軍需生産企業体制及運営に関する件

昭和20年2月27日 閣議承認

収載資料:日本金融史資料 昭和編 第34巻 日本銀行調査局 大蔵省印刷局 1973.5 pp.427-428 当館請求記号:338.21-N684n

危急戦局下軍需生産企業の体制及び運営に関し政府は左記の通りその大綱を定め軍官民の一致協力に依りその強力なる実行を期す
目標
国家は全国民奉公の赤心に信頼し其総力を必勝の一点に結集せんことを期待す、軍需生産の面に於いても右の趣旨に依り各人の職任奉公に徹することを以て目標とす、企業運営の形態は各業種及び企業の実態に応じ之を定むることゝし而して之が運営に当る者は指導統率の任に当ると勤労工作の任に当るとを問はず斉しく職任奉公を以てその本分とす可きものとす
方策
一、民営企業に就ては軍需会社法制定の趣旨を更に徹底して之が生産の昂揚を図ること
二、生産責任者は国家の要請に基き強力なる権限を以て厳正に部下を統率しその担当する重責の遂行に一意邁進し得るやう措置すること
三、生産責任の遂行に付在来の煩瑣なる統制手続は能ふ限り之を除き生産責任者の十分なる活動に資すること
四、株主より不当の掣肘を受け戦力増強上悪影響ありと認めらるるものに対してはこれを排除するため所要の措置を講ず
五、生産責任者にして不適格なるものはこれを更迭せしむると共に以下の陣容についても右に準ずること
六、特に重要なる企業に対してはその生産増強を推進せしむるため国家に於いて必要なる援助を与ふること
七、関連企業の総合運営を図るため必要に応じ業種、系列又は地域に依り企業の集団を結成して資材、労力、技術等の相互融通と活用とを図ること
八、企業の内容、戦局の情勢等に依り民営よりも国営を以て適当とするものに就ては之を国の経営に移すことあるべきこと
以上諸方策を実行するに当りては現下の緊迫せる事態に鑑み機動的に措置することゝし必要に応じて法制的、財政的又は行政的措置等を実施するものとす