為之を合併申請し得るとすること
一、外国人関係取引取締規則に依る指定国人との一口千円未満の保護預り関係左記取引に関する許可申請は之を不要とすること
(イ)外国居住者の為にする債権の取立依頼又は引受許可(内国債利札の取立)
(ロ)本邦通貨の取得許可(保護預り手数料の取得)
一、信託業法に依る定款変更に関する主務大臣の認可は目的、商号、資本金、本店及支店に関する規定を変更せんとするときに限り之を要することに改むること
一、信託業法施行細則第二十九条第四号に依れば信託会社が訴訟事件の被告となりたる時は大蔵大臣宛其の事由を届出づることとなり居るも之を廃止す
一、信託会社の提出しつつある通牒又は依頼に依る官庁宛定期的諸報告書類中左のものは廃止すること
大蔵省宛提出のもの
毎月初提出の貸借対照表、所有国債異動状況調、期末現在貸付金事業別及用途別調
日本銀行提出のもの
毎月初提出の固有勘定貸借対照表及信託勘定貸借対照表
一、保険業法施行規則第二十五条の規定に依り貸方借方対照表附表として毎月大蔵大臣に提出することを要する諸統計中には毎月計算の至難なるもの又は実効無きもの相当認めらるるを以て出来得べくんば之が提出を見合はせ単に計算して之を会社に備付け置くことに止め大蔵大臣に対しては年度累計を決算の際提出するを以て可なることに改めること若し之が不可能なるときは毎月報告を要すべき事項を可及的簡略にすること(例えば資産に関する明細報告の如きは其の月に異動ありたるもののみに付報告するに止むるが如し)
一、商工債券を公募の方法に依り発行せんとする場合該発行認可に付特に大蔵省に於ける其の処理方法を簡素にすること
一、農地開発営団、輸出農産物会社等農林漁業に関する営団又は国策会社に関する許可認可事項は設立、解散、定款変更等主要事項に止め其の他は総て報告又は届出事項とすること其の他の農林漁業団体に付ても同様とすること
一、産業組合中央金庫の事務に関する許可認可に付ては左の事項を廃止すること
(イ)余裕金運用の為買入るる有価証券の銘柄に対する認可(産業組合中央金庫法第十五条)
(ロ)余裕金運用の為預入るる銀行に対する認可(産業組合中央金庫法第十五条)
(ハ)産業債券又は其の利札が時効に罹りたるに因り当金庫に於ても支払を為さざることに確定したる金額の処分に対する認可(昭和三年農第一三九六号命令書第二十四条)
(ニ)貸付金利子の最高歩合の決定及変更に対する認可(産業組合中央金庫法第三十条及昭和三年命令書第十二条)
(ホ)政府資金の貸出に対する銀行等資金運用令に依る認可
一、農林漁業用資材に付同一品目に関し二以上の販売統制規則あるものに付ては整理一元化すること(例へば缶詰及空缶に関する場合の如し)
一、農業倉庫業法、農業保険法、農村負債整理法、森林法、漁業法、蚕糸業法、各種市場法其の他農林漁業に関する諸般の法律及之に伴ふ規則中の許可認可事項、報告事項、及届出事項に付ては左の如く整理又は廃止すること
(イ)所在地の変更、事業の拡張等当然の事項にして許可又は認可に依りて変更するの必要なきものは許可認可を廃止し報告事項又は届出事項とすること
(ロ)報告事項又は届出事項中回数多きものは例へば年一回と為し項目多きものは最少限度に止むる等諸般の整理又は廃止を行ふこと
(ハ)報告事項又は届出事項中各方面に重複せるものは之を整理し一方に対するもののみにて足るものとする事
一、販売許可価格決定に関し処管行政庁は該品の販売経路判然たるものに付ては其の手続を簡略にすること(規格外繊維製品を特殊目的に充つべく全国漁業組合連合会をして配給せしめらるる場合には(イ)原販売業者は各漁連に対する販売に付(ロ)全漁連は所属地方漁業組合連合会に対する販売に付(ハ)地方漁連は所属単位漁業組合に対する販売に付(ニ)単位各組合は最終需要者に対する販売に付夫々「販売許可価格」の申請を為すに非らざれば配給を実施し得ざるが如きは□に煩雑なるのみならず配給の円滑を阻害すること大なるを以て本例の如き場合に於ては配給を担当せる系統団体をして適当に処理せしむる方針に依り価格の両端即ち第一次譲渡者価格と最終需要者価格とを決定すること
一、内地、円域其の他に対する缶詰の販売許可は一ケ年間(少くとも四半期間の数量)を一括して包括的許可を受け其の範囲に於ける販売数量並に販売先等は日本缶詰統制会社に一任すること(昭和十五年六月十日農林省令第四十七号、昭和十五年六月十一日農林省令第四十八号)
一、空缶の用途変更、指定品種外の製造を為さんとする場合の許可に関しては根本方針を定めたる上其の範囲内に於ける一々の許可事務は之を日本缶詰統制会社に一任すること、(昭和十五年六月二十五日農林、商工省令第七号)
一、企業許可令に依る許可申請、届出は本社以外の専業所に於て指定事業を為す場合、本社も甚の事業を行ふものとし其の分の申請届出を要することとなり居るも本社分は不要とすること
一、工作機械製造事業法に於ける第三条許可申請と第七条認可申請とが同一内容のものなる場合に付ては第三条の書類にて一方を兼摂せしむること
一、石油業法第二条に依る事業計画認可申請書は原料油製品の割当指示なきときは本計画は甚だ架空的となるを以て一応廃止すること
一、石炭に関しては重要鉱物増産法に依る事業計画届出中「処分方法」の届出は日本石炭株式会社乃至石炭統制会にて配給計画を査定樹立し之に依り万事処理し居るを似て廃止すること
一、倉庫法に依る左記届出は日常頻繁に起り得るものなるを以て手続を簡易化にする為其都度商工省に提出したるものを定期例へば毎半期取纏め一括提出し得ることに改正すること
(イ)事業計画中左の事項を変更したるとき
(1) 営業所及倉庫の位置を変更したるとき
(2)保管すべき物品の種類を変更したるとき
(3)倉庫の新設、増設、買収の場合を除き倉庫の棟数及面積を変更したるとき
(ロ)其の他の変更事項
(1)営業用敷地の面積を変更したるとき
(2)倉庫及営業用敷地の権利事項を変更したるとき
(3) 保管すべき物品を火災保険に附する場合に於ける倉庫の構造級別を変更したるとき
(4)附属設備に関する事項を変更したるとき
(5) 護岸及下水管渠を新設若くは増設し又は其の構造を変更したるとき
(6)倉庫の改造又は大修繕を為したるとき
(7) 業務を執行する役員に変更ありたるとき尚倉庫業法施行規則第十条第一項及第二項の報告を廃止し行政官庁の要求ありたる場合にのみ之を提出すること
一、船員給与統制令施行規則に依り常時百人以上の船員を使用せる船舶所有者は三月、六月、九月及十二月の各月に支給したる給与の報告書を各翌月末日迄に逓信大臣に提出するを要するも業態の性質上、事実上右期間内に報告すること不可能に付之を改正又は削除すること(船舶給与統制令施行規則第十条)
一、労務調査令に依り同一社内に於て異る工場、事業場間に従業者の所属の移動を行ふ場合国民職業指導所長の認可を要するも同一業種間の異動なる限り之を届出に改むること(労務調整令第十一条、労務調整令施行規則第十三条ノ二)
一、労務調整令中同一の会社事業場間に於ける短期間の労務者の応援移動を許可事項とせす届出事項に改むること
一、労務調整令の一般青壮年の求人割当及認可は一年四期を二期に改むること
一、学校卒業者使用制限令に依る使用認可員数の認可指令は現在に於ては道府県内の工場事業場又は事務所に対して発せられ、認可員数なき限り卒業者の移動(同一道府県内に於ける同一企業内の転勤を除く)は厚生大臣の認可を必要とするも、単一事業を営む者に対しては使用認可員数を当該企業の主たる事務所に一括指令を為し同一企業内に於ける転勤を自由ならしめ其の異動状況は一定期間に地方長官経由厚生大臣に届出とせること
一、国民徴用令、重要事業場労務管理令、賃金統制令に基く給与、就業に関する規則其の他に関する許可又は届出事項に付ては一法令に依る手続を為したる場合他の法令の適用に付ては之を省略するが如き適当なる措置を講ずる事
一、従業者異動状況速報(厚生省の要求に依り毎月一回地方庁に提出す尚之と同一のものを陸軍燃料廠に提出す)と従業者異動状況報告(厚生省職業指導所、地方庁職業課へ提出三ケ月に一回)とは殆ど同一に付何れか一本に統一せしむること
第二 許可認可手続の簡捷化を図るを適当と認めらるる事例
一、物資動員計画にて販売数量の決定せられある物品に付ては輸出向当該物品の価格等統制令に依る許可申請、輸出向当該物品の原料の内地公定価格除外申請等の如きは統制団体に於て関係官庁より包括的代行許可を得て各社個々に対する許可認可事務を取扱ふこと
一、許可認可に関する事務の代行は統制団体のみならず特別法に依り設立せられたる会杜にも之を行はしめること
一、企業許可に基く許可(承認)申請書又は報告書に付町内会機関を経由せしむることは少くとも大企業に付ては之を不要と為すこと
一、臨時農地等管理令に依る諸手続は物件所在地の管轄市町村を経由して所属地方長官に申請を要するも市町村に於ては単に受付簿を経由するのみなるを以て宅地建物価格統制令と同様直接地方長官宛(県庁宛)申請し得る様改正すること
一、信託業法施行細則第三十条の規定に基き信託業法又は同法施行規則に依り、大蔵大臣に提出すべき書類はすべて地方長官を経由し、又認可ありたる場合にも地方長官を通じて認可通達せらるる為日数を要す、仍て府県として必要のある特定の重要事項以外の提出書類は地方長官経由を省略するか又は書類写を地方長官に提出することに改むること
尚業務報告書は尨大なる書類に付物資と手数節約の為其の写を地方長官に提出することを略し地方長官には印刷したる考課状を提出すれば足ることとすること
一、船員給与統制令又は船員使用等統制令に依る許可申請及届出の手続は可及的に地方海務局長に之を委任し事務の簡捷を図ること
一、鉱山監督局長の権限を拡張し鉱業の許可等に関する商工大臣の権限を実情に精通せる鉱山監督局長の権限に委譲すること
一、地方鉄道に於ては地方鉄道法に依る営業報告書と会社経理統制令に依る経理状況報告を、夫々主務大臣たる鉄道大臣に提出の要あり而も報告書提出期限は前者当該年度経過後二月以内後者決算確定後三十日以内にして内容重複せる処少からざるを以て簡略化し少くとも地方鉄道法に基く報告期限を会社経理統制令の其れと一致せしめ、以て事務の簡略化と報告期限に余裕を持たしむること
一、臨時資金調整法第四条の二に依る事業設備の新設拡張又は改良の許可申請添附書類(定款、株主名簿、貸借対照表)は同一事業年度中に重ねて申請する場合には変更なき限り前書引用にて之を省略すること
一、銀行等資金運用令施行規則第十四条の規定に依る貸出金残高報告書に付ては共同融資のものも関係会社が  個々に分担額を記入提出するも共同融資に係るものは其の幹事行社(主として輿銀)に於て一括提出することと為すこと
一、事業設備資金以外の資金貸出報告書(昭和十四年十二月二十一日附銀行局長通牒)は銀行等資金運用令施行規則第十四条の規定に依る貸出金残高報告書と重複する点少からざるを以て右報告を廃止するか若くは報告事項を簡略にすること
一、外国為替管理法に依る外国人関係貸出金に関する届出の中満洲国、関東州への共同融資に関する届出は幹事行社が一括提出することとすること
一、外国為替管理法に基く在外事業所の事業報告を簡捷化すること
一、銀行にて監査書を毎期二回作成備付のこととなり居るも臨時資金調整法、銀行等資金運用令等に依り当局の厳重なる監督を受くる実状に鑑み各期末一回に改むること
一、銀行の四半期毎に日銀宛提出する事業及担保別貸出残高表は之を毎半期提出に改むること尚本表は各地にて其の形式内容を異にし居るに付統一すること
一、担保附社債信託法施行細則第九条第二項及第三項届出は同条第四項届出と重複するものあるを以て第二項及第三項に依る届出を廃し第四項届出に社債権者集会決議事項或は代表会の決定事項を添附して届出づること
一、担保附社債信託法施行細則第三条の三に依る届出は同施行細則の規定による諸届出書と重複する点多きを以て之を整理すること
担保附社債信託法施行細則第二十四条届出内容は信託業法施行細則或は銀行法施行細則に依り届出づる事項と重複するを以て之を整理すること
前項の外諸届出に関し担保附社債信託法と信託業法と社債信託法と信託業法と重複するものは、信託会杜に付ては便宜信託業法に依るのみを以て足ることとすること
一、健康保険法と労働者年金保険法との書式を統一すること
一、物資配給関係の申請に市町村経由のものと警察経由のものとあるも可及的に之を統一すること
一、電気事事法施行規則第十五条に基く工事施工認可申請書に必要とさるる工事設計明細書(汽力調係分)と発電用汽機汽缶取締規則第二条及第三条に基く汽機汽缶構造設計認可申請書に必要とする構造明細書と重複する部分多きを以て之を整理すること
一、発電用汽機汽缶取締規則第五条に依る電気熔接を施行する場合の電気庁長官に対する認可申請手続は保守関係(タービン、ボイラー等事故の修理は頻繁なり)に就ては簡易化を図ること
一、石油業関係の左記諸届出報告を可及的に整理簡易化すること
月報類 石油業法
石油精製業事業月報 同上添附書類、石油輸入業事業月報 同上添附書類、石油油槽別在庫数量並に受払数量調査表、石油製品在庫数量旬報、原油処埋実績届、揮発油及アルコール混用法、アルコール混用月報、重要工場調査規則、第一号、第二号、第三号調査票
年報頼 石油業法
石油精製業事業年報 同上添附書類、石油輸入業事業年報 同上添附書類
一、石油業法第二条の規定に依る事業計画認可申請書の書式は現状に適せざるが如く認めらるるを以て之を実状に即する様改正簡易化すること
一、帝国石油株式会社法第二十一条に依り提出すべき事業計画は石油資源開発施行規則第一条、第二条に依る事業計画と重複するものにして帝国石油株式会社法中に同会社に対し石油資源開発法中重複部分の適用を為さざる旨の規定を設け事務の簡易化を図ること
一、広告税法に於ける第二種広告の税務署への申告書は各地方に依り其の様式区々たるものあるを以て之が全国的統一を図ること
一、地方税徴税令書の様式を全国的に統一し且課税物件、税率を必ず記載すること
一、一般的に法令規定以外の書類並に添附書類の提出は可及的に之を省略すること
一、官庁に対して会社より事業年度毎に報告せる事項を集計すれば必要事項を算定し得るものと認めらるる時に於ても尚其の報告を求めらるることあるも斯かる場合は之を省略すること
第三 重複競合及共管事務の整理統合に関する事例
一、大造船所其の他軍管理工場となり居るものに付ては厚生省労務官又は商工省工務官は直接之に対し指示命令せざる様改め、要すれば軍の管理庁と連絡して一元的に処理する様改むること
一、日本産金振興株式会社関係事項役員の任命並に事業計画、借入金、社債発行、定款変更の認可等同会社関係の事項を大蔵、商工共管より当該事業所管の商工省専管に改むること
一、特殊法人に関する協議事項 臨時資金調整法、会社経理統制令関係を除き特殊法人の設立に際しての覚書等に基き専ら財政的見地より大蔵省の要求する協議事項に関しては成る可く之を廃止又は省略すること
一、過般の空襲被害復旧資材の配給に付ては商工省総務局総務課内に空襲対策部物資対策係が設けられ当初は復旧資材の配給が一元的に指令せられ敏速なる措置を見たるも、其の後は資材の系統に依りては或は鉄鋼局に或は化学局に陳情するの止むなきに至りたり、此の如く迅速なるを要する特別の事務に付ては指令が一元的に出づるを要すること
一、同一官庁に於ても或事項に関する行政事務が各部局に関連すること少からず、此の場合成るべく主務課の意見を尊重して事務の簡捷化を図る要あること
一、産業組合監査連合会に関する監督上必要なる命令及認可事項に関しては、同監査連合会が信用組合、信用事業に対する監査指導を行ふものにして原則として共管たるの必要あれども、具体的事項に付ては農林省に於て専決するも差支無き事項又は協議手続の簡易化に付考慮するの要あること
一、市街地信用組合に関しては大蔵省の専管と為すを適当とすること
一、諸届出に関し担保附社債信託法と信託業法と重複するものは信託会社に付ては便宜信託業法に依るのみを以て足ることとすること
実施済のもの
一、会社職員初任給、昇給、賞与其の他の給与に付ては会社経理統制令及賃金統制令の適用を受け会社の事務煩雑なるのみならず彼此不公平を生ずる虞あるを以て両者の調整統一を図ること
一、外国為替管理法に於ける満洲国、関東州及支那に関する範囲の許可事項を整理減少せしむること
一、外国為替管理法に関し外国為替銀行より報告を徴収さるる分に付ては一般よりの報告を省略すること
一、外国居住者の為に其の家族若は代理人が株式配当金の取立を引受くる場合外国為替管理法施行規則第二十四条に依る外国居住者の為にする債権の取立引受許可を要し更に他方右配当金支払人に於て同規則第十一条に依る委託支払許可を要するも一方のみの許可にて足ることとすること
一、外国為替管理法施行規則第三十八条に依り証券の輸出又は輸入に付其の都度許可申請書並に報告書の提出を要するも何れか一方を省略すること(一部実施済)
一、外国為替管理法施行規則第四十五条に依る外国居住者に対する貸付許可ありたる場合右申請内容に貸付金迭金又は現地資金に依る立替の旨記載しあるに拘らず同規則第十一条に依る外国為替買入許可又は同規則第二十条に依る外国に於ける支払の委託許可を要するは重複に付不要とすること
一、外国在住日本人の為に家賃を取立て之を送金する際毎月其の都度大蔵大臣宛外国為替管理法に依り許可申請を要するも斯かるものは定期的のものなるに付年一度若は半年一度に提出する様改むること
一、電話架設に付逓信局に申請する場合過去一ケ年間の納税証明書を添附するを要するも斯かる必要なきものに対しては之を省略すること
一、国民徴用実施の工場にして重要事業場労務管理令第二条の指定を受け居る工場にありて、左記同一事項に付国民徴用令第十九条の二に基く厚生大臣命令と重要事業場労務管理令とに依り夫々別個に厚生大臣の認可を必要とするも従業条件に関し等しく厚生省管轄なれば右認可申請は何れか一方に統一すること
イ、従業規則、賃金規則、昇給内規の制定変更の場合の認可
ロ、実物給与、賞与又は給与を支給せんとする場合の認可
一、資材の供出交換に付ては其の都度商工大臣の認可を必要とするも(例へば鉄鋼統制規則)之を改め重要物資管理営団又は統制会をして需用者間の資材供出交換を行はしめ又需要者既割当未入手資材に対しては営団の貯蔵資材を以て一時的融通を行はしむること
一、労務調整令に依り事業主が其の雇傭せる従業員の転勤認可申請を為す場合には順次所管職業指導所、中央国民職業指導所を経由し厚生省に進達することを要するも一機関にて処理し得る様経由機関を省略すること(一部実施済)
一、会社経理統制令に依る有価証券又は無体財産権の取得又は処分並に資金の貸付又は借入に対する主務大臣の許可申請書添附書類は前回提出分の引用を以て足る場合は之を省略すること(会社経理統制令第三十三条同令施行規則第三十六条、第三十八条、第三十九条)
一、重要機械製造事業法に依る査定申告書中一部分に変更事由ありし場合と雖も他の大部分たる不変更の部分をも全部添付の上改めて再提出を要求せらるるも変更部分のみにて足る様簡易化すること
一、砂糖消費税法施行規則に依る内地移入糖移入場に関する取締を簡易化すること(一部実施済)
一、物上担保附社債の分割発行の場合の商業登記に於て其の都度同じ信託書、其の附帯契約及株主総会議事録の各謄本を添附せしむるも右は最初の一回の添附を以て足ることとすること
一、各種事業法上の認許可と臨時資金調達法の認許可とは両者が併合せざれば工事に着手し得ず故に特別事業法(電気事業法、製鉄事業法、地方鉄道法、海運統制令等)上の認許可は臨時資金調達法上の認可と共に併行審理し早目に処理すること
一、現在軌道は鉄道省、内務省、逓信省、(電気関係)の共管にて特に他府県に亘る軌道業者は仮令簡単なる事項にても一々其の経過地各地方庁を通じて各省に申達を必要として又監督官庁よりの通達も各関係省経由の上更に地方庁を通じて下命さるる故相当の日数と手数を要し居る現状に付「地方鉄道」と軌道の相違せるのみにて其の設備及営業規模の殆んど同一なる専用敷に敷設せる軌道の監督は一省に一元化すること(一部実施済)
一、厚生省関係の保健所、保健婦の保健指導と保険院の各種社会保険の保健施設及社会事業の施設とは一貫せる方針の下に運用すること
一、昭和十三年勅令第二十九号生命保険会杜の監督に関る件は元来保険会社の監督に当り慎重を期せむが為特定事項に関しては商工、大蔵、厚生関係各省の共管に委するの趣旨を以て制定の処昨年十二月の保険事業監督権の商工省より大蔵省への移管に伴ひ商工省との関係を失ひ更に今回の行政簡素化の実行に依り厚生省保険院の廃止せらるるありて右勅令制定の趣旨殆ど没却せられんとする状態に付此の際一層保険監督行政事務の簡捷化を強化すべく右勅令は之を廃止し保険会社の業務に関しては総て大蔵大臣の専管とすること
一、賃金統制令に依る日傭労務者の最高賃金規制と価格等統制令に依る手間賃及供給人夫請負規制との関係が法文の解釈デリケートなる為統制の効果捗々しからずして日傭賃金及荷役料は益々騰貴の傾向にあり、右の最高額規制を一元的に明瞭ならしむるを要す、且つ之に関する地方庁の取扱としても労政課は厚生省系、経済保安課は内協省警保局系の気分ありて其の間に奪合乃至押付合を生ずることあるを解決するを要すること
一、治水事業特に荒廃林地復旧事業と砂防事業に関する関係官庁の連絡を緊密ならしむること
治水の根本は治山にあり而して治水上重要なる治山の要は植伐其の宜しきを得ると共に速に崩壊地、禿赭地野渓等を移復して土砂の流出せざる森林及渓流たらしむるにあり、然るに之が根拠法規は森林法及砂防法にして現行治水事業の実施状況を見るに森林法に依る事業は主として農林省の所管に属する、唯砂防法に依る砂防工事は内務省の所管に属する為に動もすれば右両法は同一地に重復適用せられ二重の監督を受くることとなり民間の不便も少からず且同事業実施に付ても両者間の連絡協調の欠くる憾み無しとせざるを以て両者間の連絡関係を特に緊密ならしむる要ありと認む(一部実施済)
翼政会案の許可認可事項及び届出事項の整理廃止、許可認可事項の簡捷化並に重複並合及び共管事務の整理統合の三項目についての取扱ひ内訳は左の通りである
一、許可認可事項及び届出事項の整理廃止を適当と認められる事例八十三件、うち政府採択二十一件、政府において実施済のもの九件、残余四十三件
一、許可認可手続の簡捷化を図るを適当と認められる事例七十二件、うち政府採択二十八件、既に実施済のもの六件、残余三十八件
一、重複競合及び共管事務の整理統合に関する事例五十三件、うち政府採択八件、実施済のもの六件、残余三十九件