国際収支改善総合政策要綱

昭和32年6月14日 閣議決定

収載資料:資料戦後二十年史 2 経済 有沢広巳・稲葉修三編 日本評論社 1966 p.332 当館請求記号:210.76-Si569

最近の国際収支の状況は楽観を許さない。これは基本的な財政金融政策などが間ちがっていたのでなく施策の遂行が急ピッチに行なわれたためである。この点に関して現状に即応した対策を講ずる必要がある。しかし日本経済の基調は必ずしも弱くないので着実な拡大均衡政策を前進させるべきである。そのため次の諸点について考慮する必要がある。
一.輸出の増進についてあらゆる努力を傾ける。
一.金融一本の独走を排し中小企業の対策に万全の措置を講ずる。その具体策としては
1 国庫余裕金の預託を増加し,商工中金の補強を図る
2 国民金融公庫の財政投融資を繰上げ放出する
3 地方銀行については中小企業金融に万全を傾注できるような具体策を講ずる
一.財政投融資に関しては輸入物資の急激な使用をともなうものを繰延べる
一.公共事業についてはさしあたり繰延べまたは節減をしないが,特に輸入物資の使用をともなうものは一部節減することを検討する。
一.輸入については経済総合政策の運用によって抑制する。特に貿易為替行政の総合的,計画的な運営を図る。また国産品をできるだけ使用する。
一.貯蓄を増進するため大規模な国民運動を展開する。
一.民間産業界に対して非重点産業に対する設備投資はできるだけおさえ、重点産業においても現在の在庫量、その他経済的実力ににらみ合せて設備投資を行うよう要請する。
一.これらの全体的な施策を通じて外貨の受入れを検討し、的確な情勢分析にもとづき弾力性のある政策運営を行う。