政府収支の調整に関する件

昭和23年8月11日 閣議決定

収載資料:経済安定本部戦後経済政策資料 第23巻 総合研究開発機構(NIRA)戦後経済政策資料研究会編 日本経済評論社 1995.3 pp.81-98 当館請求記号:DC55-E831

一 毎四半期の財政収支は閣議決定の総合資金需給計画に基づき、各省各庁の協力の下に、計画通りの実行確保を期すること。
二 右の財政収支計画の毎月における実蹟を検討し、検討に基づく対策を閣議に報告すること。
三 政府支払と一般金融との調整を図るため政府の支払が地方団体、産業界等に系列的に滲透する面の実態調査を行うこと。
右の諸項を実行するため、政府資金収支調整協議会を活用すること。

政府支払実態調査要綱
一、方針
(一)政府支払と一般金融との調整を図るため、政府の支払が地方団体、産業界等に系列的に浸透する面の実態調査を行うこと。
(二)これがため、政府資金収支調整協議会を活用すること。
二、要綱
(一)調査事項
(1)政府支払の状況
(2)政府支払遅延の影響
(3)政府支払に関する改善方策
(二)調査方法
(1)調査の対象は、官庁(支出官)、業者及び金融機関の三者とし、差当り八月以降当分の間毎月末における政府支払の状況、政府支払遅延の影響をサンプル調査により具体的に実態調査すること。
(イ)官庁(支払官)に対する実態調査は、終戦処理費、価額調整費等主要費目につき、支払未済の状況、金額、遅延の期間、遅延の理由及びその手続を迅速化するための改善方策並びに地方団体への交付金の支払い状況等を調査するものとする。
(ロ)業者に対する実態調査は、官庁との契約に基づく事業の遂行のための資金繰りの状況及び政府支払の実状並びに政府支払に対する改善意見を調査するものとする。
(ハ)金融機関に対する実態調査は、政府支払見返融資の状況(融資残高、借換乃至期限延長の状況、代理受領制度実施の状況等)及びその改善方策等を調査するものとする。
(2)調査の方法は、中央においては政府資金収支調整協議会を活用し、地方においては財務局及び地方部を利用するの外、民間業者団体、金融機関等に依頼すること。
(3)調査方法については、右に定めるものの外、別途理財局長の定めるところによる。
(三)措置
この調査に基き、政府支払に関し、速やかに有効適切なる措置を講ずるものとし、特に必要と認められるものについては、これを閣議に報告すること。

政府支払実態調査要綱細則
一、官庁(支払官)に対する実態調査
(一)統計調査
(表省略)
(二)会計法第四六条に基づく実施調査
(1)中央においては大蔵省理財局に、地方においては各財務局及び各地方部内に、政府支払に関する民間業者からの相談承り所を設ける。
(2)右の相談承り所は、民間業者から政府支払に関する相談乃至苦情を持ち込まれた場合は、その事案につき、実態調査を行うこと、これがため必要ある場合は、会計法第四六条に基づき実地調査を行うことができる。
(3)右の調査の結果を別紙第四の様式により大蔵省に報告すること。
(4)この実地調査においては、実状の調査のみに限ることとし、調査の結果に基づく措置は中央において決定すること。
二、金融機関に対する実態調査
(一)調査範囲 九大銀行及び日本興業銀行
(二)調査方法
(1)右の金融機関は、毎月末現在において政府支払見返融資の状況につき別紙第五の様式による調査報告を翌月十日までに日本銀行本店に提出するものとする。
(2)日本銀行本店は、これを取りまとめ十五日までに大蔵省に報告するものとする。

別紙第一
終戦処理費(事業費)支払未済額調
(表省略)
(備考)1、この調査は一件の支払全額10万円以上のものにつき行うこと。
2、支払未済とは、業者から請求書が提出されていて尚支払を了せざるものをいう。
3、この報告書は、毎月末現在で二通作成し、翌月十日までに大蔵省地方部を経由大蔵省理財局へ提出のこと。
4、この調査は当分の間これを継続すること。
5、この調査には下記の事項につき附記されたい。
(イ)終戦処理費の支払遅延の原因は何か。
(ロ)上記の支払遅延の改善方策乃至意見。
(ハ)支払計画の承認請求から承認済の通知があるまでに要する期間について
(a)最長  日
(b)最短  日
(c)平均  日
(ニ)その他政府支払につき特記すべき事項

別紙第二
昭和23年度一般会計価格調整費支払い状況調
(表省略)
備考1、支払未済額とは請求書が提出されていて尚支払を了せざるものをいう。
2、毎月末現在で調査の上翌月十日までに大蔵省理財局国庫課へ報告のこと。
3、この調査は、当分の間これを継続すること。
4、この調査には、下記の事項につき附記されたい。
(イ)価格調整費の支払遅延の原因についての所見及び改善意見。

別紙第三
国有鉄道事業特別会計支払状況調
(その一)
(表省略)
(その二)
(表省略)
備考 1、支払未済とは物品持込又は工事竣工の日から見て支払未済のものをいう。
2、調査範囲は鉄道会計の全支出官とする。

別紙第四
政府支払実地調査報告
調査担当官庁名
調査担当官官職氏名
調査開始及び終了期日
一、事案の概要
(一)支払担当官庁氏名及び支出官
(二)業者等、住所氏名
(三)支払遅延等事案の金額
(イ)契約期日及び金額
(ロ)物品納入、工事竣工等の期日
(ハ)検収終了期日
(ニ)請求書提出期日
(四)支払遅延等事案の内容
二、支払担当官庁における処理状況
三、業者等における処理状況及び資金繰りの状況(別表参照)
四、事案に対する所見
五、要措置事項

別紙第五
政府支払見返融資調(8月末)
(表省略)
備考1、終戦処理費のための見返融資であるときは、支出官名に「終戦処理費」と記註のこと。
2、貸出期限到来してなお延滞となつているものは借換額欄に外書のこと。
3、毎月末現在で調査し、翌月十日までに日本銀行本店に直接報告のこと。
4、この調査報告は、当分の間これを継続すること。
5、政府支払見返融資との関係において、政府支払、貸出等に関し改善方策乃至意見を附記されたい。

別表
業者住所氏名
(1)政府との契約高
(表省略)
(2)政府との契約に基く物品納入又は工事竣工金額
(表省略)
(3)政府支払状況
(表省略)
(4)借入金状況
(表省略)
(5)政府よりの代金支払及び支払未済の主なるもの(項目、金額、遅延期間及び理由)
(6)支払未収金調
(表省略)
(7)月中資金繰調
(表省略)
(8)備考 1、この調査において支払未済とは、物品納入又は工事竣工の日から支払未済という。

昭和23年上半期一般会計支払状況
(表省略)
7月中における政府収支の検討
(表省略)
備考 1、本表中計画額は8月10日閣議決定の資金計画額である。
2、実蹟は速報によるものであつて精査の結果若干修正される見込である。
3、本表中□及び11の内には予金部資金の受超見込若干を含む。