陸上小運送力増強ニ関スル件

昭和19年1月4日 閣議決定

収載資料:日本陸運十年史 第2巻 日本国有鉄道 1951 pp.737-740 当館請求記号:DK31-15

第一 方針
海陸総合輸送力ヲ最高度ニ発揮シ、国内物資ノ相通ヲ円滑ナラシムル為、貨物自動車運送事業、小運送業並陸上小運搬業ヲ通ジ、総合的ニ陸上小運送力ヲ整備増強シ、其ノ運営ヲ円滑且能率的ナラシメ、以テ戦力ノ増強卜国民生活ノ安定ニ資セントス

第二 要領
一 貨物自動車輸送力ノ増強
(一)重要輸送ノ完遂ヲ期スル為、所要車両ノ増強ヲ図ル
(二)貨物自動車ノ効率ノ昂上ニ努ムル為
1 空車粁ノ減少、輸送禁制品ノ範囲拡大、燃料別車両ノ効率昂上、荷主ノ積極的協力ヲ図ル等ノ措置ヲ講ジ、極力運行効率ヲ増強ス
2 貨物自動車修理ヲ促進ス。之ガ為民間専門修理工場ヲ統合整備スルト共ニ省営自動車修理施設ニ依ル民間自動車ノ修理ヲ行ヒ、官民施設ヲ通ジ統制アル計画修理ヲ実施ス。
尚自動車運送業者ヲシテ自動車ノ保守整備ニ必要ナル修理施設ヲ保有セシム。車両修理施設ノ新設、拡充、又ハ故障休眠車ノ復活修理ニ対シ、要スレバ必要ナル助成金ヲ交付ス
3 修理用部品ノ総合的且重点的配給ヲ図ル
(三)貨物自動車ノ重点的配置運用ヲ確保スル為、貨物自動車運送事業組合ヲシテ陸上小運送全般ヲ通ジ、車両ノ総合的統制運用ヲ行ハシメ、海陸大運送ニ随伴スル小運送重要工場間ノ資材輸送、国民生活必需品ノ輸送ニ重点ヲ置キ、計画的輸送統制ヲ行ハシム。右ニ関連シ貨物自動車運送事業組合ノ統制力ヲ強化スル為、其ノ機構ヲ整備スルト共ニ、之ヲシテ燃料及資材等ニ関スル具体的権能ヲ把握セシム
(四)重要地帯ニ於テハ前項ニ依ル措置ヲ講ズルノ外、必要ニ応ジ監理官ヲ置輸送ノ管理ヲ行フ
(五)省営自動事ニ依ル原産地輸送ヲ計画実施スルト共ニ、大都市附近ニ於ケル鉄道輸送ノ隘路ヲ打開スル為、貨車代行輸送ヲ強化ス
(六)修理用ノ部品及資材其ノ他業務用資材ヲ確保スル為、物資動員計画上所要ノ措置ヲ講ジ、且部品ノ計画的生産(特ニ隘路部品ノ生産ニ重点ヲ指向ス)ヲ強化ス
(七)自動車用燃料ノ所要量ノ増加補填ハ木炭、薪、石炭、コーライトニ重点ヲ置キ、要輸送量ニ対応スル最小所要量ノ燃料確保ヲ図ル為、各種燃料ノ生産、輸送、配給価格等ニ付其ノ計画性ノ強化、機構ノ整備等必要ノ措置ヲ講ズ
潤滑油最小所要量ノ確保ヲ図ル為、必要ナル措置ヲ講ズ。
(八)燃料、修理用部品其他業務用資材ガ輸送ノ実態ニ即応スル総合的配給ヲ確保スル為、之等ノ配給ニ関スル事項ハ運輸通信省ニ於テ一元的ニ之ヲ掌ル如ク措置ス。
燃料及資材ノ一括交付団体トシテ自動車運送事業組合及日本通運株式会社(燃料ヲ除ク)ヲ指定シ、要スレバ一括購入ノ上之ガ配分ヲ為サシム
二  陸上小運搬ノ統制強化
(一)荷牛馬車ニ付テハ廃車補充ニ重点ヲ置キ、之ガ整備ヲ期スルト共ニ最低不足車両ノ増備ニ努ム。
(二)荷牛馬車等陸上小運搬等ノ運送力ノ最高度活用ヲ図ル為、陸上小運搬業組合ノ統制組織ヲ強化シ、地方ノ実情ニ即シ輸送統制ヲ実施セシム
尚農耕用荷牛馬車等ノ組織的利用ノ方途ヲ講ズ。
(三)陸上小運搬業組合ノ統制力強化ノ為、組合ニ対シ要スレバ必要ナル助成金ヲ交付ス。
(四)運搬用牛馬ニ対スル飼料ノ最小所要量ノ確保ヲ図ル為、物資動員計画上特段ノ考慮ヲ為ス
尚之ガ配給ニ関シテハ都市輓牛馬ニ重点ヲ置ク
(五)陸上小運搬業統制組合ヲ地方ノ実情ニ応ジ、陸上小運搬用物資ノ一括交付団体トシテ指定シ、要スレバ一括購入ノ上之ガ配分ヲ為サシム
三 輸送要員ノ保持
(一)自動車運送事業、小運送業及修理加工業等ニシテ、企業整備完了ノモノハ、之ヲ原則トシテ第一種事業場タラシメ、且労務調整令第二条ノ指定ヲ為ス如ク措置シ、所要ノ不足員数ノ補填ニ努ム
(二)自動車運送事業組合等ヲシテ既存施設ノ利用ニ依リ、運転者、修理技工等ヲ急速養成セシメ、尚之ガ為要スレバ所要ノ助成金ヲ交付ス。
(三)輸送要員ノ厚生施設ノ整備、勤労管理ノ徹底及勤労用物資ノ確保ニ付必要ナル措置ヲ講ズ。
四 鉄道小運送能力ノ確保
大運送ト一貫セル小運送能力ノ確保ヲ図ル為、日本通運株式会社ヲシテ輸送ノ実情ニ即応シ、ソノ機能ヲ最高度ニ発揮セシムル如クスルト共ニ、ソノ所要事業資金ノ調達ニ資スル為、必要ナル増資ヲ行ヒ帝国鉄道特別会計ニ於テ之ヲ引受ク
五 運賃料金ノ調整
自動車運送事業、小運送業並陸上小運搬業ヲ通ジ、相互ノ関連ヲ顧慮シツツ運賃料金ノ均衡調整ヲ行フ
六 地方自動車行政機構ノ整備
都道府県ニ於ケル陸上小運送関係事項ヲ一課ニ統合シ、其ノ行政執行力ヲ強化シ、各鉄道局トノ連繋ヲ緊密ナラシメ、以テ陸上小運送ノ円滑ナル遂行ヲ図ル。