昭和35年度予算編成方針

昭和34年12月18日 閣議決定

収載資料:資料戦後二十年史 2 経済 有沢広巳・稲葉修三編 日本評論社 1966 p.446 当館請求記号:210.76-Si569

わが国経済の課題は、世界経済における貿易自由化の大勢に即応しつつ、わが国経済を一層安定した成長発展に導き、もって国民所得の倍増を期し、国民生活の向上と雇用の拡大を図るにある。而して、当面の景気動向は根強い拡大基調にあることにかんがみ、昭和35年度における財政の運営は、さきに閣議了解を経た「今後の経済見通しと経済運営の基本的態度」に則り、健全財政を堅持して、財政面から景気に刺激を与えることを避け、通貨価値の維持と国際収支の安定を確保することを基本とする。
昭和35年度予算及び財政投融資計画は、この基本方針に基き
(1)予算の財源は普通歳入により、財政投融資についても通常の原資によるほか民間資金の活用については適正な規模によるものとし、
(2)災害復旧と国土保全対策に最重点をおき、経費及び資金の重点的配分を徹底し、特に新規の事業はこれを抑制することとし、
左記により編成する。

1 災害復旧に万全を期するとともに、国土保全対策について長期計画を樹立しその推進を図る。
2 国民年金その他社会保障関係施策の推進を図る。
3 科学技術の振興、文教の刷新充実につとめる。
4 輸送通信その他産業発展の基盤を整備する。
5 農林漁業については生産基盤の強化等によりその振興を図る。
6 中小企業については、その育成強化を図る。
7 貿易の振興、対外経済協力の推進につとめる。
8 一部の不振産業については、その合理化の進展にあわせ必要な施策を講ずる。
9 青少年及び婦人対策の充実を図る。
10 補助金の整理合理化を行うとともに一般の経費についても節約を行う。
11 機構の拡充及び人員の増加は厳にこれを抑制するほか、欠員についても原則としてこれを補充しない。
12 税制の根本的改正の検討については一層これを進めることとするが、昭和35年度においては、減税はこれを見送ることとし、原重油その他の関税の暫定減免措置の整理程度の改正にとどめるものとする。
13 地方財政についても国の財政と同一の基調によるものとする。