牧野の開放に関する件要綱

昭和22年10月14日 閣議決定

収載資料:農地改革資料集成 第3巻 農地改革資料編纂委員会編 農政調査会 1975 pp.318-320 当館請求記号:DM125-17

農地改革の一環として、牧野の開放を行い、自作農の創設及び土地の集約利用を促進するため、自作農創設特別措置法の一部を次のように改正する。
第一 この法律において牧野とは、家畜の放牧又は採草の目的に供される土地をいう。然し農地並に植林の目的その他家畜の放牧及び採草以外の目的に主として供される土地は除外される。
第二 政府は、左に掲げる牧野を買収する。
(1)不在地主の所有する小作牧野については、全部、在村地主の所有する小作牧野については、北海道では平均一町歩、都府県では三町歩を超える部分の牧野
(2)自作牧野については、農地と合計して北海道では平均二十町歩、都府県では平均五町歩を超える部分の牧野
尚、この保有限度はいづれの地帯でも四十町歩を超えない。
註 現に決定されている農地の保有限度の面積(内地平均三町歩)は右に関連して変更されることはない。
第三 前項に掲げる牧野の外政府は都道府県農地委員会又は市町村農地委員会の認定により左に掲げる牧野を買収することができる。
(1)農地を所有しない者又は農業を営まない者が所有している小作牧野
(2)第二の(2)の保有限度まで牧野を保有しなくても牧野利用の集約化によつて、保有限度を所有する場合と同様の生産をあげられるものと認められる場合において、集約化によつて節約することが可能と思われる部分の牧野
(3)農業を主要な業務としない法人その他の団体の所有する牧野
(4)利用が放棄されている牧野
(5)所有者が政府に買収すべき旨を申し込んだ牧野
第四 政府は、牧野買収に関連して左に掲げるものを買収することができる。
(1)買収する牧野の上にある立木又は工作物
(2)買収する牧野又は買収する牧野から造成される農地の利用上必要な農業用施設又は水の使用に関する権利
第五 政府は、左の各号の一に該当する牧野については買収しない。
(1)公共用又は公用に供している公有牧野で主務大臣の指定したもの。
(2)市町村、財産区又は農業協同組合(主務大臣の指定したものを除く。)有の牧野で共同利用に供されているもの。但し、この場合でも利用者の数に比べ不相当に広大な面積の牧野は、一定面積を超える部分を買収する。
(3)都道府県又は主務大臣の指定する教育機関の所有する牧野で専ら試験研究の目的に供されているもの。
(4)前各号に掲げるものの外畜産の改良発達等の必要上主務大臣の指定した牧野
(5)所有者が自ら利用していた牧野を疾病その他特別の事情で一時小作に出している場合において近く所有者自ら利用することを相当と認めたもの。この場合において買収されない牧野の面積は、農地と合せて保有限度を超えない。
第六 牧野の買収は、市町村農地委員会(特別な場合は、都道府県農地委員会)の定める牧野買収計画により行う。
牧野を買収する場合の対価は、従前通り近傍類似の農地の対価の四割五分以内である。
第七 牧野の買収は、農地と同様原則として昭和二十年十一月二十三日現在の事実に基いて行う。
第八 買収牧野は可能な限り自作農創設の用に供するが土地の状況により分割不適当な場合は、牧野の集約的利用を促進する条件の下に共同利用の方途を講ずる。