日本-官報(法令情報)の調べ方

ここでは、官報の法令情報に関する事項を中心に案内します。

1 官報とは(沿革・歴史) -法令公布の観点から

官報は、法律、条約、府省令などの法令のほか、国の広報、公告類等を掲載する国の機関紙で、明治16年(1883)7月に、太政官文書局によって創刊されました。
以下、法令の公布の観点から、官報の歴史を概説します。

官報草創期

明治16年5月10日太政官達第22号により官報の発行条件が確定し、掲載事項として詔勅、賞勲、叙任、布告、布達、達、告示等が掲げられました。さらに、明治16年5月22日太政官達第23号で「今般官報発行候ニ付従前官省院庁ノ達竝ニ告示ノ儀ハ官報ニ登載スルヲ以テ公式トシ(後略)」とされ、明治16年7月2日の官報創刊以降、太政官及び各省、院、庁の達及び告示は、官報に掲載され公布されるようになりました。
太政官の布告及び布達は、官報に全て掲載されていましたが、官報掲載をもって公式とはされていませんでした。明治18年12月28日内閣布達第23号により「布告布達ノ儀自今官報ニ登載スルヲ以テ公式トシ別ニ配布セス」とされ、官報による法令公布が確立しました。

「公文式」以降

明治19年(1886)、「公文式」(明治19年2月26日勅令第1号)の公布に伴い、従来の布告、布達、達などの法形式に代わり、新たに法律、勅令、閣令、省令等の法形式が定められました。法令の公布手段は、「凡ソ法律命令ハ官報ヲ以テ布告シ(後略)」(第10条)とされ、官報によることが規定されました。
その後、公文式は、明治40年(1907)の「公式令」(明治40年2月1日勅令第6号)の施行により廃止されました。公式令では、詔書、勅書、憲法改正、皇室典範改正、皇室令、法律、勅令、国際条約、予算及び予算外国庫の負担となるべき契約、閣令、省令の公布については、「前数条ノ公文ヲ公布スルハ官報ヲ以テス」(第12条)とされ、すべて官報によることが規定されました。

日本国憲法下での法令公布

昭和21年(1946)3月14日、政府は、(1)新憲法草案を次期議会に提出すること、(2)新憲法関連の法律の制定改廃を行うこと、を発表し、法制整備の主要なるものの例示の1つとして、「公式令に代わるべき法律の制定」が挙げられました[1]。これを受けて政府内で「公式法案」が検討され、昭和21年12月26日に「公式法案要綱」が作成されました[2]。その後、政府内での検討により、法令公布の形式及び手続きは、法律ではなく政令により規定し得るとされ、昭和22年(1947)4月に「公文方式令案」が作成されました[3]。しかし、連合国最高司令官総司令部(GHQ)から、「本案の内容は、元来、法律をもって規定すべきものと思われる。また、その各条項は天皇の地位に関連してあまりに旧憲法の匂いが濃厚である。」[4]との意向が伝えられ、また、「これらの問題は憲法上極めて重要なことであるから、本件は一応たな上げして、更めて法案の形にして総司令部の承認を求め、新国会に提出すべきである。」[5]とされました。
このため、政府は、当分の間の措置として、昭和22年5月1日に「公式令廃止後の公文の方式等に関する件」(昭和22年5月1日次官会議了承)を定め、「法令その他公文の公布は、従前の通り官報を以てすること」(第5項)としました。
昭和22年5月3日、日本国憲法施行に伴い、「内閣官制の廃止等に関する政令」(昭和22年5月3日政令第4号)外部サイトが施行され、「公式令」は廃止されました。
政府は、「公文方式法案」を作成し、昭和22年6月26日からGHQと折衝しましたが、GHQから同法案の取りやめを勧告され、昭和22年7月1日、同法案の撤回を申し入れました[6]
これ以降、法令公布の形式及び手続きを定める法令がないまま、事実上の取扱いとして官報による法令その他公文の公布が行われることとなりました。
昭和32年(1957)12月28日の「昭和23年政令201号違反等被告事件」(事件番号:昭和30年(れ)第3号)外部サイトに対する最高裁判所大法廷判決では、「(前略)法令の公布は従前通り官報によつてなされて来ていることは上述したとおりであり、特に国家がこれに代わる他の適当な方法をもつて法令の公布を行うものであることが明らかな場合でない限りは、法令の公布は従前通り、官報をもつてせられるものと解するのが相当(後略)」と判示され、法令公布は官報によるのが原則的な方法であることが判例で認められました。
翌年、法令の公布時期が争点となった「覚せい剤取締法違反被告事件」(事件番号:昭和30年(あ)第871号)外部サイトに対する最高裁判所大法廷判決(昭和33年10月15日)においても、法令の公布方法については、「昭和23年政令201号違反等被告事件」の判決が追認されました。

英文官報について

連合国による占領期間中、政府は、GHQからの指令(Memorandum for: Imperial Japanese Government. Subject: Translation of the Official Gazette (Kampo)(15 Mar 46 SCAPIN 744-A))により、官報英語版である英文官報(Official Gazette, English Edition)を発行しました。英文官報は、昭和21年4月4日から、サンフランシスコ平和条約発効日の昭和27年4月28日まで発行され、当時制定された各種法令や公告類などの英訳が収録されています。

2 官報に掲載される法令

官報の掲載範囲は、「官報及び法令全書に関する内閣府令」(昭和24年6月1日総理府・大蔵省令第1号、平成15年題名改正)により定められています。平成15年(2003)4月以降の官報掲載事項は、「憲法改正、詔書、法律、政令、条約、内閣府令、省令、規則、庁令、訓令、告示、国会事項、裁判所事項、人事異動、叙位・叙勲、褒賞、皇室事項、官庁報告、資料、地方自治事項及び公告等」(同令第1条)となっています。
法令事項は、官報においては、法令の形式的効力と関係なく、憲法改正、詔書、法律、政令、条約、最高裁判所規則、内閣府令、省令、規則、庁令、訓令、告示、の順で掲載されます。
官報に掲載される「規則」とは、会計検査院規則及び人事院規則のほか、公正取引委員会、国家公安委員会などの各委員会が制定する命令を指し、庁令とは、海上保安庁令を指します。
訓令は、すべての訓令が掲載されるのではなく、一部の訓令のみ掲載されます。
地方公共団体の条例及び規則は、官報には掲載されません(これらの公布は、当該地方公共団体の条例で定められます(地方自治法第16条第4項))。
なお、法令の制定から公布(官報掲載)については、法律の場合は、最後の議決があった院の議長(衆議院の議決が国会の議決となった場合は衆議院議長)から、内閣を経由して天皇に奏上し(国会法第65条第1項)、奏上の日から30日以内にこれを公布しなければならない(国会法第66条)ことになっています。
法令の公布日=官報掲載日なので、公布日さえ分かれば、官報に掲載された法令本文を見ることができます。但し、官報には、制定された法令の条文がそのまま掲載されるため、既存法令を改正する法令の場合、「第○条中「△△△」を「×××」に改める。」というような逐語的に改正内容が規定した条文がそのまま掲載されます。このため、改正箇所を反映させた法令の全条文を見たい場合は、当該時点の六法全書、各主題の法令集等を参照する必要があります。

3 公告類について

官報には、法令類のほか、参照されることの多い項目として「公告」があります。裁判所、地方公共団体、特殊法人等、会社その他の公告などがあります。
「公告」は、ある事柄を広く一般の人々に知らせることであり、その目的、方法、効力等は一定でなく、それぞれの法律の定めるところに依ります[7]
例えば、会社関係の公告には、解散、合併の他、決算、組織変更、等があります。会社関係の公告の多くは、「会社法」(平成17年7月26日法律第86号)の第779条第2項、第789条第2項等により、官報掲載を義務付けられています。
裁判所の公告には、相続、公示催告、除権判決、失踪、破産、免責、再生関係等があります。例えば破産関係の公告では、破産手続開始、破産手続廃止決定等の公告がありますが、これらの公告は、「破産法」(平成16年6月2日法律第75号)の第10条により、官報に掲載して行うこととなっています。しかし、裁判所の決定日と官報掲載日とは一致しません。官報掲載は、決定日から二週間程度後になることが多いようです。
官報に良く掲載されている公告については、全国官報販売協同組合のHP外部サイトや株式会社兵庫県官報販売所のHP外部サイトなどにある官報公告申込のページにどのような種類の公告があるのか紹介されています。
公告類の検索には、官報情報検索サービス(下記参照)を用い、日付、キーワード(個人名、会社名等)などから検索するのが有効です。

4 官報検索のツール類

(【】内は当館請求記号)

(1) インターネット情報

■官報の本文あるいは目次を見ることができるまたは検索ができるサイト

  • 国立国会図書館のデジタル化資料-官報(国立国会図書館)
    https://dl.ndl.go.jp/collections/A00015?pageNum=0
    明治16年(1883)7月2日の官報創刊日から昭和27年(1952)4月30日までの官報を見ることができます。
    また、明治16年7月から昭和27年4月までの月目録に掲載されている件名をテキスト化していますので、法令名などから検索することができます。
  • インターネット版官報(国立印刷局)
    https://kanpou.npb.go.jp外部サイト
    直近90日分のすべてと、平成15年7月15日以降の法律、政令等の官報情報を見ることができます。検索はできません。
  • 官報検索(全国官報販売協同組合)
    https://www.gov-book.or.jp/asp/Kanpo/KanpoList/?op=1外部サイト
    平成8年(1996)6月3日以降の目次を検索できます。
    (官報号外政府調達)
  • 政府公共調達データベース(JETRO)
    https://www.jetro.go.jp/gov_procurement/外部サイト
    政府調達は、『官報 号外政府調達』【CZ-2-17】に掲載されます。
    同データベースは、政府調達の入札公告等を公示の種類、『官報 号外政府調達』掲載日、調達機関、調達機関所在地、品目から検索できます。

(英文官報)

  • 国立国会図書館デジタルコレクション(国立国会図書館)-雑誌
    雑誌の1タイトルとして英文官報が収録されています。
    https://dl.ndl.go.jp/pid/2892939
    当館所蔵の昭和21年(1946)4月4日から昭和27年(1952)4月28日までに発行された英文官報を見ることができます。
  • 英文官報(名古屋大学大学院法学研究科附属法情報研究センター(JaLII))
    http://jalii.law.nagoya-u.ac.jp/project/jagasette外部サイト

    昭和21年(1946)4月4日から昭和27年(1952)4月28日までに発行された英文官報を見ることができます。
    種別(本紙・号外・物価号外の別)、発行日、 掲載法律等の題名(邦文) 、英文目録に記載された法律等の件名(英文) で検索することができます。

■法令の制定・改廃経過等を検索することができるサイト

  • 日本法令索引(国立国会図書館)
    https://hourei.ndl.go.jp/
    原則として、明治19年2月公文式施行以降の法律・政令・勅令について、制定・改廃経過等の情報を検索できるデータベースです。法令の公布日すなわち官報掲載日を調べることができます。法令によっては、各種サイトへのリンクにより、条文そのものを見ることができます。
    告示・訓令については、平成16年(2004)8月1日に有効であったもの及びそれ以降制定されたもののうち一部(法令的性格を持つもの)が採録されています。

(2)商用データベース

官報情報検索サービス(国立印刷局)
https://search.npb.go.jp/guide/introduce.html#howtoEntry外部サイト
昭和22年(1947)5月3日から当日発行分の官報が全文検索できる会員制の有料データベースです。東京本館では議会官庁資料室(新館3階)および科学技術・経済情報室(本館2階)の特定端末、関西館では総合閲覧室の特定端末で利用できます。
都道府県立等の公共図書館でも、契約・提供しているところがありますので、まずはお近くの都道府県立図書館にお問い合わせ下さい。
東京都内で同データベースを利用できる図書館の一覧は、東京都立図書館HPにある「都内公立図書館インターネット等サービス状況」外部サイトをご覧ください。

(3)紙資料

  • 官報目次総覧』(文化図書 【CZ-2-15】)
    所蔵:第1巻(明治16年(1883)7月-27年(1894) 3月)~第24巻(昭和61年(1986)1月-昭和62年(1987)12月, 項目別索引)
    各月の官報目録を集録した復刻資料です。
  • 官報総索引』(官報調査会編 文化図書 【CZ-1-7】)
    所蔵:1988-
    機関別、事項別の索引から官報の掲載事項を検索できます。

[1]「新憲法草案の審議 特別議会と決定す」『読売新聞』1946.3.15.
[2]佐藤達夫「公文方式法案の中絶」『レファレンス』(72):1957.1【Z22-554】p.3.
[3]同上
[4]同[2] p.8.
[5]同[2] p.10.
[6]同[2] pp.10-11.
[7]例えば、法令用語研究会 『有斐閣法律用語辞典 第三版』有斐閣, 2006.3【A112-H287】pp.415-416.

主な参考文献 (順不同)