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貿易、為替自由化計画大綱

収載資料:資料戦後二十年史 2 経済 有沢広巳・稲葉修三編 日本評論社 1966 pp.370-372 当館請求記号:210.76-Si569
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貿易、為替自由化計画大綱
昭和35年6月24日 閣議決定

第1 由由化の基本方針
貿易および為替の自由化は、IMFやガットの精神に明らかなように、各国の経済交流を活溌にし、世界経済全般の発展を図るための基本的な方向であるが、最近では、世界経済における大きな流れとして進展をみるに至り、わが国としても、国際社会の一員として、かかる自由化の大勢に積極的に順応してゆくことが肝要な情勢になっている。
資源に乏しく人口の多いわが国経済が今後長期にわたって発展するためには、世界の経済交流の進展に即応しつつ海外諸国との自由な交易を一層拡大してゆくことが不可欠の要件であると考えられるので、自由化を極力推進することは、世界経済の発展のための国際的要請たるのみならず、わが国経済自体にとって、きわめて重要な課題となっている。
これまでわが国は、戦後の復興と国際収支上の困難のために、貿易および為替の管理を行なってきたが、ここ数年、国際収支の好転、外貨準備の増加に応じて、逐次その制限を緩和し、自由化を進めてきたのである。しかして最近の日本経済は、その高い経済成長を国内物価の安定と国際収支の黒字基調の下に達成しつつあり、今後とも施策よろしきを得れば、高度成長の持続と相まって自由化をさらに推進し得るものと判断される。
このような自由化への内外の情勢にかんがみ、この際、貿易および為替の制限を積極的に緩和し、経済的合理性に即して企業の自主的な創意と責任を一層重視することは、わが国経済に対して多くの好ましい効果を期待することができる。すなわち、自由化により、従来の管理統制に伴う非能率や不合理性は排除され、低廉な海外原材料等の自由な入手が一層容易となり、産業のコストは引き下げられ、企業は国際的水準における合理化努力を要請されるなど、自由化は経済資源の一層効率的な利用を可能ならしめ、経済の体質改善を促進するとともに、広く国民の生活内容の向上に寄与し、もってわが国経済全体の利益を増進するものである。
しかしながら、実際に自由化を促進するに当っては、まず長年にわたり封鎖的経済の下で形成された産業経済に及ぼす過渡的な影響に十分考慮を払う必要がある。またわが国経済は西欧諸国と異なり過剰就業とこれに伴う農林漁業における零細経営および広汎な分野における中小企業の存在などの諸問題を包蔵し、また育成過程にある産業や企業の経営、技術上の弱点など多くの問題を有している上に、わが国をとりまく国際環境についても、欧州共同市場のような長期的に安定した協力経済圏を有していないこと、およびわが国に対しなお差別的な輸入制限措置がとられている例が多いことなどについて注意する必要がある。
したがって、自由化の推進にあたっては、わが国経済の特殊性に対する慎重な配慮を払いつつ、順序を追った計画的な実施を図るものとするが、自由化はわが国の長期にわたる経済発展の基礎を固める重要な方策であるので、貿易および為替の自由化とこれに伴う経済の自由な運営が、わが国経済に与える積極的利点に対する基本的認識の下に、内外にわたる経済政策の展開と相まって、これを強力に推進するものとする。
第2 自由化に伴う経済政策の基本的方向と対策
経済の安定的成長を維持しつつ構造上の諸問題の解決に努め、わが国経済の体質改善強化により長期にわたる経済発展を図ることは、従来から一貫する経済政策の基本的方向であり、自由化促進を契機として今後においては一層重要となるのであるが、これと同時に、当面自由化に伴い直接必要となる関税率および制度の改正、経済秩序の過渡的混乱防止などの諸対策については、自由化の計画的推進と歩調を合わせてその適切な実施を図らなければならない。
したがって、当面の諸対策については極力その具体化を急ぐとともに、成長、構造などに関する基本的経済政策については、以下に述べる方向に即してその実現を図るよう引き続き強力に推進するものとする。
1.経済の安定を保持しつつ高度成長を図る。
貿易および為替の自由化の進展に伴い、国内の物価と需要の変動が輸出入に直接に反映するなど、国内経済と国際経済の関係がより密接となるので、わが国経済の今後の運営に当っては、経済の均衡保持の政策が一層重視されなければならない。したがって、金融の弾力的調節機能の整備を進めるとともに、財政金融政策の適切な運営を図り、円価値の堅持と経済安定に一層の留意を払わなければならないことはもとよりであるが、同時に経済の高度成長による国民所得水準の向上と雇用機会の増大がわが国経済政策の基本目標であることにかんがみ、輸出の拡大、経済基盤強化のための投資の拡充など、経済発展のための諸施策を積極的に展開する必要がある。
2.雇用の拡大と流動性向上に努める。
雇用面については、長期的にはわが国経済の高度成長の過程において解決されることが予見されるのであるが、わが国経済は、なお不完全雇用状態にあるので、自由化に伴う雇用面での過渡的なまさつについて、西欧諸国の場合以上に深い考慮を払わなければならない。したがって、自由化に伴う雇用面の対策としては、基本的には、経済の高度成長の持続による雇用量の増大を期するとともに、当面とくに問題のある産業分野については、労働の流動性の向上に努め、職業訓練、広域職業紹介など、所要の施策の強化拡充を図るものとする。
3.輸出の拡大と経済協力の推進を図る。
自由化により、当面輸入は増加するであろうが、自由化に伴う経済体質の改善とコスト引下げは、今後の輸出競争力強化に大きな役割を果し、輸出の伸長に寄与するものと考えられる。しかしながら、今後より一層輸出の拡大を図るためには、わが国のおかれた国際的環境の現状にかんがみ、この際とくに海外市場対策を重視し、わが国商品について差別的輸入制限を行なっている国に対してその撒回を強く要請するとともに、秩序ある輸出の拡大に努めるものとする。
自由化に関連した後進諸国との貿易については、当面これら諸国産品の輸入に一段の工夫を払い、輸出の伸長にも資することが必要であるが、長期にわたるこれら諸国との経済交流の促進とわが国の効率的資源利用の見地から、後進国の産業の開発に寄与する海外経済協力および技術協力を、この際積極的に展開するものとする。
4.自由化の積極的利点を生かしつつ産業構造の高度化を推進する。
重化学工業を中心として産業構造の高度化を進めることは、長期的な経済発展を図るための重要な方策として従来から強く推進されてきたところである。
目下進展しつつあるわが国産業の重化学工業化の方向は、わが国経済の発展に伴う需要構造の変化などに支えられて、相当根強いものがあるので、自由化によって直ちにこの方向が妨げられるものとは考えないが、発展の過程にあるわが国の重化学工業においては、技術水準、市場開拓、量産化や合理化の遅れなどのため国際競争力の充分でない業種も少なくないことには十分注意を払う必要がある。したがって、今後の施策の方向としては、自由化を契機として高度で多角的な国際分業関係が成立することに留意し、真に育成を要する業種についてはその国際競争力涵養のための積極的施策を講ずるなど、今後の国際商品貿易構造の変化に対応しつつ、産業構造の高度化施策を従来以上に積極的に推進するものとする。
重化学工業の急速な強化育成と関連し、その原料としての内外資源の効率的利用を図る必要があることにかんがみ、原料・資源の自由化の方向をさらに進めるとともに、国内資源産業については、合理的生産体制を前提とする安定した供給源としての役割を考慮して、設備の近代化、経営基盤の強化など所要の対策を強力に推進するものとする。
また、産業構造高度化の過程において各種産業にわたり技術水準の向上がとくに必要であるので、優秀な外国技術の導入を促進するとともに、研究体制の整備改善などの諸施策を推進して試験研究活動の活溌化を図るものとし、あわせて研究成果その他新技術の実用化と普及について所要の施策の強化に努めるものとする。
5.農林漁業の体質改善および中小企業の近代化に努める。
わが国経済構造上とくに問題となる農林漁業およぴ中小企業については、長期にわたる基本的対策を積極的に推進するものとするが、当面自由化については、慎重な配慮を払い、予想される影響の緩和に努めるものとする。
わが国農林漁業は、国際的にみて著しく小規模経営、低生産性であるのみならず、国内的にも他部門に比して低い所得水準の下に過剰な雇用をかかえているので、現状では、所得に大きな影響を及ぼす重要農産物およぴ沿岸水産物は自由化に適しない状況にある。しかしながら、長期的観点から国際的自由化のすう勢に即応しつつ、これに耐えうる農林漁業を育成し、他部門との所得格差の是正に努める必要がきわめて大きいので、試験研究の充実、生産基盤の強化などによる生産性の向上、畜産、果樹部門の育成などによる就業構造の改善、加工部門の育成、価格の安定および流通の合理化ならびに協同組合活動の促進など農林漁業の体質改善施策を着実に推進するものとする。
また、中小企業については、業種業態の多様性のため、自由化の影響が異なるので、自由化に関連した業種ごとに取引関係の改善などの所要の指導措置を積極的に進めるほか、設備、技術、経営の近代化、組織力の強化、金融の円滑化等に関する従来の諸対策を改善強化し、輸出の伸長など積極的な経済発展の担当者としての機能を健全に培養するよう努めるものとする。
6.企業の体質改善のための環境整備に努める。
自由化により企業は国際的水準での競争にさらされることになるので、その経営の基盤を一段と強固にするため、自己資本の充実など体質の改善をさらに促進することが必要である。
このためには、まず企業自らが経営の合理化、資本構成の是正、その他一層の工夫と努力を傾注すべきことはもとよりであるが、このような企業自らの努力を促すような環境を整える見地から、自己資本の充実を図る方向で企業課税を中心とする税制全般の再検討を急ぐものとし、なお当面技術革新の進展、産業の構造的変化に即応する償却制度の改善などを行ない、内部資金の増強に資するものとする。
今後の経済発展に必要な産業資金については、資金需給の合理的均衡を保持する基礎的条件を整えつつ、資本取引の制限緩和に伴う安定的外資の流入の促進と相まってその調達の円滑化を期する。また、金利については、その資金需給調節作用を十分はたらかせることを基本とするが、低利外資の導入を契機として金融機関の経営合理化と国内資金コスト引下げの努力を促し、わが国金利の国際金利水準へのさや寄せに努め、企業の投資需要の合理的調整と借入依存度の低下と相まって、全産業を通ずる企業の金利負担の低減に資するものとする。
7.産業秩序の整備を図る。
自由化に伴い企業の自由な競争体制を尊重し、これを原則とすることはもとよりであるが、企業の国際的立場における競争関係および企業に対する国際経済の直接的影響については十分な配慮を必要とする。したがって、企業の過当競争を防止して産業秩序の確立を図るため、自由化に伴う過渡的な混乱を防止するための企業の協調体制の整備を図るほか、企業規模の拡大、専門生産体制の確立、設備投資の調整、原材料購入の合理化などが円滑に行なわれ得るよう措置するものとする。
8.関税率および制度を改正する。
輸入数量の直接的制限の緩和に伴い、関税の産業政策的役割が一層重要となるが、現行関税は、わが国産業構造の現状に即しないのみならず、自由化の観点から問題が多い。
各商品の自由化については関税面の対策を必要とするものが相当あるので、自由化を促進する観点も含めて早急に関税定率法等の改正を図り、関税品目の再分類、関税率の合理的再調整および従量税制の拡充を行なうとともに、外国品の急激な輸入増加や大幅な価格変動などにより被る国内産業の打撃を防止するために、緊急条項その他関税機能の充実を期し得るよう特段の配慮を払うものとする。
第3 商品別の自由化計画
1.方針
(1)商品別の自由化を実施するに当たり、商品をおおむね次の4グループに区分し、所要の対策と相まって計画的な実施を図るが、同時に、内外情勢の推移に対応した弾力的な運用を期するものとする。
(イ)早期に由由化するもの
(ロ)早期に自由化できないが、おおむね3年以内を限度として、その間可及的速かに自由化するもの(近い将来に自由化するもの)
(ハ)現状からの判断では、上記期間中に自由化することには問題があるが、極力近い時期に自由化するよう努めるもの(所要の時日をかして自由化するもの)
(ニ)自由化は相当期間困難なもの
(2)商品別の自由化実施の順序および方法については、次の諸点を総合的に勘案するものとする。
(イ)自由化は原材料コストの引下げを始点として全製品にその効果を波及すべきものであるので、原材料部面の自由化については、所要の対策の推進と相まって、極力早期に自由化することを建前とする。
(ロ)国産品との競合度の低いもの、または国産品の競争力のあるものから順次自由化することとするが、需要産業または消費者の利益が自由化により著しく増進するものについては、所要の対策を講ずることによって可及的速かに自由化する。
(ハ)法律その他の措置に基づく合理化計画または育成計画により技術の開発または合理化に努めつつあるものは、その成果を勘案し自由化する。
(ニ)一挙に自由化が困難なものについては、輸入相手国の要請、貿易拡大の効果を考慮し、各商品の事情に応じて輸入量の増大を図り、国内経済体制をなじませつつ自由化を推進する。
(3)本計画を推進することにより、昭和35年4月現在において40%であった自由化率(政府輸入物資を除く昭和34年輸入通関総額において占める自由な輸入にかかわる商品額の割合)を、3年後においておおむね80%、石油、石炭を自由化した場合にはおおむね90%に引き上げることを目途とする。
2.計画の概略<略>

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