警察制度改正要綱

昭和28年2月17日 閣議決定

収載資料:行政管理年報 第4巻 行政管理庁管理部 1954 p.43 当館請求記号:317.2-G98g

1.目  的
現行警察制度に関してその運営の実績に徴し、民主警察の美点を保持すると共に現在の諸情勢に鑑み、不適当と認められるところを是正し、以て治安の確保とその責任の明確化を図る。
2.中央警察組織の機構
(1)総理府の外局として治安警察行政を掌る警察庁(仮称)を置く。
(2)警察庁に長官を置き、国務大臣をもつて、これに充てその権限は国家の治安事務を中心とする別記の事項とし、これを法律に列挙する。
(3)長官はその権限に属する事務については、都道府県警察を指揮監督する。
(4)内閣総理大臣の所轄の下に国家公安委員会に代る国家公安監理会を置き、その委員の数・選任方法等は、すべて国家公安委員会の場合に準ずる。但し、資格の制限は撤廃する。
(5)国家公安監理会は、長官の行う事務の監視助言の機関とする。
(6)警察庁に次長1人を置き、長官が国家公安監理会の意見を聞いて任免する。
(7)管区本部を廃止し、警察庁の行う事務の中、警備・教養・通信連絡を掌る機関として地方警備本部(仮称)を置く。
3.地方組織と機構
(8)都道府県単位の地方警察を置く。
(9)国家地方警察は廃止する。
(10)市町村自治体警察は廃止する。
(11)都道府県に公安委員会を置く。
(12)都道府県公安委員会は行政管理及び運営管理を掌る。
(13)都道府県公安委員会は警察職員の考課・罷免勧告等を行う。
(14)都道府県警察職員の中、警視以上の者は国家公務員としその他は地方公務員とする。
(15)警視総監は長官が国家公安監理会の意見を聞いて任免する。
都公安委員会は、長官及び国家公安監理会に対し、常時警視総監の考課を具状し、また罷免の勧告をすることができる。
(16)道府県警察長は長官が国家公安監理会の意見を聞いて任免する。
道府県公安委員会は長官及び国家公安監理会に対し、常時道府県警察長の考課を具状し、また罷免の勧告をすることができる。
(17)都道府県警察長は公安委員会の意見を聞いて警察職員を任免する。
(18)都道府県公安委員の数を5人とし資格条件を緩和する(5人の中、副知事1人・都道府県議会議員1人を加えること。)
(19)人口70万人以上の大都市は市議会の議決により、都道府県警察に準ずるものを置くことができる。
(20)北海道警察にはその下に数個の方面隊を置き、その隊長の性格・任免等は都道府県警察長の場合に準ずる。
4.経費負担その他
(21)警察に要する経費は、都道府県の負担とする。
(22)国家公務員である警察職員の給与・装備・国家的警察事務活動等に要する経費は国庫の支弁とする。
(23)都道府県警察費の一部は特定の割合または種類により国庫が負担する。
(24)警察職員の定数は1割乃至1割5分程度縮減することとし欠員不補充其の他により漸次整理する。
(25)新制度の実施によつて生ずる給与其の他の不均衡については適当に是正し本人の不利益にならぬよう適当の措置を講ずる。
(26)国家消防本部はこれを警察庁長官である大臣の下に置く。
別  記
警察庁の権限として予定するもの概ね左の如し。
1.国の利害に係り、又は国内全般に関係若しくは影響ある事項その他治安維持上必要なる事項に関すること。
2.国の非常時態に対処するための計画に関すること。
3.警察教養に関すること。
4.警察通信に関すること。
5.犯罪鑑識に関すること。
6.警察職員の勤務及び活動の準則に関すること。
7.前各号に掲げるものの外警察に関し統一処理を要する事項に関すること。
8.皇宮警察に関すること。