綿紡績業の生産促進に関する件

昭和21年10月11日 閣議決定

収載資料:商工政策史 第16巻 通商産業省編 1972 pp.258-259 当館請求記号:509.1-Tu783s

我国繊維産業、就中綿紡織業は連合軍司令部の絶大なる援助と我国官民の努力により再建復興の一路を辿りつつあるが、その実績は諸般の困難なる事情に制約せられて予期の成果を挙げ得ない実情にある。斯くては今後の原綿対日供給、輸出要請及び国内必須需要の充足並に繊維産業に憂慮すべき事態を惹起し、延いて我国産業再建全体に甚大な悪影響を及ぼすに至ると思われるので、此の際左記の様な対策を積極的に推進して当面の危機を打開し今後の生産増強の基礎を確立することが肝要である。
一 織維産業の重要性の再認識
(イ)繊維産業が最重点産業の一であり、就中綿紡織業は其の中核を為すものなることを一般に周知徹底せしむること。
(ロ)本方策を各地方末端機関にまで徹底すると共に、之が実施につき関係各省に於て責任を以て措置すること。
尚右の措置の中特に重要なる事項に就ては其の結果を逐次閣議に報告すること。
二 労務関係
(イ)十一月以降食糧一日三・五合の配給を行うこと。
右は米麦を以て充てること。
(ロ)右米麦の配給は農林省より直接各工場に供給する等の方法に依り、其の配給を確保する為特別の措置を講ずること。
(ハ)副食物の配給、輸送につき優先的取扱を為すこと。
(ニ)工員の増加を速かに配給数量に反映せしむるよう特別の措置を講ずること。
(ホ)工員の募集及定着化に資するため作業衣、肌着等の衣料及甘味料の特別配給を為すこと。
(ヘ)必要工員の急速充足を図るため各地方勤労署の積極的活動を促すこと。
(ト)宿舎の整備を促進するため之が所要資材の優先的充足を期すること。
三 資材関係
(イ)石炭の割当につき優先的取扱を為すと共に其の現物化を期すること(傭船を認めること)
(ロ)針布、スピンドル油、藁工品、電球等運転用資材及緊急建設資材につき割当数量の増加及び之が現物化につき関係統制団体等を積極的に指導督励し所要量の充足を期すること。
四 電力関係
(イ)渇水期に於ける電力制限に就ては綿紡績全工場及び輸出綿織物工場を制限外に置くこと。
(ロ)電気ボイラーの使用を認めること。右不可能なる場合は所要石炭の増配を行うこと。
五 輸送関係
綿紡績工場の製品及び其の所要資材の輸送と共に優先輸送を実施すること。
右に伴い貨車、トラック(ガソリンを含む)等の優先配車につき措置すること。
六 資金関係
本年八月二十三日閣議諒解「繊維産業の生産完遂に関する件」に掲ぐる方策の実施を期すること。
七 米綿消化運動の展開
本措置を強力に実行に移し年内に於ける輸入綿花の消化を極力推進するため十一月及び十二月の二カ月を通じ米綿消化促進期間を設定すること。
尚本運動実施のため必要なる予算的措置を講ずること。
八 紡績工場の機器類の急速整備を行うために関連機器工場中主要なる工場に就ては前各号に準じ措置すること。