電子展示会 本の万華鏡

第11回本の万華鏡 はやり病あれこれ 第2章

2012年11月21日
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2章 黒死病/ペスト

ペスト菌(画像提供:国立感染症研究所

ペストキン

  元来ネズミなどの感染症であるペストは、人間にも感染します。過去ヨーロッパで何度も大流行しました。特に14世紀には全ヨーロッパで猛威をふるい、当時のヨーロッパの人口の3分の1から3分の2が失われたといわれています。
  ペストには抗生物質がよく効くために早期に適切な治療をうければ昔のように恐ろしい病気ではありませんが、医療が満足に受けられない地域、とくにアフリカでは今も命にかかわる病気です。
  最近では1994年にインドでペストが発生し、大きな混乱を招きました。


1) 対応遅れて全国に拡大 発生地の住民、大量脱出 インドのペスト禍 (朝日新聞 1994.10.01 夕刊 YB-2】)

  専門医は、緊急対策を提言しましたが、グジャラート州政府は「急性肺炎の可能性が高い」として、ペスト発生の宣言をためらいました。それが不安を呼び、一時は医師までもが逃げ出すパニックに陥りました。

 

ペストの文学

2) ペスト / ダニエル・デフォー著 ; 平井正穂訳  東京 : 中央公論新社, 2009.7 【KS154-J74

  1665年にロンドンを襲ったペストはそれ以前にロンドンを襲ったものとは比較にならないほど多数の死者を出しました。1722年に発表されたこの本は小説ではありますが、さまざまな文献や当時の人の記憶を元にしたのでしょう、ペストに襲われた際のロンドンの街や市民の個々の行動がジャーナリスティックに書かれています。

 

3) ペスト / カミュ著 ; 宮崎嶺雄訳  東京 : 新潮社, 1969.10 【KR153-J15

  この小説の舞台は1940年代のアルジェリアの町オランです。この町を不意にペストが襲います。あまりに不条理なこの天災に対して、さまざまな立場の人々が立場を超えて協力し、人を救うべく出来る限りの抵抗を続けます。

 

日本人とペスト

  1899年に、海外から持ち込まれたとみられるペストが日本で初めて流行します。その後、大小の流行を繰り返しますが、検疫やネズミの駆除などの防疫に努めたおかげか、今日まで80年以上もの間、日本国内で感染・発症したペスト患者は出ていません。

4) 猫骨折つて人に取らるる (朝日新聞 1900.01.22 朝刊 p.5 YB-2】)

ねこほねおってひとにとらるる

  ペストを媒介するネズミの駆除を目的として、1900年1月には東京でネズミの買い上げが始まり、一匹が5銭になりました。
  この絵は猫が取ったネズミを人が横取りして、金に代えておでんを食べるというものです。明治30年当時は、もりそば・かけそばが1~2銭、天どん(並)が5銭でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

北里柴三郎
(電子展示「近代日本人の肖像」より)

きたさとしばさぶろう

  ペストの研究に取り組んだ日本人のひとりに、北里柴三郎がいます。
   北里柴三郎はドイツに留学し、コッホのもとで細菌学を学びました。破傷風、ジフテリアの研究で世界的に名の知られた北里は、ペスト、コレラ、狂犬病、赤痢など様々な病を研究し、近代日本の衛生医学に大きく貢献しました。

 

 

 

 

 

5) 黒死病調査の派遣員(北里 青山) (朝日新聞 1894.05.31 朝刊 p.1YB-2】)

  北里柴三郎と東京大学医科大学教授の青山胤通がペストの蔓延する香港に派遣されました。北里はペストの原因菌の発見に力を尽くし、青山は自らもペストに感染しながら、感染経路や病状、経過を報告しました。
   この記事は北里、青山の他、内務省衛生局から技手の岡田善行と帝国大学付属医院から助手の宮本叔が派遣されることが決まったことを知らせています。

二人の報告書が当館の国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧できます。一部ご紹介します。

  • ペスト病ノ原因調査第壱報告 / 北里柴三郎 東京 明治講医会  1894 【62-61 】 [国立国会図書館デジタルコレクション]
  • 千八百九十四年香港ニ流行セルペスト病ニ就イテ / 靑山胤通, 宮本叔 (中外医事新報375 1895 1281-1288 【Z19-494】
  • 千八百九十四年香港ニ流行セルペスト病ニ就イテ / 靑山胤通, 宮本叔 (中外医事新報377 1895 1428-1433 【Z19-494】

 

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