昭和38年度予算編成方針

昭和37年12月22日 閣議決定

収載資料:資料戦後二十年史 2 経済 有沢広巳・稲葉修三編 日本評論社 1966 p.447 当館請求記号:210.76-Si569

昭和38年度における財政運営は「昭和38年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」にのっとり、通貨価値の安定と国際収支の均衡に留意しつつ、経済の正常な発展に資することを目途とし、
(1)健全均衡財政の方針を堅持するとともに財政投融資においては政府資金、民間資金を通じ、その活用について積極的に配慮し
(2)将来にわたる国力発展の基盤を充実するため輸出力の増大を第一義とし、社会資本の充実、産業基盤の強化に努める等、ひきつづき重要施策を着実に推進することに重点をおき、経費及び資金を効率的に配分、運用する。
ことをもって基本とする。
昭和38年度予算及び財政投融資計画は、この基本方針に基き、下記により編成する。

1 中小所得者の負担の軽減を図るとともに、資本の蓄積、中小企業及び農林漁業の振興、科学技術の向上等に資するため、国税において平年度540億円程度の減税を行う。
なお地方税においても、その負担の軽減合理化を行う。
2 道路、港湾、交通通信施設等の社会資本の充実を促進するとともに、治山治水対策の着実な実施に努め、産業基盤の充実強化と国土の整備保全を図る。
3 文教を刷新充実し、「人づくり」政策を推進するとともに、科学技術の振興を図る。
4 社会保障関係施設の拡充と住宅その他生活環境施設の整備を図るとともに、物価安定対策を推進して国民生活の向上安定と社会福祉の充実を期する。
5 貿易替為の自由化、国際経済環境の推移に応じ、国内産業の整備合理化を図るとともに、輸出の振興と対外経済協力の推進に努める。
6 産業構造の変化等に即応して雇用対策を強化し、労働力移動の円滑化に努める。
7 農林漁業については、その構造改善を推進し、近代化、高度化を図る。
8 中小企業に関する基本的政策を確立して、その近代化合理化を促進し、経営基盤の安定に資する。
9 補助金の整理合理化を推進するとともに、一般行政費についても、その効率的使用に一層努力する。
10 行政運営の能率化を図り、行政機構の拡充、人員の新規増加は厳にこれを抑制することとし、欠員についても、極力その補充を抑制する。
11 地方財政においても、国の財政と同一の基調により運営するものとする。