税務行政の刷新改善に関する緊急施策について

昭和25年3月22日 閣議決定

収載資料:昭和財政史 終戦から講和まで 第18巻 大蔵省財政史室編 東洋経済新報社 1982 pp.218-220 当館請求記号:DG15-19

税務行政の運営が、特に現下の困難なる経済情勢の下において国民の利害休戚に至大の影響をもつ点に顧み、税務官吏の一段の自粛自戒を促すとともに、一部外部団体の運動等に左右されぬ公正な税務執行の態勢を確立する必要がある。
なお、国民の租税負担の軽減及び合理化を目的とする中央、地方を通ずる今回の画期的税制改正は、国民の納税義務の完遂を前提とすることはもちろんであるが最近の情勢によれば今年度の租税収入、なかんづく申告所得税の収入の確保については、楽観を許さないものがある。
よって、この際急速に次の諸施策を確立し、且つこれを実施するものとする。
一 税に関する紛争の急速なる処理を図り、懇切丁寧なる執務態勢を確立するため左の施策を実行する。
1 職員に対する監察の強化
2 職員の教育及び訓練の徹底
3 苦情相談所の拡充
4 紛争処理特別機関(協議団)の急速なる開設
右各号の施策具現のため差し当り必要な職員の増加と設備の整備を行う。
二 納税義務の重要性につき国民の注意を喚起して脱税の絶滅を期するとともに、いやしくも団体等で税務行政の適正な運営を阻害する如き事態に際しては厳にこれに対処する旨の政府の基本的態度をせん明するものとする。
三 中央及び地方を通ずる税務行政の適正なる運営は、税務官署のみの努力によっては到底その実現を期待し得ない現情に顧み、関係各機関の緊密なる連絡及び協力態勢を確立するため、別に定めるところにより中央及び各都道府県毎に税務行政連絡協議会を設置する。
なお、昭和二十三年九月七日閣議決定による酒類密造対策協議会の業務は、本協議会において併せ行うものとする。
(附帯諒解)
但し定員については定員法に関し別に協議することとする。

(別紙)税務行政連絡中央協議会規程案
第一条 税務行政連絡中央協議会(以下中央協議会という)は徴税確保を阻害する各種行為を適切に処置し、且つ、税務行政運営の民主化を促進する諸施策を協議し、右施策に関して関係各機関の協力態勢を確立するものとする。
第二条 中央協議会は、会長一人及び委員若干名をもってこれを組織する。
第三条 会長は、国税庁長官をもってこれにあてる。
委員は、関係各機関の職員の中から大蔵大臣がこれを委嘱する。
第四条 会長は会務を総理し、協議会を招集してその議長となる。
第五条 中央協議会は、左の事項について審議する。
1 徴税確保を阻害する行為の取締に関する一般的計画
2 徴税確保を阻害する行為の取締に関する情報の収集、交換
3 徴税確保を阻害する行為の取締に当り関係各機関の分担すべき具体的事項
4 徴税機関の民主化促進に関する具体的事項
5 徴税確保に関する宣伝工作
第六条 前条各号に基いて協議した事項について関係各機関は、その下部機関に対し必要の指示をなすものとする。
中央協議会は、税務行政連絡地方協議会の活動状況に関して必要な報告を求めることができる。
第七条 中央協議会は、必要に応じ随時開催する。但し、第五条に規定する事項につき事前審議の必要があるとき、又は細目的な事項を協議するときは、各委員に代り連絡員のみを招集することができる。
第八条 中央協議会の庶務は、国税庁直税部所得税課及び間税部酒税課においてこれを掌る。
第九条 この規定で定めるものの外協議会の運営に関し必要な事項は、会長がこれを定める。