昭和29年度予算補正大綱

昭和29年11月23日 閣議決定

収載資料:国の予算 昭和30年度 財政調査会編 同友書房 1955 p.665 当館請求記号:344.1-Z11k

昭和29年度予算補正の計上に当つては、第19回国会における予算案の三党共同修正及び予算関係法律案の不成立又は修正に伴う所要の補正を行うとともに、本年度発生災害の復旧を促進し、緊縮財政の推進に伴う社会情勢の推移に対処し、社会保障関係費の充実を図るほか、必要最小限度の経費に限るものとする。その財源は既定経費の節減等によりまかない、財政規模1兆円の枠は、飽くまで堅持することとし、緊縮財政所期の目的の達成に努めるものとする。
なお、特別会計及び政府関係機関の予算についても、極力その範囲を限定し、所要の補正を計上するものとする。
第1 歳出
(1)災害復旧事業費
本年度発生災害については、年度内復旧率概ね2割5分を目途として復旧事業費を計上することとするが、工事の種類、緊急度合により極力重点的に工事を取り上げるよう措置する。
(2)社会保障関係費
緊縮財政の推進に伴い発生した失業者等の生活の安定を図るため、生活保護費及び失業対策費について所要額を追加計上することとする。
更に失業者の救済を強化するため公共事業についての節約解除分の一部を振り替えて緊急就労対策事業費(仮称)を新たに計上することとする。
(3)義務教育費国庫負担金
義務教育費については、教職員の給与費の実支出額の2分の1を国庫が負担する建前にもとづき、昭和28年度分について不足額を補てんするに必要なる額を計上することとする。
(4)地方交付税交付金
本年度においては法人税の自然増収が見込まれるので定率によつて交付税交付金が増加するが、この増加額のみによつては警察制度の改正に伴う財源措置の不足額を補てんするに至らないので、所得税及び法人税に対する定率を必要な限度において引き上げることとする。
(5)都道府県警察費補助
警察制度の改正に伴う都道府県警察の維持的庁費の不足を補うため補助金を補正計上することとする。
(6)地方譲与税譲与金
さきの国会において、入場税法案につき税率の引下げその他の修正が行われたため、入場税収入の減少が見込まれたが、他面昭和29年度については入場譲与税の最低限度額を155億5千万円と法定されたため、右の法定額と年度内入場税収入見込額との差額は一般会計で補てんする必要があり、そのうち借入金でまかないうる金額を差し引き所要額を計上することとする。
(7)農業保険費
農業共済再保険特別会計の28年度の赤字を補てんするため、一般会計より所要の資金を繰り入れるごととする。
(8) その他
以上の外、所要の経費につき、必要最少限度の増額を補正計上することとする。
第2 財源
財源については法案の不成立に伴う繊維品消費税の歳入欠陥、日本専売公社納付金及び雑収入の減少が見込まれるが、他面法人税等の増収が見込れるので、その差額の外、物件費、施設費等既定経費の節約及び不用により、まかなうこととする。
第3 特別会計及び政府関係機関
1 日本国有鉄道
日本国有鉄道については、運賃収入の減少が予想される上に、洞爺丸その他の災害の復旧及び新線建設の追加等についての財源措置が必要であるので、極力その財源を既定経費の節減に求め不足額を資金運用部資金からの借入れによることとし、所要の補正を計上することとする。
2 日本専売公社
煙草売上収入の減少等により、国庫納付金の減少が見込まれるので,所要の補正を計上することとする。
3 その他
特別会計についても極力その範囲を限定し、所要の補正を計上することとする。