中小企業振興対策要綱

昭和22年2月15日 閣議決定

収載資料:経済安定本部戦後経済政策資料 第29巻 総合研究開発機構(NIRA)戦後経済政策資料研究会 日本経済評論社 1995.7 pp.5-8 当館請求記号:DC55-E831

国家経済の再建と国民生活の安定とは中小企業に依存する所大なるに鑑み、政府は此の際中小企業の確実な振興を図る為左の基本方針により強力且迅速に施策を講ずるものとする。

一、現在の資材及び資金の需給状況に於ては中小企業全般にわたりその振興を期することの極めて困難なる現状に鑑み、さしあたり本要綱によりその振興を実現すべき中小企業は輸出品、生活必需品等刻下重要なる国家的使命を有する業種にして政府の指定するものに重点を置くこと。

二、今後の経済情勢に鑑み、中小企業の振興は高度の科学的能率経営を第一義とし非能率経営の排除を期するものとする。これが為各種関係公共機関及び民間団体を動員して経営刷新の指導に当ると共に、商工協同組合による組織化を普及促進し組合の共同施設により中小企業経営の強化拡大を図るものとし、特に必要且有効なる共同施設に対して特別の援助を与えること。

三、時に中小企業の技術部面を現状の儘に放任するに於てはその将来の存立は不可能と考えられるるにより、この点については強力なる技術指導の実施により世界的水準に達せしむることを目標として根本的刷新を図るものとする。
これが為この際内外の優秀技術を調査把握し、特に大企業の技術にして中小企業生産に利用し得べきものは之を徹底的に活用すると共に、技術研究機関の拡充強化及びその総合的運営により最新技術を中小企業に導入するものとする。而して其の普及化及び実用化の指導については、各種公共機関及び民間団体並びに民間優秀技術者を動員して規格実施の徹底を図ると共に一般的及び個別的技術につき講習会の開催及び実施指導を行はしめ、進んでは模範工場の設営、試作研究の奨励等の方策を講ずること。

四、高能率の中小企業に対しては極力資材及び設備の確保を図るものとし、この点に関しては特に産業復興営団の機能を活用すること。

五、中小企業の所要資金については、一般金融機関及復興金融金庫の資金を更に強度に活用するの方策を講ずるの外、中小企業金融の重要性及特殊性に鑑み此の際商工組合中央金庫を強化すること。

六、優秀製品の公開により中小企業製品の品質の向上と販路の開拓を図る為見本市、展示会等を開催し、優秀製品に対しては表彰或いは資材の特配を行ふ等の特典を与へ奨励の措置をとること。

七、中小企業振興の諸方策を強力に実施推進させる為中央及び地方の指導機構を強化すること。

八、以上各項目の実施に必要な法制的及び予算的措置を速かに講ずること。
備考
商業に関しては前各号に掲ぐる事項の外別途之を定めること。