昭和22年度追加予算について

昭和22年7月9日 閣議決定

収載資料:昭和財政史 終戦から講和まで 第17巻 大蔵省財政史室編 東洋経済新報社 1981 pp.993-994 当館請求記号:DG15-19

さきに成立にかかる昭和二十二年度予算は新価格体系の制定、給与水準の上昇、経済緊急対策の実施その他に伴って編成当時の基礎事情に相当の変化を生ずるに至った。このままに推移するならば、巨額の歳出追加は必至であり、しかもその財源の大部分は赤字公債に仰がねばならぬ状況にある。この際財政収支の均衡保持はインフレの進行を抑制するため現下絶対の要請であるから、歳出の全般にわたり、徹底的な再検討を遂げ、その圧縮削減を加えると共に、歳入についても画期的な増徴策を講じ、健全財政主義を堅持することとし、大体左の方針による。
一、歳出
歳入の調達可能の限度より勘案し、この際における一般会計歳出の追加総額を、別紙案を基礎とし六〇〇億円程度に止めるよう徹底的削減を図る。即ち
(一)地方分与税分与金
租税の増収等に伴い法定率に基き相当額を追加計上する。これにより地方財政の緩和を図ることとし、地方職員の待遇改善費に対し国庫より補助することは考慮しない。
(二)価格調整費
今回の価格改定に伴う本年度所要見込額を追加する。但し主要食糧については本年十一月以降消費者価格の改訂を行うものとし、従って同月以降における価格調整費は一切計上しない。
(三)公共事業費
事業施行の重点を失業者の生産面への吸収におく建前を徹底し、その事業別及び地域別配分について全面的再検討を行い、追加額を最少限度に止める。
(四)政府出資金
復興金融金庫の融資資金等については民間資金の蓄積にまつこととし政府出資金の増加払込は行わない。
(五)給与改善費
給与改善費については、本年六月分迄はいわゆる一六〇〇円基準により、同七月以降は一八〇〇円基準により所要額を追加する。
(六)学制改革費
いわゆる六、三制度については、物資需給の状況、国庫及び地方財政の現状等に顧み、その完全なる実施は困難と認められるので、この際制度の根本について再検討を行い、その所要額を五億円以内に止める。
(七)生活保護費
食糧価格の改訂等に基き生活保護費の限度引上を行うこととし所要の不足額を追加する。
(八)貿易資金
貿易資金の内容を精細に検討し早急に改善に関する具体策を樹てることとし、この際資金の増額は行わない。借入金により処理しおくものとする。
(九)農地改革及び農業生産調整費
農地負担の現状等より考え農地委員会に関する経費の追加計上は行わない。既成立予算の効率的運営を図る。
農業生産調整費については農民の自主的協力にまつこととし最少限度の経費を追加する。
(一〇)失業手当
公共事業、退職金、年金保険、生活保護法等の各種制度を総合勘案し、国庫財政の将来に禍根を残さぬことを期する。その追加額もこの際における最少限度に止める。
(一一)戦災学校の復興
戦災学校の復興は公共事業費の再検討により処理させることとし、経費の追加計上は考慮しない。
(一二)物価騰貴による経費の不足
物価騰貴による経費の不足は病院、試験研究機関、刑務費、引揚民関係等特殊のものを除く外原則として追加しない。事業の打切、縮小、繰延、経費の効率性発揮等により措置することを期する。
(一三)終戦処理費及び賠償撤去費
以上各項にわたり、徹底的な措置を講じても、尚歳出追加額を歳入の限度に止めることは困難であるから、終戦処理費についてその計上額を最少限度に止めるよう計画の変更、規模の縮小等について連合軍司令部に懇請する。
尚賠償撤去費については今後の情勢推移にまつこととし、この際は計上しないことにつき連合軍司令部の了解を求める。
二、歳入
歳出追加額の財源は絶対に普通歳入により支弁することとし別紙案に基きその確保を図る。即ち
(一)租税
(1) 最近の経済情勢に即応して租税収入の全面的見積がえを行い、且つこれを確保し得るよう税務機構の運営にあらゆる努力を傾注する。
(2) 生計費の騰貴に対処し勤労所得、扶養家族の控除制等について所要の調整を行う。
(3) 酒税の増徴を行うと共にいわゆる加算税制度の活用を図る。
(4) いわゆる新円階層に対する課税を徹底するため、特別の利得税制度を創設する。
(二)専売
(1) 煙草については価格の引上を行わず一般配給品の一部を特価品に振替え、益金の増加を図る。
(2) 新に砂糖その他甘味料品に対する専売制度を創設し相当額の財政収入を期待する。
(3) 塩及び樟脳については経費の増加を補い得る最少限度に価格引上を行い収支を適合させる。
(三)価格差益
今回の価格改定による差益は一部当該業者に留保させる外、国庫に徴収するものとし、その捕捉の確実と徴収の徹底を期する。
三、特別会計
各特別会計についても以上各項に準じて措置する。ことに企業特別会計の赤字については、その独立採算制を保持する建前を以て、経営の合理化各種料金等の引上により措置することとし、一般会計よりの赤字補填は考慮しない。
四、地方財政
国家資金の状況に顧み、地方財政についても歳出の徹底的抑制と歳入の増徴とを行うものとし、速に具体的措置を講ずる。

昭和二二年度予算追加見込額(大蔵省、二二、七、九)
歳出        六〇,〇〇〇百万円
歳入        六〇,〇〇〇
租税収入増加    四六,〇〇〇
煙草益金増加    八,〇〇〇
新専売実施収入   二,〇〇〇
価格差益納付金増加 四,〇〇〇
合計        六〇,〇〇〇

(以下計表省略―編者)