厳寒期における鉄道貨物輸送緊急事態に対する応急措置について

昭和22年1月17日 閣議決定

収載資料:日本陸運十年史 第3巻 日本国有鉄道 1951 pp.991-992 当館請求記号:DK31-15

鉄道貨物の輸送力は施設、資材、労働事情等の輸送力構成の諸条件に制約されて、今や重大な段階に直面しつつあるが、特に降雪厳寒期をむかえるに及んでこのるい弱性を表面化するに至つた。
長年に亘つて酷使した機関車は相ついで倒れ、又これを修理補強する技工その他雪寒中にさらされつつ作業する現場作業員の作業用物資並びに保修用資材が不充分のため、これらの作業能率は著しく阻害され、故障車の修理、構内作業等は頼んど麻痺の状態に陥らんとしている。特に東北、北海道の輸送状態は重大な危機にさらされ、非常増産を強行しつつある石炭に対してすら輸送の円滑を期し得られず、主食、薪炭、生鮮食糧品等の生必物資の輸送も危殆に瀕し、又各種産業等は死活の関頭に立ちつつある状態である。
この様な国鉄輸送の危機状態に対しては、根本的な対策を講じなければならないが、とりあえず当面の応急策として、これら厳寒期の緊迫した輸送事態に対応するため、政府は急速に左の措置を講じ、以つて石炭、食糧、薪炭その他重要物資等の計画輸送量の確保を絶対に図ることとする。
1 鉄道輸送について石炭、電力、主食の生産に対すると同等の取扱いをする。
2 補修用資材特に機関車、貨車修理資材並びにその修繕施設の整備に必要な資材及び電力については、特段の措置を講じて所要量の入手を確保する。
3 輸送及び補修関係現場作業員に対し、必要な労需物資の配給を確保する。
4 雪寒地帯の職員に対しては特別作業手当の増給、報奨等を行ぅ。
5 右に要する予算は別途これが確保をはかる。