昭和23年度一般会計予算大綱

昭和23年5月28日 閣議決定

収載資料:昭和財政史 終戦から講和まで 第17巻 大蔵省財政史室編 東洋経済新報社 1981 pp.1060-1062 当館請求記号:DG15-19

第1 昭和23年度一般会計概算額
昭和23年度一般会計概算額は、
歳入歳出各々   399,380百万円
であって、これを昭和22年度一般会計
歳入歳出予算額  214,256百万円
に比較すると、    185,124百万円
の増加となる。
第2 予算編成の基礎的事項
昭和23年度予算を、編成するに当っての基礎的事項については次のような考え方を以て、処理することとした。
(1)物価
昭和22年7月定められた現行物価水準を改訂し、概ね、現行公定価格の7割程度を引上げるものとして昭和23年度一般会計歳入歳出概算額を積算計上した。
(2)賃銀
賃銀については、以上の物価情勢を基礎とし、現在程度の実質賃銀を確保することを目途として、一般労務者の賃銀水準3,700円程度と想定することとした。又官庁職員の給与水準も、一応これに準じ、積算することとした。
(3)鉄道運賃及び通信料金
企業会計独立採算制の確立を目標とするも、物価及び生計費への影響を、極力緩和する趣旨の下に、鉄道運賃については、旅客貨物とも各3.5倍、通信料金については4倍程度に引上げを行うこととした。
(4)地方財政
地方財政の確立は、地方自治の基盤をなすものであるから、国費地方費の負担区分について、合理的調整を行うとともに、地方自治体の財政需要と財源とについて、慎重な検討を加えて、弾力性ある地方財源の賦与につとめ、以て中央及び地方を通ずる財政の健全化を図ることとした。
(5)行政整理
行政機構を簡素合理化するとともに、経費の節約を図るため、行政整理を実施することとし、この際、各省各庁の所管毎に、人件費について、原則として1割5分に相当する金額を節約することとした。
第3 歳入中重要事項
歳入中重要なる事項につき、説明すれば次のとおりである。
(1)租税及印紙収入
最近に於ける賃銀、物価等経済諸情勢の推移に即応して、国民の租税負担を調整合理化するとともに、財政需要に対応して、租税収入を確保することを目標として、税制の改正を行うこととした。即ち国民生活の実情等に照し、所得税を大幅に軽減すると共に、企業の健全なる育成と活動とを図るため法人税を軽減し又酒税等間接税につき、最近の物価事情に即応する外財政需要に対処するため、相当の増徴を行うこととした。而して租税及び印紙収入の見積りに当っては、物価及び賃銀水準の推移並びに最近における実績等を基礎とし、極力課税の適正を期することとし2,632億円を計上した。
(2)専売庁益金
国民生活との調和を図りつつ、財政需要の増大に即応して、必要な普通財源を確保するため、煙草の販売価格を改訂することとし、これに伴い専売庁益金において943億円を計上した。
(3)価格差益納付金
公定価格の改訂に伴う、値上り差益の納付金については、昭和22年7月の価格改訂に伴う分116億円余、及び今回の価格補正に伴う分72億円余を、計上することとした。
(4)前年度剰余金
昭和21年度の決算上生じた純剰余金17億円余の内、財政法第6条の規定によって、国債償還の財源に当てる分8億円余とこれを控除した残額の内昭和22年度の歳入に計上使用した残額283万円余とを、併せ計上することとした。
(5)其の他の歳入以上の外、その他の歳入については、最近の物価等の事情に即応して、極力増収に努めることとした。
第4 歳出中重要事項
歳出の内、重要なる事項につき説明すれば、次のとおりである。
(1)終戦処理費
最近における支出の実績と、物価及び賃銀水準の改訂を考慮し、所要額を計上した。
(2)賠償施設処理費
昭和23年度における、賠償施設の管理保全及び撤去作業等の計画に基き、これに物価及び賃銀水準の改訂を考慮し、所要額を計上した。
(3)価格調整費
石炭、鉄、肥料等の重要物資に対する、今回の価格改訂に伴う価格調整補給金の、昭和23年度内の支出見込額約440億円及び今回の価格改訂以前にかかる分として支出を要する額約75億円との計515億円を計上した。
(4)公共事業費
本費については、その国家再建途上に於ける重要性に鑑み、極力事業の遂行に支障なからしめることを期し、殊に災害復旧事業については、その緊急性に鑑み、格別の考慮を払うと共に、物価及び賃銀の改訂等を充分に勘案して、425億円を計上した。右により、昭和23年度の事業量は、前年度の実績に比し、相当程度増加する見込である。
(5)地方分与税分与金
地方財政需要の増嵩に対応し、地方において事業税その他の新税を創設して、極力地方固有財源の充実を図ると共に、国家財政計画に即応して、経費の効率的使用を期待する外、地方分与税分与金に於て449億円を計上し、以て地方財政収支の均衡を図り、地方自治の運営に支障なからんことを期した。
(註 入場税の地方委譲を実施する場合は計数に相当の異動を生ずる見込である。)
(6)復興金融金庫出資金
日本銀行以外の一般市中金融機関の保有する、復興金融債券の内本年度中に償還期限の到来する分につき、その償還財源を付与するため、復興金融金庫出資金180億円を計上した。
(7)国債費
一般会計の負担に属する国債及び借入金の償還金、国債及び借入金の利子、大蔵省証券の割引差額等について、昭和23年度中に於ける所要額75億円を計上した。
なお軍事公債の利子については、本邦人の所有するものについて、昭和23年7月1日から向う1ケ年間に支払期日の到来する利子に限り、元金の償還期日迄支払期日を延期する措置を講ずることとしたため、これによる経費不要額を差引き計上してある。
(8)鉄道及び通信業務収支差額繰入
鉄道運賃及び通信料金の改訂を行うも、なお本年度に於て生ずる業務上の収支差額を補填するため、国有鉄道事業特別会計に対し90億円、通信事業特別会計に対し40億円を繰入れることとし、以て両特別会計の収支の均衡を図ることとした。
(9)鉄道及び通信行政監督費
国有鉄道事業及び通信事業の両特別会計の独立採算の趣旨を徹底せしめるため、その企業の運営そのものには、一応、関係なしと認められる行政或は監督の性質を有する経費を、一般会計において負担することとし、国有鉄道事業特別会計に対し14億余万円、通信事業特別会計に対し6億余万円の繰入を計上した。
(10) 船舶運営会の海運業務については、鉄道運賃との均衡を考慮して、海上運賃を現行料率の3倍程度に引上げることとしたが、なお本年度において生ずる収入欠陥を補填するため、必要な経費40億円を計上した。以上、昭和23年度一般会計歳入歳出予算の概要を説明した次第であるが、その内訳の大要を示せば、次のとおりである。
(以下内訳計表省略―編者)