奄美群島の復帰に伴う暫定措置に関する基本方針

昭和28年10月23日 閣議決定

収載資料:行政管理年報 第4巻 行政管理庁管理部 1954 pp.51-52 当館請求記号:317.2-G98g

奄美群島の復帰に伴いその引継事務を円滑に行うとともに、同地域の民生の安定を確保し、その急速な復興を図るため、差当り左の方針に基いて必要な措置を講ずるものとする。
1.同地域の復帰に際し、極力混乱を起さざるよう、特に通貨の交換・財政・金融・食糧配給の切替え等に関しては迅速且つ適正な措置を行うこととし、通貨の交換及び食糧の配給に関しては、復帰の事前に準備を完了し、また復帰と同時に日本側銀行及び郵政機関の業務を開始し得るよう措置すること。
2.現在同地域に在る琉球政府諸機関のうち、司法機関・郵政機関その他特殊な業務を取扱う機関は国又は公社の機関としてこれを引継ぎ、その他の機関は差当り鹿児島県の総合的出先機関として支庁を設け、原則としてこれに一括吸収して引継ぐものとすること。
3.鹿児島県大島支庁(仮称)は、国の出先機関に引継がれるもの以外の琉球政府職員を原則として一応全部引継ぎ、差当り昭和28年度中はこれに要する経費は国庫負担として、その所属職員の一部は国の職員とすることを考慮すること。
4.復帰後の同地域における行政については、同地域の立遅れた状態を回復し、民生を安定するため、直接実効のある実質的施策を重点的且つ総合的に実施することを根本方針とし、特に設置する国の出先機関において行う行政の外は、鹿児島県大島支庁において総合的に取扱わしめ、同支庁は奄美群島振興行政を一括処理するものとすること。
5.諸法令の適用については特に司法・通貨・郵便通信等国政運営の統一上又は人権の保障上特別の事由あるもの、生活保護等民生の安定上緊要なもの、その施行につき特別の支障のないものは、必要に応じ経過措置を講じ直ちに施行することを建前とするが、現地において混乱を招くと思われるようなものについては、特別の経過措置を講じつつ、遅くとも明年4月1日を目途として逐次これが施行を図ることとすること。
但し、同地域の実情により右の期日までに施行することを不適当と認めるものについてはなお、その施行を延期することを妨げないものとすること。
6.琉球米国民政府又は琉球政府の与えた許可・認可・免許等は原則として引続きその効力を認め、一定期間の後これが切替えの措置を講ずるものとすること。
7.租税に関しては、概ね明年3月31日までは従前の例によるも租税の種類によつては必要な臨時特別措置を講ずること。
8.国又は県の機関に引継がれる職員の給与は、差当り従前の給与によることとするが、出来得る限り速やかにこれが調整を行うものとすること。
9.昭和28年度の予算については原則として琉球政府の諸機関並びにその事業の引継ぎに要する経費を計上する外、生活保護・失業対策・教育施設の整備・公共土木事業・産業振興事業等のうち、特に臨時緊急を要するものについて国庫負担を建前として必要な措置を行うものとすること。
10.昭和29年度以降の振興対策については、別に関係各省庁及び鹿児島県関係官をもつて「奄美群島振興対策連絡協議会」(仮称)を組織して、年度計画を樹立し、明年度以降予算に計上するものとすること。
11.奄美群島振興事業は差当り左の項目中、同地域の自立経済を助長する如き事業に重点をおいて計画し、これに要する経費については、現地の実情と事業の性質を勘案して、国庫負担又は国庫補助につき特例を設け、且つ、金融的措置についても特別の措置を講ずることを考慮すること。
(1)重要資源の開発・特産物の奨励等同地域の基幹産業の振興
(2)学校の施設・設備の整備
(3)道路・港湾等の公共土木施設の整備
(4)開拓及び土地改良
(5)航路の整備
(6)病院等衛生防疫・社会厚生施設の整備
前項に掲げる項目の外、同地域の現状に鑑み、電気通信施設の復旧整備・学校給食・教科書等の無償配布等に関しても別途必要な措置を考慮すること。
12.衆議院議員及び県会議員の選挙については、臨時特例を設けることを考慮すること。
13.復帰後の同地域と沖縄諸島との間の経済の交流・渡航等の問題は両地域間の従前の特殊事情に鑑み、出来得る限り簡素化の措置を考慮すること。
14.その他沖縄に在住する奄美大島出身者及び本土在住奄美出身契約学生等の問題については必要に応じ、別途特別措置を講ずることを考慮すること。
備考
この方針は復帰の期日等の決定によりその実施上著しく支障を生ずる場合においては、変更することがあるものとする。