企業再建整備法における退職金の取扱等に関する件

昭和22年10月21日 閣議決定

収載資料:昭和財政史 終戦から講和まで 第17巻 大蔵省財政史室編 東洋経済新報社 1981 pp.850-851 当館請求記号:DG15-19

一、退職金の取扱
特別経理会社の役員又は従業員に対する退職金の取扱については、昨年十月補償打切に伴う労働対策として第二会社に引継がれる場合には、これを支給しない旨閣議決定により定められているが、今回企業再建整備法の一部改正に当り、特に規定を置きこの取扱を法的に明瞭にすることとする。即ち
(1)第二会社に引継がれる特別経理会社の役員及び従業員に対しては旧会社においては退職金は支給してはならぬこととし、退職金計算上は、旧会社における在職期間は第二会社の在職期間として引継がれるものとする。
(2)旧会社を退職する役員従業員であつて第二会社に引継がれない者に対する退職金についても整備計画の認可の日から新旧勘定併合の日(従つて第二会社設立完了の日)迄は支払つてはならないこととする。
(3)特別経理会社の任意積立金の一部を退職金支払準備の為に留保することを認め(即ちこの留保せられた積立金は特別損失の補填に充当しない)、第二会社を設立する場合には、この積立金の額に相当する資産を第二会社に譲渡し、第二会社はこれを積立てるものとする。但し留保する金額についてはこれを整備計画に定て認可を受けなければならないものとし、その金額の限度については別に法律で限定をしないが整備計画の審査の方針として任意積立金の総額の三分の一を限度とする。
(4)右の留保した積立金は退職金の支払に充当する場合の外は、清算、破産の場合を除いて、その使用については主務大臣の認可を要するものとする。
(5)退職金支払準備の為第二会社に譲渡した資産に対しては課税しない。
二、特別経理会社と従業員組合との関係
特別経理会社の整備計画に対しては
(1)労働組合の代表を特別管理人に選任して整備計画の立案に当らせること
(2)整備計画を提出するに際して従業員組合の承認を求めること
(3)整備計画に対し従業員組合からの異議の申立を認めること
等の希望意見がある。
右の内現行法規上(1)及び(2)は認められていない。(3)については、整備計画は利害関係人の閲覧に供しなげればならないことになつているに拘らず異議の申立は株主及び債権者に限られているのでこの際法律を改正し、利害関係人から異議申立ができることとする。従つて従業員も利害関係人として整備計画に対し異議の申立をなすことができることとなる。